これ以上速くなっても知らないお
(このお話の時間軸は『新製品を開発しました』の直後からとなっております)
どどどどどどどど…
(だんだん大きくなってくる地響きのような音)
「おや、この音は…?」
「いつも通り、ぜかまし君(中の人:しずく姉)が廊下を駆け抜けてる音だね」
「以前それで怒られたのに相変わらず懲りないというかなんというか」
「それがぜかましだし別にいいんじゃね?」
「ですねー」
「走るのはともかくその報復で提督を突き落としての一人地獄車はさすがにどうかとは思うけど(ぼそっ)」
それでも常に爆音や悲鳴が飛び交う状況を作り出すという、提督艦娘共に奇人変人しかいないような御影鎮守府ではそれすらも容認してしまう懐の深さがあったヾ(:3ノシヾ)ノシイイカエルト『もう諦めた』
とかいう雑談を交わしてるうちに件の問題児が遠慮の欠片もなく扉を開け放つ
「(ば〜ん!!)はーかーせー!例のものできたー?」
「例のものと言うと……豊胸剤?」
「違うもん!!しまかぜ余計な脂肪付けてたら遅くなっちゃうし、別におっきなものいらないもん……いらないもん」
「涙目になって二回言ったところ見ると思いっきり未練バリバリですね。ですがさらにもう一歩踏み込んで追求すると……」
(撮影者:七兎さん)
「いつぞやみたくまな板でぶん殴られて…」
(撮影者:じーたさん)
「さらなる追撃を受けて大破させられそうなので、深入りはやめておきましょう。青葉でも学習はします」
「それより博士。しまかぜをもっともとっと速くしてくれる薬、できたー?」
「一応試作の段階でなら出来てるよ、ほら」
「やったーそれちょーだい」
「いやいや、まだ試作段階だから無理だね。いろいろ危険も多いし」
「途中で遮って申し訳ないですが、事の発端を青葉にもわかるよう最初から説明お願いします」
「少し前にね。もっと速くなれるような改造をお願いしようとTeam R-TYPE明石整備隊の実験室の扉を叩いたんだ」
「不用意に踏みこめば二度と五体満足で出る事ができないとかいう怪しげな噂の絶えない(クサレカイハツチームなんてルビが付く)明石整備隊の実験室への扉を自分から開けるとは…まだそんなHがいたなんて驚きです」
「でも今の物騒な世の中、誇りやらなんやらをかなぐり捨ててでも力を求める人が多いしそれほど不思議でもないよ。ただぜかまし君の場合はあまりにも軽い動機だからねぇ」
「軽くないよ。島風もっともっと速くなりたいだけだもん」
「それでも軽々しいから改造じゃなく『すばやさのたね』とか『インドメタシン』のような薬に留めるよう説得したんだ」
「島風もどちらかというと自分の足で走る方がいいし、だから改造じゃなく薬をお願いしたの」
「単純な疑問ですが『スピードドリンク』みたいな瞬間の加速系にしなかったのはなぜでしょうか?」
「そういった一瞬の加速がほしいならふつーに艤装へロケットエンジンでも付ければあっさり解決じゃん。実際一部の搭乗妖精さんが駆る機体には一気に敵陣へ切り込むためにRATO(ロケット補助推進離陸)を取りつけてるようだし」
「ですねー失礼しました」
「プロペラ機にんなオーパーツ的なもん付ける時点でふつーじゃねーよ。後その話絶対長門さんにするなよ…いいな、絶対にだぞ」
「なして?」
「そりゃぁ艦隊戦を殴り合いとか称してる長門さんにそんな話したら……」
「どんな装甲でも……撃ち貫くのみだ!!」
「なんて某鉄屑機体みたく零距離で主砲を打つという突撃戦法を行うための改造を熱望してくるやろ」
「知らなかったのですか?あの人…もうすでにそれやろうとしてますよ」
「えっ!?」
「うん、だってあんな浪漫てんこ盛りな素敵仕様の機体。リスペクトしなくてどうするって事で開発を進めてるんだ。しかも長門さん曰く」
「よくもまぁこんなキチガイな改造をほどこしてくれたな。だがそれがいい」
「なんて不満言いつつ満更でもないって顔してたよ」
「そんな長門さんをみて、島風もいいな〜っと思ったからこそ同じような改造をお願いしにいったんだ」
「あんなキチガイ戦法を好んでやる人がいるなんて驚きというかなんというか」
「お前は何を言っているんだ?背後霊さん自身も原作ではショットのチャージが完了次第、零距離で踏みこんでぶっぱ。その後距離を取って再びチャージというまるっきりアル○ア○ゼンと同じ戦法を好むじゃないですか」
「あっ"……そういえばそうでした。私のチャージショットは無数の弾を広範囲にばら撒かれるという某冥界探偵の霊光弾みたいな特性上、距離が近ければ近いほど威力高まるから……」
「零距離で当たれば『 一 撃 必 殺 』も夢ではないのに、肝心の零距離へ踏み込むための速さと技量がない辺り残念感漂いまくりですよ、本当」
「へこむから言わないで…(ZU〜N)」
「さもありまん。それで話戻すけど副業のおかげで資金どころかモルモット用に実験材料も大量に入荷して消費し切れず、長門さんの艤装改造をしてもまだまだ有り余っててどうしようかと思ってたところにこの依頼だから渡り船と開発する事にしたんだ……っというかモルモットなんて誰かさんのせいで牢屋倉庫が飽和状態にも関わらず次々送りこまれるような事態となったから早急に使いつぶさないといけなかったんだよ。
本当にうれしい悲鳴をあげさせてくれて感謝したいぐらいさ」
「きょーしゅくです」
「嫌みも含んでるのに全く気付いてやがりません、本当にありがとうございました」
「まぁそんなわけで豊富な資金と大量のモルモットを活用して試作品を作ったわけだけど…それにちょっと問題があってね」
「素早くなる代わりに力が下がるとかそんな副作用でもあるのですか?」
「いや、効果自体は純粋に素早さがあがるよ。しかもその速度は……比較すると通常の3倍!(ドドーン)」
「……はぁ?2倍ではなく…3倍」
「うわーすごい。これ使えば島風も『赤い彗星』を名乗れるようになるんだ」
「それはそれで記事にしたいですが、なぜそんな極端なものができたのでしょうか?っと珍しく青葉が突っ込みます」
「いやー資金とか使い捨てにできるモルモットがてんこもりだからつい張り切っちゃって…てへぺろ」
「まさに、『変態に技術と資金と時間を与えた結果が(ry』ですね。わかります」
「効果に注目し過ぎて忘れ去られそうとしてるけど、その絶大な効果に隠された副作用は何なわけ?」
「そうでした。それだけ強力であればさぞかし反動による強い副作用があるのですね。具体的に言うと通常の3倍の燃料とスタミナ消費があるとか切れた後に地獄の筋肉痛へと見舞われるとか」
「いやいや、あの明石整備隊が作ったものだし理性が吹っ飛んでおっぺけぺ〜になる程度は行くでしょ」
「残念ながら、飲んでも平常心を保ったままだったね。まぁちょっと気がせわしくなってるけど理性の面ではそれぐらいの範疇だったかなかな」
「じゃぁ問題ないね。例えすぐにばてたりとか筋肉痛があったとしても3倍の速度で走れるならその程度軽い軽い」
「ん〜実は疲労が3倍になるかまだ検証できてないんだ」
「なぜですか?実験台で試してるなら疲労度の有無なんて簡単にわかるんじゃないのでしょうか?」
「それがわかんないんだよ。なんせこれ飲ませた実験台はすぐに死んじゃうから」
「えっ!?」
「飲ましただけじゃなんともないけど、少し走らせたらそのとたんに身体中の穴という穴から血が噴き出して絶命しちゃうんだ。だから疲労度がどうなってるか調べられなくって」
「そんな軽く済ませられる問題じゃないでしょうがー!!」
「ですよ!そんなの『死の薬(デスポーション)』と名前変えるべきです…っというかなぜ青葉がこれだけ突っ込まないといけないんですか!!」
「まぁ待って待って。原因はわかってるんだ。薬の影響を受けて心臓や脈の鼓動、血圧も3倍になったはいいけどその凄まじい血流に血管が耐え切れず破裂するから絶命するんだ。だから同様の効果を付加されるギアUにも耐え切れる某ゴム人間と同じような身体になれば……」
「同じになったら金づちとなるわぁぁぁ!」
「泳げない"艦娘"はただの"娘"になっちゃいます!」
「と、とにかくなんとかして安全性を確保するからぜかまし君ももう少しだけ待って」
「え、えっと…ごめん。もう開発いいから」
「えっ?」
「やっぱり薬なんかに頼らず身体を鍛えて速くなるのが一番だね!!そうときまれば早速走り込みいってくるぅぅぅぅぅぅぅ……」
「待って待って!せっかくぜかまし君のために開発した薬なんだから少しだけでも……」
「に、逃げた……」
「その逃げ足、まさしく速きこと、脱兎のごとし……。しかしあのぜかましですら裸足で逃げ出してしまう明石整備隊の整備妖精ことメンゲル博士。恐ろしいお方です」
「わかってると思ってるけどこうなった要因…主に大量のモルモットが整備隊の実験室送りへとなった要因は青葉にもあるってこと、肝に銘じておいた方がいいわよ」
「……今回ばかりは素直にそうしておきます」
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