星の数ほど存在するといわれる幻想郷…
その中の一つの幻想郷で結成されたサッカーチーム『黒赤マジック』が『東方サッカーオールスター 東方蹴球宴〜花映塚の部〜』の舞台へと旅立ってから幾日……


多分恐らく現在激戦の真っ最中であると思われる丁度その頃、幻想郷ではちょっとした異変というか動きがあった。

見た目的にはいつもと変わらない幻想郷であるが毛玉や妖精といった雑魚達が目に見えない何かを感じとったらしく、落ち着きがなくなりはじめたのだ。
その様子に何かよくないことが起きる前触れでは…と里の人間達は危惧したが、まぁ何か起きるとしてもいつもの幻想郷30大迷惑によるいつもの騒動だろうと思って気にするのをやめていた。


本当に幻想郷30大迷惑達は日常茶飯事的に騒動を起こすので里の人間達は少々の異変では全く動じなくなっていたのだ。



そんな異変が起きてるけどいつもどおりな幻想郷の上空ではいつもより少し騒がしい妖精や毛玉達の弾幕を潜り抜けながら箒に乗って疾走する一つの影があった。



「ふふふふ………幻想郷よ。私は帰ってきましたよ〜〜!!



なんだか一昔前に誰かがスタジアムで叫んだことあるような台詞を発しながら空を疾走する影…その名はVIVIT。
だが、最近は本名ですら呼ばれない通称『ポンコツメイド』。

幻想郷では他に類を見ない発音で呼ばれる彼女は、幻想郷どころか外の世界ですら存在するか怪しいオーバーテクノロジーの結晶、アンドロイドである。

もう完全な異世界からやってきたとしか思えないこのポンコツは、数ヶ月前にサッカーチーム『黒赤マジック』を一方的に幻想郷の悪認定してサッカーで勝負を挑んできたのだが…………



「何回やっても何回やっても『黒赤マジック』が〜〜たおせ〜ない〜よ〜〜♪」



ことごとく返り撃ちにされてきた。



「あの〜タックル何回やってもよけれな〜い。チェーンアップしてみてもやがて弾幕で潰される〜
特別ハンデも試してみたけど黒赤相手じゃ意味がない〜のです〜〜」


そう、リベンジの度にチェーンアップで新しい必殺技を習得し、いろいろなハンデを負わせて戦ってきたが『黒赤マジック』はほぼ完封&大量得点完璧なまでに叩き潰されてきた。



「だから次は絶対勝つために〜〜私はご主人さまを最後にだしてくる〜〜♪」


そうやってことごとく敗北してきたポンコツは最終決戦時に最後の手段としてチート能力とか存在自体が反則と名高い自分のご主人様を投入させたが……


















「……なんでですか〜〜〜なんで勝てないんですか〜〜〜〜〜!!!!」







某岩男シリーズでの有名な歌を口ずさむのを途中でやめて虚空に向かって叫ぶ。
もちろん叫びながらも雑魚の撃墜は忘れないというか、その叫びで画面上の敵が一気に消滅した。




「う〜〜〜でも、もうそんなことはいいです!
それよりも『黒赤マジックオフィシャルドキュメンタリー』なんで私が出てないんですか〜〜〜〜!!!!!


どうやらポンコツにとっては敗北したことよりも走破モードにて自分と『黒赤マジック』とが戦った激闘たったの一言で済まされるどころか「なかったこと」にされるような咬ませ犬扱いが気に入らないのだ。






「く〜〜〜〜私は咬ませ犬でもただの踏み台でもありません!!
こうなれば、『黒赤マジック』を取り込んで大会に優勝して私の強さを証明してみせますです〜〜〜!!!
『黒赤マジック』を倒すのはそれからでも遅くありません!!」






ということで、なんだかんだ言いつつもとどのつまりサッカー大会へと参加するためにこうやって再び幻想郷へと舞い戻って来たのだ。


そうして向かう先は毎度おなじみの博麗神社であり、そろそろその上空に差し掛かったと思われたその時……



「な、なんですか…?!この謎の巨大兵器は……」
















博麗神社の行く手を阻むかのように現われた右手にドリルを装備した巨大ロボ
その巨体が彼女の行く手を阻むかのように現れたのだ。


「おっ、いつぞやのポンコツメイドじゃね〜か。お前も呼ばれてきたのか?」



その巨大ロボの肩に乗っかった誰かが箒に乗って接近するポンコツに気付いたらしく気軽に手を振るが…



「これはあれですね。悪の基地を守る守護神ですね!!
こんなものまで用意するなんてやっぱり悪です!!!」











「はぁ?お前何言ってるんだ…」













「悪のロボットは今ここで退治される運命です。覚悟ぉぉぉぉ!!」

















「ちょ、ちょっとま………あぁぁぁーーーー!!!!!!!」





















ドッカァァァァァァァァァーーーーーーーーン!!!!!!!


















「何の音〜〜?」



「ん〜〜早速誰か来てくれt……」


っと、その丁度神社境内で籠一杯の作物を抱えた式神の橙と鬼の萃香は爆音が響いた方向である上空を何気なく見上げ………















「ロ、ロボが……」


「大破して……」
























「「こっちへ墜ちてくるぅぅぅぅぅぅぅーーーー???!!!!」」










先ほどポンコツによって撃墜されたロボが橙と萃香…つまり神社目がけて落ちてくるのを確認した。




「に、逃げないとーーー!!!」



このままでは潰されると判断した橙はそう叫ぶやいなや持ってた作物を籠ごと放り捨てて一目散に逃げだし、萃香も同じく籠と作物を放り捨てて逃げようと思ったが…ふと気づいた。
この落下コース神社直撃コース。



もし、万が一にでも神社にロボが落ちて倒壊なんかされたりしたら貧乏巫女がどれだけ怒るかわからない。



といってもあんな質量の大きい巨大ロボを生半可な弾幕を浴びせても破壊どころかコースを変えることさえ難しい。
だが、ここで自分が逃げたら………











萃香の脳裏に超野菜民族のごとく、髪を金色に逆立てた貧乏巫女の召喚する巨大玄爺が「赤帽子の髭オヤジに踏み続けられた仲間の恨みですぞ〜!」とか叫びながら




どっすん
のしかかってくる姿が浮かんだ。


















「踏みつけられるはずのカメに踏み潰されるのは嫌だぁぁぁ!!」
















頭を抱えながら叫ぶ萃香。


しかも、どういうわけか悲鳴をあげながらぷちっと潰される自分の姿生々しくリアルに想像できてしまう。
まるで、未来の自分が本当にそんな目にあってしまうことを暗示するかのような、それぐらいの現実感があったのだ。



もちろん萃香も必死で頭を揺らしてそんな未来というか想像をかき消そうとするが全く消える気配がない。



やがて諦めたというか覚悟を決めたのか、据わった眼で墜ちるロボをゆっくりと見つめながらすっと懐からスペルカードを取り出し…









「我が名は伊吹萃香、幻想郷唯一の鬼………その力は大地をも砕く鋼鉄の拳………









この鬼の力を見せてやるぅゥゥゥ!!!!」











スペルカード宣言











鬼符「ミッシングパワー」





















スペカ効力により、にょきにょきっとキノコを食べた赤帽子の髭オヤジのごとく一気に巨大化する萃香。


もちろん、自分自身が神社を潰さないようしっかり後方を確認しつつ巨大化した萃香はそのまま墜ちてくるロボを睨みつけながら、瓢箪の鎖をじゃらりと伸ばし





















「我が鉄球は魂の咆哮………
必殺ガン○ムハンマァァァァァァ!!!!!」























どっごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!




















墜ちてくる巨大ロボ目がけて、遠心力を最大限に利用して破壊力を極限まで高めた瓢箪を叩きつけた。

































「ちぇぇぇぇぇぇぇぇん!!あぶなぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
















ズズーン!!    ぐしゃっ












萃香の渾身の一撃を横っぱらに受けた巨大ロボ。

破壊はされなかったがとりあえず直撃コースだけは避けれたようだ。





「ふぅ……畑に落としちゃったけどなんとか神社だけは死守できた〜〜〜」



巨大化したままのボディでふぅっと額の汗をぬぐう萃香。
なんだかロボが地面に激突と同時に何か悲鳴が聞こえたような気もすれば、ロボと地面の隙間から2〜3本のふさふさ尻尾が見えている気もするがとにかく災厄のパターンは回避できたのだ。


些細な犠牲は仕方ないということで気付かなかったことにした。




そうして安堵の声を漏らしたその時……









「でましたね〜〜〜悪の親玉!!
先手必勝の飛ばせ〜〜鉄拳、ロケットパーーンッチです!!!」







「ん?」





っと、叫びに気付いた萃香が何だろうとその叫んだ方を見ると……

















目の前には二つというか無数の拳














どがどがっ!!























「うわぁぁぁーーーー!!目が、目がぁぁぁぁ!!!」














その飛来した二つ拳は見事なまでに萃香の両目に命中。
萃香はそのまま目を押さえながら体勢をぐらりと崩して………























背後にあった神社へと倒れ込んだ。









「ふっ、悪は滅びました…」


もうもうと煙をあげながら崩れゆく神社を見下ろすポンコツ。

微妙にかっこつけながらガシャンッと飛ばした拳を呼び戻して再び装着するその表情はしてやったりと満足げというか背後に『SPELL BREAK!!』とか『Stage Clear!!』とか『Mission Complete!!』といった文字が浮かんでいるような気もしてきた。


「ほうほう、これまた派手にやったねぇ。神社が壊れてるよ」

「えぇ、確かに派手になりましたけど悪の基地滅んで当然です!!」


「そうかそうか、悪の基地とは言うようになったねぇ…………」


「そう、悪が栄える試しなし!!なのです!!!」


「ふむふむ。なら私もここは一つ悪となってみようか」


「ところで、さっきから私に話しかけるのは一体誰で…す………か……?」


と、何気なく会話してしまったが今頃誰と会話していたのか気になって声がする方向。
つまり後ろを振り返ると………


「久しぶりだね、ポンコツ。早速だが今から鉄くずにしてやろうと思うが念仏でも唱える猶予をあげようかい?」


これでもかというぐらい悪人面をした自称博麗神社の祟り神こと魅魔が黒い翼を広げて浮遊していた。


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!
なんて
まがまがしいオーラなんですか!!!!」


「そりゃそうだろうね。こうみえても私は悪霊だし、まがまがしさや子供の嫌われ度ならそこで目を回してる鬼っ子より上さ」



はっはっはと笑顔で笑いながらもまがまがしいオーラを遠慮なく噴出する魅魔。

本人にしては特に意識はしていないが、こういうオーラはやはり自然とにじみ出てくるものだろう。
さすがのポンコツも危機的な状況を感じ始めたが正義の味方悪から逃げるわけにもいかない。



「そう。正義の味方がここで逃げるわけにもいかないのです!!」




っと、再びロケットパンチを飛ばそうと拳を魅魔へ向けたが……




「ウチの神社を潰しといて、誰が正義の味方なのかしらね〜」



「うふふふふふふ、動くと撃つわよ〜〜〜」



左右の背後で玄爺の上に乗っかったハクレイノミコことラクガキ巫女と箒に乗った魔理沙もどきの魔梨沙がいた。

しかも、二人それぞれ陰陽玉マジックミサイルでもってポンコツの背中をロックオンしている。






「さ、三対一とは卑怯ですよ〜〜〜〜!!!」



「何が卑怯なものさ!それに言っただろ、私は悪だと。
悪が正々堂々と一対一で戦うなんてありえるのかい?




そんな危機的な状況でポンコツが罵倒するが魅魔は全く堪えない。むしろさらなる悪道を説く始末。



「魅魔様〜〜このポンコツはどう料理してやりましょうか〜?」


「それは二人に任せるさ」


「じゃぁ煮ても焼いても食えなさそうだし、すり潰しましょ


「それは名案ね、ハクレイノミコ…って言いにく!とにかく、すり潰しのミンチ決定















「「さぁ、覚悟!!」」




















「ひぃぃぃぃ〜〜暴力はいけません〜〜〜!!!
虐めはカッコワルイのでまずは平和的に話し合いm……
ぴぎゃぁぁぁ〜〜〜!!!









「話し合おうって、まだ何の危害を加えてない鬼っ子を有無言わさず攻撃して撃墜させといて今さらそんなこと言えるのかい?」







ポンコツが空中でラクガキ巫女と魔梨沙からぼこられている中、魅魔はあえて暴行に加わることなく半壊した神社の中で元の大きさに戻って気絶してる萃香と畑に墜落した巨大ロボの惨劇に加え、



「藍さまーーーー!!!今助けますーーー!!」




っと叫びながら必死にスペルカードを発動させてロボを破壊している橙の姿を見て思わずため息をつく。



「あの式神猫ももう少し照準合わせてからスペルカード使えないのかねぇ。
あれだと破壊力が分散して効果が半減してしまうどころか、周辺にもいらない破壊を起こしてしまうじゃないか。
本当にこの大変な状況どうしたものか」


だが、言葉では大変だといっても魅魔の表情は全くそんなそぶりは見せない。
むしろ、こんな騒動は幻想郷では日常茶飯事だ。幻想郷に住む者は今さらそんなことを気にするような輩はほとんどいない。

それどころか騒動を楽しむぐらいな心の余裕がある輩が大半だ。




「さぁて二人とも。それを適当にぼこったら神社に降りるよ。わざわざ私達を呼んだ理由を聞き出す必要があるからね」





と、ポンコツをぼこるのに夢中で聞いているのか聞いていないのかわからないラクガキ巫女と魔梨沙にそう伝えると自身はさっと神社へと降り立った。

























……少女収集中




































「さてと、ちょっとごたごたがあったがとりあえず今の状況を説明しようと思うがいいか?」



頭に包帯を巻いて松葉杖をついたまま立つ藍が黒板を背に皆へと問いかけ、一同はこくりとうなづく。



「では、今の幻想郷だがある危機が迫っている状態だ。だがその危機を解決しようにも霊夢や魔理沙他、多数の人手が不在な上紫様がスキマに引っ込んでの引きこもりぐーたらモードに入ってしまった。
紫様もこうなってはスキマに核爆弾を投下させても出てこないだろう。
よって、この危機を脱出するためには我々の力だけでは難しいと判断して萃香の力で君たちを呼んだわけなのだ」



「ふむふむ、わかったわ。つまり私達旧作主人公コンビが」

「今の主人公コンビの代わりを務めろってことね〜〜うふふふ」


そう答えたのはラクガキ巫女と魔梨沙。


「そういうわけだ。まぁ今のところはまだそこまでの緊急事態は発生していないが万が一ということもある。
打てる手はできる限り打っておきたいので無理を承知で呼んでもらったんだが……」


「はっはっは。せっかくだから私も手伝わせてもらうよ」


「ほぉ、幻想郷の危機ときたか。これは面白そうだぜ、ご主人」


「ふふふ…ここでなら破壊し放題に実験し放題!
存分に子供たちの夢と希望に関する危ない実験が可能よぉぉぉ!!」






「くくく…これはいい時に来たわ。
このチャンスで思う存分新作の実験を……」






「はぁぁ〜〜また弾幕が魅れるわ〜〜〜!!!」





「あぅぅぅぅ………被害甚大です……しばらく修復モードに移行です………」






「………悪霊の魅魔はいいとして、H教授こと夢美その助手のちゆり科学者理香子爆弾マニアの小兎姫。おまけにポンコツメイドと、予定外で危険な人物まで萃まってないか?


物騒な会話を続ける面々を尻目にドスを効かせながら何食わぬ顔で酒を煽っている萃香を睨む藍だが


「う〜ん。正確な位置がわからなかったから適当に目星を付けて呼びこんでみたんだけどそれがいけなかったのかもね〜」


酒を煽りながらそっけなく答える萃香。
その姿に藍の怒りボルテージがぐんぐんと上がっていくが、萃香の言うことも一理ある。


「まぁ確かに正確な居場所がわからないからその点については何も言わないが……」



「わはー幻想郷の危機なのかー」


「ひぇぇーー!とんでもない時に来ちゃったーーー!!」



「春じゃないけど春ですよー」




「常闇妖怪に蛍妖怪に春告精と、明様に戦力外通知出したい連中についてはどう説明してくださりやがるんでしょうか、萃香様?」










「いや〜〜どうせなら人手が多かった方がいいと思っただけで…それに宴会する分には人数多い方が何かといいかな〜っと」






にこやかだがこめかみがぴくぴくと動かしながら問い詰める藍に対し、やはり酒を煽りながらあっけらかんに応える萃香。
そんな姿に藍の怒りボルテージが急上昇。






「………一度殴らせてもらってもいいか?」



「や、やだな〜冗談に決まってるじゃん。いくらなんでもこんな時に宴会なんてやれるわけないし」




ぎりぎりとこぶしを握り締めながら低い声でつぶやくリミットブレイク寸前の藍に対して危機的な空気を感じたのだろう。
萃香は冷や汗気味に訂正しつつ、自分が倒れ込んだことによって半壊させてしまった神社巨大ロボが墜落したことによって荒れ果てた畑を交互に見る。

現在のあり様はある意味萃香のせいだが、萃香も萃香でわざと神社を壊したわけでもなければ巨大ロボを畑に落としたのも偶然だ。
もちろん、ロボを藍の上に叩き落としたのも故意ではないというか、萃香は神社を守ろうとしていたぐらいであり、この惨劇は結果論だ。

だからこの件は萃香が悪いわけでもないが……




「うぅぅぅ………ここの連中は何故こう新しい問題を次々と増やすんだ……




藍も幻想郷30大迷惑は悪気があって問題を起こすことはないということを重々承知している。
だが、結果的に起こる問題騒動の尻拭いをする役目は大半が藍に回される。
もちろん、尻拭いといっても藍全てに押し付けられるわけでもないが、問題があちらこちらで起こり過ぎて時々分身でもしなければ処理しきれないような事態に陥ることもある。

いっそ悪気があって事を起こしてくれた方が思いっきり粛清を与えることができてすっきりとするのだが、中途半端故に粛清を与えられず怒りをぶつけられないのだ。


藍はキリキリと痛む胃を押さえながら懐から永琳特製の胃薬を取り出し水と共に飲み込むが少しむせたようだ。
げほげほと激しく咳をし始める。



「ら、藍様…大丈夫ですか?」


そんな藍を心配したのか、橙が不安そうな目で見つめてくる。
藍の主人の紫は部下の苦労に対して全く気に留めないどころか、さらなる無茶難題で振り回してくるのに対して橙だけが藍を心配してくれる。

その健気な姿が藍にとってどれだけ癒されたのだろう…













「うぅぅ…橙だけだ〜〜私の心配をしてくれるのは〜〜〜」









いろいろと限界だった藍はたまらず橙に抱きつく。







「ら、藍様?!顔が近いです!しかも尻尾が尻尾がからまって〜〜〜」







「あぁぁ〜〜橙、ちぇんちぇんちぇんちぇんちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!」













「さてっと、藍が壊れたみたいだし解説の続きは私がしようかな」




そのまま暴れる橙をがっしり抱きしめて至福顔で頬ずりし始める藍を視界の外へと追いやった萃香が酒を煽りながらよっこらしょっと立ち上がって黒板前に立つ。


「あぁ、頼むぜ。つるぺったん先生







どごぉ!!







「かいつまんで説明すると今、冥界の白玉楼に住む亡霊嬢がピンクの悪魔へと変貌してしまい、冥界中の食べ物をそのブラックホールに吸い込んでいっている最中なわけ。
だから、このままほうっておくとピンクの悪魔が人里に降り立ってしまい、里の作物を全て食べつくされてしまう恐れもある






「先生、ちゆり君の口から魂が抜けでて大変なことに〜〜〜〜!!」




「鼻に蜂の一刺しでも食らわせて魂を呼び戻しておきなさい、リグル君!!
それで、現在ピンクの悪魔は白玉楼入口で花の妖怪幽香が単身立ちはだかって食い止めてくれてはいるけど力で抑えたらピンクの悪魔が落ち着く前に冥界が崩壊して現世に幽霊達があふれる恐れもある。
だから藍とついさっき白玉楼へ向ってくれた里の守護神である慧音と解決法を話し合った結果、とりあえず食べ物をどんどこ放り込んで鎮静させようっということになったの。ここまではいい?」



教師になりきった萃香は、酒を煽りながらであるが黒板にわかりやすい(と本人は思いこんでいる)図を書いて説明する手を止めて一度振り返る。
一部では授業に拒否反応がでたらしく、寝ている生徒もいるがそんな不届き者には鎖付き文銅がプレゼントされたようだ。






鈍い音とともに悲鳴があちらこちらからあがった。



「せ、先生…そ、それで私達の役目は?」


その寝ていた不届き者の一人と思われるラクガキ巫女は脳天に生成されたどでかいたんこぶをさすりながら涙目に手をあげて質問し、萃香は何事もなかったかのように酒を煽りながら答え始めた。

「博麗神社には都合よく豊作と紅葉を司る神様が作った『ねずみ算式に作物が収穫できる畑』があるからこの畑から取れる作物をどんどん収穫して冥界の白玉楼へ持ってってもらおうと思ったんだけど…
誰かさんのせいで神社がめちゃめちゃになったしそっち側の後片付けも必要かなぁ」



「全く、誰のせいでこうなったのやらねぇ」



神社と畑の惨劇に対して手を組みながらしみじみと呟く魅魔だが、その脳天にはラクガキ巫女と同じくどでかいたんこぶが生成されている。

つまり、彼女も分銅の洗礼が下されたのだろう。
そんなあり様では今かっこつけていてもカリスマオーラはでてこない。



「とにかく、今は畑の作物回収を最優先で神社の修復は元凶に押しつけることにしよう。
各自、十分に気を付けて作物を収穫するように」



「それはいいとしてつるぺた幼女先生。質問いいか?」


「いいお、ちゆり君」



「畑の作物を回収するぐらいなら別にバケバケみたいな連中だけで十分手が足りるんじゃないのか?」


笑顔だが手にどでかい弾の塊を掲げる萃香に対し、ちゆりも座っていたパイプ椅子を素早く折りたたんで戦闘態勢。




お互い視線でもってバチバチと火花を散らし、周辺に緊張が走ったが…





























「全軍突撃ぃぃぃーー!!!」



























どっごぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!


























「っというわけであの畑からは作物以外に戦闘兵やらサ○バイマンやらマン○ラゴラといった危ないモンスター集団も時々湧いて襲ってくるせいでバケバケ達が消耗品扱いになっちゃって補充が面倒になるしそれぐらいなら…ね」



「あぁ、十二分によくわかったぜ」



畑から突然出現した戦国時代風の鎧を着込んだ騎馬軍団の突進を手に持っていたボムの一撃で消しとばしながら答える萃香。
その光景ははっきりいって非日常を超えた常識外な出来事だがちゆりはあまり驚いた様子はない。

ただ、戦意はそがれたようでパイプ椅子を再び展開させて自分もよっこいしょと座り直す。

だが、ちゆりは大した反応は起こさなかったが一部の面々はそうでなかったようだ。






「おぉぉぉぉぉ!!はるか古代には兵士が生えてくるという畑が存在したといわれていたがぁぁぁこんなところに実在したとはぁぁぁぁ!!!」




「まさしく、正規の大発見!!早速畑を調べてデータ回収よ!!!」






教授の夢美と科学者の理香子はこういう非日常的な物は好奇心をモロに刺激させられるようだ。

二人とも怪しげな実験器具測定器具を手にして我先に畑へと突っ走り……












パクッ









「あっ、食われた」


「でっかいパックンフ○ワーね」


「幽香もこういう植物育ててくれたら面白いんだけどねぇ」


「そうですよね〜魅魔様」


「とにかく、私達はああいう危険な植物達に気をつけながら作物を収穫すればいいんだな?」


何も行動を起こさない萃香とラクガキ巫女と魅魔と魔梨沙に対して、湧いて出てきたパック○フラワーを必殺の武器で撃墜させて食われた二人を吐き出させながら普通に応対するちゆり。

彼女は幻想郷の住民ではないが、主人であるH教授のH行為に振り回され続けているので少々のことでは全く動じない図太い神経を持っているようだ。



「まぁそういうこと。後、食べ物の配給が遅れるとピンクの悪魔がまた暴れてその結果、冥界と下界との結界が崩壊したら本当に幻想郷が大惨事になりかねないしもしそうなったら」



「わかったわ。万が一結界が破られそうになったら私が霊夢に代わって結界を張り直せってことね」


「うん。霊夢と閻魔も今幻想郷を留守にしていなければ、紫も頼りにならなさそうだし万が一のことが起きたことを考えると私達だけじゃ不安だしね。
ちなみに報酬はさっきから湧いて出てくる雑魚を倒したら時々変なアイテムが出てくるっぽいからそれを自由にもってって…何やってるのさ!?



「何って、ただのお賽銭の回収よ。相変わらず少ないけど全く入ってないよりましよね〜」



萃香の驚きとは裏腹にルンルンと鼻歌交じりに賽銭箱のふたを外して中身を回収するラクガキ巫女。


「だ、だからって……そ、そんなことしたら…霊夢が…」


「別にいいじゃない。こっちの博麗神社も私の博麗神社も共有しているようなものだし。
だからここに入ってるお賽銭も当然、私も得る権利があるわ。
ついでにここの霊夢の後始末をするわけなんだし、代金変わりとしてもらってくわよ」


それは一般的にジャイアニズムというドロボウ行為だが、ラクガキ巫女の言い分としては一応筋が通っている。

しかしだからといって賽銭箱からお賽銭を回収するなんて大胆不敵もいいところだ。


なにせ、博麗神社のお賽銭箱は霊夢にとって命より大事なものであり、その賽銭箱に手を出したら想像を絶する報復が待っている。
それだけにお賽銭箱は幻想郷に住む者にとって決して手を出してはいけない禁断のパンドラボックスであり、賽銭箱自体にも結界第一人者なスキマ妖怪でさえも解除するのに手を焼く超強力な防御結界で守られているのだが……このラクガキ巫女はその結界をいとも簡単に解除してパンドラボックスに手を出している。


そんなラクガキ巫女に対して萃香は何かを言いかけようと思ったが、やめるついでに今見たものを酒の力で記憶から末梢させることにした。









「ふぅ、ようやく出力が80%まで回復しました。ですので都合よく集まっている…」







「よし、いい具合にポンコツが起きたし早速作業に取り掛かるよ!
作戦は各自『ガンガン刈ろうぜ』でいくお!!」
















「OK!!」
















ぷはーっと酒臭い息を吐く萃香の号令で沸き立つ面々。
どうやら今集まっている面子は腹の中はどうあれ特に反対する者はいないようだ。

各自各々の得物を手に戦場と言う名の畑へと向かう。



「えっ、あの〜〜」




そんな雰囲気の中で一人残されたポンコツメイド。
伸ばした手がただむなしく空を掴むその肩を萃香がぽんっと叩く



「あっ、ポンコツは畑に来なくていいからまず神社修理をよろしく。
自分がブッ壊したんだからその責任しっかりとらないとね!!!





「えぇぇ〜〜なんで私が悪の基地の修理なんかしないといけないんですか!!
大体壊したのは貴女のせいじゃ…」





納得がいかないポンコツは食い下がろうとするが




「ほぉ、ならその悪の基地の祟り神である私の恐ろしさを骨身…じゃなくってネジ一本まで懇切丁寧に教え込んでやる必要がありそうだねぇ













「わかりました〜〜全力で修理させてもらいます〜〜〜!!」













後ろからだだもれ悪オーラを放つ魅魔に睨まれていきなり従順になるポンコツ。
余所では「ドヘタレ」とも呼ばれる彼女だが、この情けない姿を見るとその呼び名もあながちウソではなさそうだ。




「よしよし。とりあえずこいつ一人じゃ不安があるし、萃香も手伝ってやってくれないか。
お前はこういうの得意そうだし神社修理ならバケバケ達を消費せずに使えるだろ」


「確かにポンコツ一人だけじゃ逆に壊されそうだし、私も加わっておこっか。
じゃ、そっちの畑の方はよろしく」




「任せときな。湧いて出てくる雑魚なんか私のミマスパークペンペン草一つ残さずふっとばしてやるよ













「作物までふっとばしちゃらめぇぇぇーーー!!!」










「あぁ、そうだったね。でも私は手加減が苦手だからどうなるかわからないが極力努力はしてみせるよ」




さらりと問題発言を残しつつも笑いながら畑に向う魅魔。その背中を見送りながら萃香は呼ぶ人物を間違えたかもと少し後悔しはじめた。

だが、後悔はしても反省はしない。

瓢箪の酒を景気づけにぐいっと飲み干すとくぅーっと背伸びしながら崩壊した神社を見上げる。







「さぁって、とっとと直してしまおっか」
















ピンポンパンポーン♪

この先は登場人物が多くなりますので誰の発言か一目でわかるようにしばらく会話形式を取ります。
その点を踏まえてこの先をお読みください。








< 1日目 >





萃香「ふんふふ〜〜〜ん♪(とんてんかん…)はい次はそこを持ち上げて〜〜」


VIVIT「あぅぅ〜〜重いです〜〜〜〜」


萃香「ほらほら、もっとしっかりもって!でないと釘が打てないじゃん」


VIVIT「で、でも〜〜〜なんで私一人でこんな大黒柱を持ちあげないといけないんですか〜〜〜!!」


萃香「なんならこっちで天井を支えながら釘を打つ?」


VIVIT「い、いえ…遠慮しま〜〜〜ぶふっ」



ドカーーーン!!



ちゆり「お〜いそっちに流れ弾がいったから避けてくれ〜〜」


萃香「もっと早く言ってよ〜〜ポンコツの顔面に命中して墜ちたじゃないか〜〜」


ちゆり「よかったじゃねーか。ポンコツはほっとけば直るんだし神社に当たってたら今までの苦労が台無しだぜ」


萃香「あ〜そう考えたら確かによかったかも」


ちゆり「そういうことだぜ」


ポンコツ「うぅぅぅ…ひどいです…二つの意味でひどいです(いつの間にか名前変わってますし)」




ルーミアー「わはー…(ばたんきゅー)」


リグル「ひぇぇーールーミアが倒れたーー!!誰か加勢きてぇぇぇ!!!」


藍「わかった、私が向か…」



橙「わぁぁぁぁん!!藍様助けてぇぇぇぇぇぇ!!!」







藍「ちぇ、ちぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇん!!!今助けにいくぞぉぉぉぉぉ!!!」








リグル「あぁぁぁーーー!!援軍が逆方向に走っていくぅぅぅぅ!!」






魅魔「仕方ない、こっちは私が引き受けるから理香子が加勢にいけ!!」



理香子「わかったわ。さぁ、蛍の神秘を見せつけなさい!!




リグル「ひぇぇ〜〜〜!!!」




萃香「…しかし向こうは向こうでずいぶん凄いことになってない?」


ちゆり「あ〜どうもご主人が畑に漂う磁場を調べるためにあれこれ弄ってららどうも戦国時代と三国時代と畑とを直結させちまったらしく向こうから侵略兵がどんどん進行してきてるみたいだぜ」



ラクガキ巫女「らめぇぇぇ〜〜、敵が多すぎるからこっちも持たない!!」



魔梨沙「うふふ……こっちも瓦解寸前よ〜〜」



玄爺「二人とも、ここがふんばりどころですぞ〜〜〜!!」




小兎姫「ひゃっはっはっはっはっはっは!!(どかんどかんどかん)」




リリーW「お姉ちゃんの真似で春のあ〜〜〜〜〜……(ピチューン)」




ちゆり「ちっ、巫女と魔法使いが危ない上に姫の爆弾乱打の巻き添えで白っこいのもやられた!!
こうなった原因を作ったご主人はパイプ椅子で思いっきりぶん殴って気絶させちまったし、私が直結させた空間をふさぐまでの間なんとか持ちこたえさせてくれ!!!」



萃香「わかった、修理を後回しにして私とポンコツとバケバケ達が穴埋めに入る!!
いけ〜〜必殺ポンコツミサイル〜〜!!(天手力男投げ)」





ポンコツ「あぁぁ〜〜〜〜れぇぇぇ〜〜〜!!(どっかーーん)」






藍「くっ……この人間強い上にしぶとい!!」



リグル「うぅぅ〜〜リグルキック!リグルキック!!


ヤケクソリグルキィィィィィィィィック!!!!





魅魔「くそっ、こうなればミマスパークで一掃をしてやろうじゃないか!!





全員「それはやめてぇぇぇぇ!!」






慧音「どうだ、作業ははかど…って何やってるんだ?!」


妹紅「この状況、まるっきり戦国時代の合戦そのものじゃないか……」





ちゆり「二人ともいい時に来た!状況説明は後でとにかく加勢を頼むぜ!!!」


慧音「状況がわからないが危機というのはわかった!行くぞ妹紅!!!
後、死者は出さないよう火力は抑えるようにな!!」


妹紅「了解!!レア風味でこんがり焼いてやるよ!!!」



藍「くっ…人間如きが調子に乗るな……!!



○忠「ぐはぁっ……!!!!!」



橙「藍様…かっこいい…」



藍「橙、なに見とれている!戦闘はまだ終わってないぞ!!
私が右を叩くから橙はバケバケ数匹を引き連れて左を叩け!!!」




橙「わかりました、藍様!!」



慧音「お前らの住むべき時代はここではない、あるべき場所へと帰れ!!」



妹紅「おらおら、逃げないと骨まで残さず焼きつくしてやるぞ!!」



























< 2日目 >




慧音「戦国時代のタイムスリップ化と残留戦力が片付いて一段落ついたと思ったら今度はサイバ○マンの群れ…か?」


ちゆり「しかも半端な数じゃねぇ〜ぜ!!」


萃香「文句垂れてる暇があったら一匹でも多く潰すんだ〜〜〜〜〜!!!」



ラクガキ巫女「もう神社をこれ以上壊させてたまるもんですかぁぁぁ!!!」




魔梨沙「危ないハクレイノミコ!!こいつらはうかつに倒すと自爆s…あ〜遅かったわ」



魅魔「とりあえず巫女のダメージは玄爺が身代わりで受けてたようだし、玄爺は頑丈だから大丈夫だろう。
とにかく、こいつらは距離を取ってルーミアの闇で足止めさせつつ遠距離からの弾幕で倒すよ


ルーミア「闇で目くらましなのかー」



藍「闇と弾幕を突破してきたものはバケバケと毛玉達をぶつけて相殺させろ!
最前線の指揮は頑丈な玄爺に任せるがいいか?」


玄爺「任されたですぞ〜〜」




リグル「ひぇぇぇ〜〜〜〜〜モ○ボル達が臭い息を飛ばしてリリーと羽目玉達が石にされたうえに小兎姫が混乱して敵味方関係なしに爆弾を投げてくるぅぅぅ!!!!



妹紅「なんだかいつもと同じ気がするが…」



慧音「確かにそうだな。とりあえず小兎姫はほっといてモルボ○はポンコツをぶつけさせろ!!
奴なら臭い息もきk…って
何やってるんだぁぁぁ〜〜〜〜ポンコツゥゥゥゥ!!!!!」




ポンコツ「た〜す〜け〜て〜です〜」




ちゆり「ポンコツの野郎、パックンフ○ワーに食べられてやがる…このままポンコツごと撃ち抜いてやろうか」



藍「どうせ奴は消化されないからほっとけ!!
それより妹紅は不死身の身体を利用して玄爺と共に最前線にでるんだ!!
そしてリグルは下がってパッ○ンフラワーを相手しろ。
モル○ルはとりあえず萃香が行け!!!
臭い息は根性で耐えろ!!!!」





萃香「的確な指示だけど最後はむちゃだぁぁぁぁ!!!
あの臭い息食らったら私でも耐えれないよぉぉぉ〜〜〜〜!!!」







魅魔「仕方ないねぇ、だったらモルボ○達は私に任せな!!!
私は霊体だから臭い息なんか効かないはずさ!!!




萃香「よし、まかs…って何即効で麻痺ってるのさぁぁぁぁぁ!!!!!」


魅魔「いやまぁその……ひとまず助けてほしいかな…なんて(びりびり)」



萃香「くっ、石化してたら『天手力男投げ』で○ルボルにぶつけてやるところを…」



ラクガキ巫女「はいはい。あれでも貴重な戦力だし、私が治癒させるからそのHをそのなんとか投げでこっちにパスしてきて!!




橙「ら、らんさまぁぁぁぁ!!こっちから落ち武者ゾンビの群れがぁぁぁぁ!!!」





藍「なんだとぉぉぉお!!ちぇぇぇぇぇぇんん!!!今行くぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」




慧音「待て待て待て!紅魔館の魔女曰くアンデッドは火に弱いはずだから妹紅にやらせろ!!
藍は妹紅の穴を埋めるべく引き続きサイバ○マンの方を相手してくれ!!!」



藍「そ、そうか…ならそっちは任せるがモ○ボルは……」



慧音「苦肉の策だが臭い息が効きづらい毛玉達を盾にしつつ遠距離から弾幕攻撃で潰すしかない!!」



ラクガキ巫女「それは難しいわ!毛玉達はかなりやられて残りの数では到底耐えきれ……」



文「ふふふ…これはいい時に来ましたね!!
神社でこんな戦闘が拝めるなんて大スクープですよ!!!!









萃香「適任者がきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」












慧音「天狗!!!降りてきて追い風でもってモルボ○達を臭い息ごと吹き飛ばしてくれ!!!!」



文「えぇ?!私はただの第3者の扱いで…」



藍「報酬は前に紫様から没収された寝顔写真の撮り直しでどうだ!
今度は私も撮影に協力してやる!!!」




文「わかりました!それで手をうちましょう!!!」




魔梨沙「うふふ…○ルボル達はこれでなんとかなりそうですけど〜」



慧音「しかし、今さらながらなぜ前触れなくこんな魔物の異常発生が……」



理香子「ふむふむ…新作の栄養剤成長促進剤を使用したら突然変異体とゾンビを作り出すという思わぬ効果を呼んだようね



夢美「でも、これはこれで面白いわぁぁぁ!!」
















全員「(予想はしてたが)お前らのせいかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」









 
キモけーね「二人まとめて突きあげてやるからちょっとmoonしろ!!!
(ハクタク変身&ハリケーンミキサー)」













caved!!








 
理&夢「ヒギィィィィィィィーー!!」















文「おぉぉーーつまりこの事態はあの二人のせいだと…後でたっぷり尋問して情報を聞き出しましょう」



リグル「バグストームバグストームバグストーって何このパック○フラワー?!
あっちも蟲を放って私の弾幕を相殺してきてしかも突撃して……ひぇぇ〜〜〜!!」




橙「ああ、藍様!!リグルがパックンフ○ワーの突進で吹っ飛ばされてそのまま触手に捕まって食べられちゃったぁぁぁ!!」





ちゆり「ちっ、世話のやけ……ってちょっとまて!!あれはパックン○ラワーじゃなくってインセ○トプラントじゃねーかよ!!
パック○フラワーより
3倍は強いぞあれは!!!とにかく、今たすk…」

















小兎姫「はぁぁ〜〜〜弾幕美はいいわぁぁ〜〜〜!!!爆弾乱打〜〜!!!」










橙「あ〜〜そのなんとかプラ○トごとリグルが吹っ飛んでいく〜〜」



妹紅「なんだ?!このゾンビまったく火がきk…うあぁぁぁ!!!



慧音「まずい!!妹紅がタ○ラントに捕まって抑えられた上、一部のゾンビ達が炎の壁をどんどん突破していくぞ!!
巫女のお払いか祈祷での浄化はいけるか?!」




ラクガキ巫女「無理よ!!こっちはサイバ○マンの爆風を防ぐ結界維持だけで手が一杯!!!
なんとかそっちだけで持ちこたえて!!!!」




慧音「くっ、仕方ない!ゾンビは私が引き受けるからちゆりは橙と混乱している小兎姫とともに食虫植物達を頼む!!」



ちゆり「任されたぜっていいたいが、かなりきついぜ!これは一時撤退も考え……」




小町「……いつまでたっても作物が届かないから様子見に来たんだが何やってるんだ?」



慧音「いい時に来た、仕事だ死神!!
連れている裁判官と一緒にこのゾンビの群れを彼岸に送り直してくれ!!!」




小町「はぁ?あたい等はただ収穫物をとりに……」



慧音「いいからつべこべ言わずに働けってか戦え!!
このままだと妹紅と我々と畑の作物が全滅してしまうんだぞ!!!」




小町「きゃん!!わかりました!面倒だけど退治しまーーっす!!!!」





魅魔「はっはっは!こんな緊迫感ある戦闘は久しぶりだよ!!
どんどん蹴散らせてもらうよーーー魔梨沙!!!!」





魔梨沙「おーけー魅魔様♪」




萃香「即効で麻痺った癖に今さらかっこつけるなぁぁぁ!!!!!」





玄爺「今度はマンド○ゴラの群れも発生しましたぞー!!
死に際の悲鳴攻撃に気をつけてくだされーーー!!!」






藍「まだでるか…こうなれば総力戦だ!!
全員死力を尽くして畑と作物を守れぇぇぇ!!!!」

























< 3日目 >




藍「はぁ…はぁ…今こっちに残ってる戦力は?」


魅魔「魔梨沙と巫女は共に魔力と霊力切れで昏倒して、玄爺は自爆攻撃の爆風から私達を守るための盾となってくれてたから重症を負って戦線離脱だね」


萃香「いくら主人公組といってもやっぱり基本スペックは人間の域を超えないってことかな…やっぱり」



ちゆり「その人間仲間なご主人と理香子もcaved!!でやられたところに小兎姫の爆弾で吹っ飛んでしばらく使い物にならないぜ。
ちなみに私は能力をあまり使ってないからまだなんとか戦えるぜ」


文「後、散々暴れていた小兎姫さんはサイ○イマン達の群れの中央で大連鎖暴発させて消し済みになってますし…よく生きていられますよね」


慧音「それは言わないお約束だろ。こっちのリグルとルーミアは双方共に能力を使いすぎてダウン中だ。
橙はまだ戦えそうだが、残り妖力からして宣戦離脱させた方がよさそうだろう。これ以上戦わせて万が一があったら藍が豹変してしまう



妹紅「リリーWはなんか自力で石化解除して毛玉と羽目玉と妖精の援軍を呼んでくれたけど…正直戦力のあてにはならなさそうだし」


ポンコツ「うぅぅぅ……なんで私がこんな目に……」


小町「うぅぅぅ……神社がこんなことになってたなんて大人しく白玉楼に残ってればよかった…」


文「とにかく、私はもう報酬なしでいいのでいい加減帰らせてもらいたいところですが…」



藍「泣きごとを言うな!!帰るな!!!
私だって紫様さえ出てきてもらえればこんな苦労せず済むのにっとやり場のない怒り抱えてるんだぞぉぉぉぉぉぉ!!!!」



慧音「それにあの亡霊嬢が人里に降りてきて食糧を全て食い荒らされたら里の幼j…子供達が飢え死にしてしまうんだぞ!!そうなれば死神、お前の仕事も増えるぞ!!!
ブン屋もブン屋でここにいる連中が全滅で幻想郷崩壊なんていう記事を書くつもりか?!」




小町「きゃん!!それだけは勘弁を!!!」



文「そ、それはまず過ぎです…わかりました!
もうこの際とことん付き合いましょう!!!」




魅魔「ひとまず、橙はリリーWと怪我した裁判官とともにこの収穫した作物を持って白玉楼へ向かわそう。
恐らく、後一回の収穫で冥界の亡霊嬢は止まる…そうだろう?」



小町「い、一応無限の胃袋を持ってるわけではなさそうだし今畑に残ってる作物を届けきったら多分終わりだろうっと思うんだけど……」


萃香「後一回………かぁ」


橙「うぅぅ…藍様、役に立てずにごめんなさい…」


藍「いや、橙もよく頑張ってくれた。それに収穫物を届けてもらうことだって大事な仕事なんだ。
だから、橙を一人前だと思ってこの大事な仕事を任せようと思うんだ。頼むぞ」


橙「わかりました。藍様!
無事に収穫物を白玉楼まで持っていきます!!




慧音「さて、この残された戦力でどれだけ収穫できるかわからないが」


妹紅「それでもやらなければいけないんだろ?里の人間のために…」


魅魔「その通りさ!さぁって、最後の戦いだ!!
皆気を引き締めていくとしようか!!!!」


























< 4日目 >




藍「お、終わった………」


文「はぁ……はぁ……こんなになるまで戦ったのは久々ですよ…」


ちゆり「………もう、うごけねーぜ……」


萃香「皆…生きてる……?」


魅魔「大丈夫だ、皆生きてるよ。とはいえ…私もさすがに限界か……」


妹紅「くぅ……リザレクションし過ぎて体力が……」


小町「映姫様………あたいはもう充分働いたから休んでもいいですよね……」


ポンコツ「………ゲンザイキケンナジョウタイデス。カイフクマデノアイダ、キュウミンモードニハイリマス(プープー)」


慧音「まだだ、この作物を白玉楼に届けなければ……」



橙「らんさまぁぁぁ!!助っ人連れてただいま戻ってきましたよぉぉぉ!!」



大妖精「橙ちゃんから助っ人にきてくれと言われましたから来てみましたけど…この状況は一体?」



藍「ちぇ、ちぇんと大妖精か……いい時に来てくれた……収穫物ならここにあるから……これを冥界の白玉楼に……後は頼むぞ……ぐふっ」




橙「ら、藍様…藍様ぁぁぁぁぁぁぁ?!」



大妖精「……………橙ちゃん」




全員「…………」



橙「………………行くよ!!藍様が私に後を頼むといわれたから、私は藍様達に代わって最後の勤めを果たす義務がある!!
行こう…皆の想いが詰まったこの作物を持って白玉楼に」


大妖精「う、うん」


魅魔「はっはっは、最初見た時はただのおまけだと思っていたけどいっぱしの式神な顔になったじゃないか……」


萃香「全くだね……とにかく、今は眠ろう……」


文「えぇ…私も…取材は一眠りしてからにしたいですし……」


慧音「……畑もほぼすべて刈りつくして空間湾曲も元に戻したからこれ以上変なのはでてこないだろうし、今は眠ろう………」


ちゆり「賛成…だぜ」


妹紅「異議なし……」


小町「むしろもう寝か……せ……て……」


魅魔「あぁ、そうだな…今は寝て…後のことはそれから考える…か……」



























< 5日目 >





「ふむ…つまり亡霊嬢は倒れてそのまま起きてこないと」

「はい、そうです。白玉楼ではみすち〜とエリーの他、花の妖怪の幽香まで調理に加わっていたんですが満腹になって満足したのか食べてる途中でパタリと倒れてしまってそれ以後起きてきません」


神社の収穫騒ぎも一段落、疲れ切った面々も寝たことで多少回復して動けるようになったところに白玉楼から橙が帰ってきたのだ。

藍とその他のメンバーは橙からの報告。つまり冥界の方も危機は脱したという吉報を聞いて全員がほっと胸を下したが藍だけは心の中に何かが引っ掛かって素直に喜べないでいた。


「そうか…食べてる途中に…幽香が調理に加わって…食べたら倒れた………まさか!?」


橙からの報告を確認するように復唱しながら、頭の中でその不可解な現象の答えを探っているうちにふとある考えが思い浮かんだ。


「まさか…あの花の妖怪が……」

「あぁ、たぶんやっただろうね」

「えぇ、料理に一服を盛ったのだと思います〜」

「相変わらずさりげにえげつないことするのは変わってないみたいね」


その藍の予想を肯定するかのように幽香と長く付き合っている魅魔他、魔梨沙とラクガキ巫女も同意した。
同時にその言葉を聞いたとによってキラリと目を怪しく光らせる二つの人影


「ということはまさしく毒殺事件ですね!!
陰謀の匂いがぷんぷんとしますよ!!!」



「事件解決なら幻想郷の警察である私の出番ね。
まずは情報収集が基本だし協力しましょう!ブン屋!!



「もちろん構いませんよ!!
さぁ、知ってることを洗いざらい話してください。橙さん!!」



「お上相手に嘘つくと容赦しないわよ〜〜〜!!」






ずずいっと脅迫するかのごとく橙から情報を根掘り葉掘りと聞き出しにかかる、ブン屋の文と自称警察官な小兎姫。
その姿に橙が半泣きになりかけたことで藍の額にぴくりと青筋が走った…が


「わかりました。私がわかる範囲で向こうの状況を説明しますからひとまず橙ちゃんから離れてください!!
怖がって脅えてるじゃないですか!!!



藍が動く前に大妖精がすかさず割り込みに入り、橙と二人を引き離した。
その後は当然のごとく、大妖精をロックオンした二人からひたすらに質問攻めされるが、大妖精もなんとかわかる範囲で答えている。



「しかし、冥界最強の亡霊に果を示すような毒を調合するとは、さすがは幻想郷最強を唱える花の妖怪ということか」


そんな健気な大妖精の姿に感謝しつつ、泣きべそをかいている橙をなだめながらも幽香の一件についてぼやく藍。
その藍のぼやきを聞いた魅魔はくすりと笑う。


「幽香はあれでも閻魔を恐れないどころか平気で喧嘩売るような奴だしね。
閻魔に喧嘩なんてスキマ妖怪や亡霊譲でも真似できないんだろ」


「確かに……紫様は暴虐武人にふるまっているくせに、閻魔相手になるととたんに縮こまってしまうからな…
今回の引きこもりモードも冥界の一件が閻魔も関与してきたのが原因らしいし」




魅魔から自分の主のことを悪く言われて少しむっとしたが、ある意味それは事実だ。
特に『偶然カップファイナル〜』での「ジャッジメント3連発」でもって虫の息にされたのがよっぽど堪えたのだろう。
最近ではもう閻魔が幻想郷に訪れたら即座に押入れの中のスキマの奥に引きこもってがたがた震えている始末だ。




さすがの藍もそんな情けない主人の姿にはフォローができなかったらしい。
むしろ、スキマから核爆弾でも投下して無理やり引きずり出したいぐらいだが…
そんなことすれば後で『傘による煩悩解放108回猛連打』なお仕置きが下されること確定なので実行には移せないでいた。



「とりあえず、幽香のおかげで幻想郷の危機はひとまず脱したんだ。これでよかったことにしようじゃないか」


と魅魔は笑いながら、言うが藍はとてもそうは思えなかった。

なにせ幽香は、純粋に高い妖力だけでなく知力と度胸をも兼ね備えてる上にいぢめっこ属性有りという、『幻想郷縁起』にて危険度極高に認定されるほどの危ない妖怪だ。


そんな幽香が幽々子に毒をもったということは嫌な予感がするというか、嫌な予感しかしてこないが……


「………まぁ荒っぽいかもしれないが危機は脱したのだ。この際よしとしよう」


一体どんな毒を調合したとか復活した時に新しい問題が発生することがほぼ確定になりそうとかで全然よしではないのだが…
紫様でさえ避けてしまう閻魔に喧嘩売るような幽香へ事を穏便に済ましてくれるよう説得させる自信なんて到底ない。


今回の件だって藍や萃香や慧音が頼み込んで協力してもらったわけでなく、ただ面白そうだから首を突っ込んだだけに過ぎない。


さすがに幻想郷を破壊するような真似は控えてくれてはいるが…
何かのはずみで全てが壊れてしまう、そんな爆弾がセットされたままである意味では全く危機から脱していない状況だ。


「ふぅ…何はともあれお疲れさんってとこかな。とりあえず一杯やる?」


そういいながら酒を進めてくる萃香。
本人はすでに一杯どころか十杯ぐらいはやっているし一部は危機を脱したという吉報に喜び、すでに飲んで食べて騒いでいる状態だ。

それを見て藍は決心した。



「そうだな。今は飲もう」



藍も藍で限界だったようだ。というか、このまま近い将来起こるであろう悪い予想を考えていたらストレスで胃に穴があいて倒れてしまいかねない。
こうなれば酒の力で悪い予感ごとストレスを消去するために、進められた酒をひったくるように奪うと半ばやけくそで一気に飲み干した。



「お〜宴会じゃあまり飲む姿みたことなかったけどいける口じゃない」



「あ〜私を誰だと思っている。妖獣の中では最高峰と名高い九尾の狐だぞ。もう一杯よこせ!」


どんっと杯を叩きつけながらすわった眼で睨みながらさらにお代わりを要求する藍。
だが、萃香というか鬼は酒豪相手には好意を示すので喜んで酒を注ぐ。
注ぎ終わった杯はまたもやぐいっと一気に飲み干された。


「お〜〜いいペースで飲むじゃんか!!よし、今度はいっちょ私と飲み比べといこいじゃ…ほぇ?」




藍の思わぬ飲みっぷりに感激した萃香はもう上機嫌で空になった杯に次の酒を注ごうとしたが藍はその手をがしっとつかむ。
いきなり手を掴まれて萃香は素っ頓狂な声が上がるが藍は火照った顔のまま萃香をぎろりと睨みつけ…





「すいか…紫ばばぁについてだがあれに閻魔以外の弱点か何かあるか…?」




「はぁ?………紫に弱点って…閻魔以外ではあまり聞いたことないけど…あるとすれば……」




「知ってるなら教えろ!!むしろスキマから引っ張り出す方法を教えろ!!!
畑の空間湾曲については絶対あの
紫ばばぁがなんかの境界を弄ったからだ!!!」








「いやいやいやいやいやいや、そう決めつけるのは早すぎるって!!!」









「そうにきまっている!!!!だから私に○キの呪文でも教えろ!!!!
なんならザラ○ーマでもいい!!!!

一度奴の息の根を止めたら次の紫様はきっと綺麗な紫様になってくれるはずだ!!!!!」
















「いや、言ってることがもう支離滅裂になってるというかそれじゃ『Hへつける薬』にぃぃぃぃぃ!!!」









「いいからつべこべ言わずに教えんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」








「あぁぁぁ〜〜〜藍様やめてぇえぇぇぇ!!!
鬼がもう白目剥いて魂が抜けかかってますってばぁぁぁぁ〜〜!!!」













「おぉぉぉぉ〜〜〜白昼堂々鬼を強姦する九尾の狐!!
これもスクープですよ!!!!」











普段真面目な奴ほど、酒が入ったら豹変するのはお約束なのだろうか…

もう完全に逝った目で萃香の首を両手で掴んでそのままがくがくと揺らす藍に泡吹いて落ちる寸前の萃香。
その藍を止めに入ろうとする橙と、止めることなく写真を撮りまくる文。
ちなみに小兎姫は藍の豹変は関係なくまだ大妖精から情報を収集中である。

だがこういう光景は宴会の席では日常茶飯事な出来事。
身内以外ではあえて止めることはなく、むしろ面白おかしく見守るだけだ。
ついでに文はしっかり写真に収めているので、この件は十中八九紫に知れわたることとなるだろう。


その際に紫はどんな反応を示し、藍はどんな目にあうか…それはまた別の機会として触れることとしよう。





「あぅぅぅぅぅ〜〜みなさ〜〜ん。そろそろ私の話を聞いてくださ〜〜〜い」



「あ〜神社の修理終わったの?ポンコツ



そんな宴会の席にふらふらとした足取りでやってくるのはもはや本名ですら呼ばれないポンコツメイド。
ちなみに答えたのは焚き火に突っ込んだ棒をかき回して焼き芋の焼き具合を調べていたラクガキ巫女だ。


「えぇ、終わらせましたから私の話を…」

「だったら次はあそこの余った作物で何か作って頂戴」

「だから〜私は召し使い……ですけど貴女達専属の召し使いでは……」

「もしかして料理なんてできないのかしら〜〜?」


同じように棒を差し込んで焼き芋を取り出す魔梨沙の言葉にポンコツはピクリと眉をひそませ。


「こらこら、いくら事実でもそんなことを言ってやるもんじゃないぞ」

「そうですよね〜〜魅魔様の言うとおり、私が失礼でしたわ〜〜」


そうやってフォローになってない魅魔とうふふと笑う魔梨沙の態度にポンコツはぶちっと何かが切れた。





「むかっ!!私だってメイドロボのはしくれです!!
料理の真髄をおしえてあげますです!!!





そう叫ぶや否や腹の中から調理器具一切を取り出して準備をし、作物をひっつかんで上空に放り投げると




「いっきますよ〜〜〜我が包丁に斬れぬ物などちょっとしかない…です!!」



そのまま目に見えぬ速さでずばずばと食材を切り刻み始める。



「お〜なかなかやるじゃないか」

「でも腹の中から取り出すってド○えもんみたい」

「いや、どちらかというとサ○ボーグクロちゃんの方がしっくりくるかも」

「確かに、あれは腹の中からいろいろ取り出していたからね〜」

明様に自分の身長を超える長剣をすらりと腹から出していたし」


なんだかものすごいマニアックというか知ってる人いるのかどうかすら怪しい会話を続ける旧作主人公+α。

だが、話している間にもポンコツは妹紅に頼んで出してもらった超火力の中で特大フライパンを巧みに操っている。
その表情は真剣そのもので命をかけるかのような気迫すら感じられ、見る者を圧倒させている。


やがて調理も終わったのかフィニッシュで特大フライパンを勢いよく跳ねあげて中の料理を空高く舞い上がらせつつ、予め用意していた大皿へと落とす。



「はい、できました〜〜!!
『VIVIT(ポンコツ)特製シャイニングパスタ+β』です!!」



ポンコツの叫びとともに某料理アニメのごとく激しく光輝く料理。

そのブツは明様に料理の常識を超えているが見た目的には悪くなければ辺りを漂う匂いは食欲をそそる。


「なんの匂いなのかー?」

「これはあのポンコツさんが作った料理ですか…?」

その匂いを真っ先に嗅ぎつけたのはルーミアと文。
さすがルーミアは食欲では亡霊嬢こと幽々子に匹敵するだけあって嗅覚は鋭いし文も面白そうなことには即座に首を突っ込んでくる。

ルーミアはすでにナイフとフォークを持ってスタンバイしており、文は相変わらずカメラで写真を撮りまくっている。



「一見無茶で大胆だが基本はしっかり忠実に守った料理…」

「しかも栄養バランス的にも優れた一品」

「見た目的にも喰い合わせ的にも面白いじゃねーか、このやろー」


次にやってくるのは夢美と理香子とちゆりの研究者組。
その視点は科学的というか論理的な目で見ているがぶっちゃけいうと「うまそうだ」の一言に片付けられる。



「藍様ーあのポンコツがおいしそうな料理を作ってくれましたからあれを食べて正気にぃぃぃ!!」





「そ、そうそう!!まずはあれを食べて落ち着こう、ねっ、ねっ!!」







「やかましい!!話をそらすな!!!だから昂翼天使をも一撃で倒す禁断バグアイテム『バブ○ローション』の調合レシピを教えろ!!
もしくはバ○ッシュデスを教えろ!!!」






「あ〜だめだ。こうなれば口に直接突っ込ませるしかないね、こりゃぁ」

相変わらず萃香に絡みながら紫抹殺方法を聞き出しにかかる藍と止める橙の姿を見て、小町はやれやれとつぶやきながらポンコツが小皿に移し替えている皿を受け取って橙に渡す。


「……これってパスタ?あまり食べたことないけど…おいしいの?」



「リグルはまだ食べたことなかったのか?
まぁ、幻想郷では洋食はあまり食べられないから無理もないか。
私自身も最近紅魔館のメイド長が作ってくれた物を食べただけだったがうまいぞ」

「でも慧音。このパスタは、あのメイド長が作った物とは作り方も香り全く違うが…」

「だから私のオリジナリティが入っているのですよ〜」



リグルに説明する慧音を余所に、まだ不安がある妹紅に説明を付け加えるポンコツ。
それを聞いて妹紅以下、この場のほぼ全員がたらりと嫌な汗が流れた…が



「まぁ、とにかくは一口食べてみようではないか。話はそれからでも遅くないだろ」



魅魔の一言で全員がこくりとうなづく。
ルーミアはもう待ち切れずに食べ始めているが彼女の様子を見る限りは特に変わった様子はない。

少なくとも食べれない物ではないだろう。




「では、いただきま〜〜〜っす」



フォークでパスタを適量巻き取った後に全員口の中へと運び…………





































































(小兎姫が爆弾を投げまくって辺り一帯破壊しまくる様を想像しながらしばらくお待ちください)





































































「あれの名前だけどポンコツからマルチに改名させようと思うけどいいか?」

「賛成ですわ。魅魔様」

「異議なし」

「むしろ反対する理由はないね」

「即効改名だ!」

「以下同文」



「え〜なんでですか〜〜!!」









「やっかましぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!
あんな殺人パスタが作れるメイドロボなんてマルチ以外いるかぁぁぁぁ!!!!」










「全くですよ!!真実を唱える記者まで毒殺するなんて聞いたことありません!!!!」



「同じく、犯人を取り締まる警察官を毒殺するなんて聞いたことないわよ〜!!」



ポンコツの苦情に対して同時に叫ぶ面々と少しずれたことを叫ぶ文と小兎姫。

一体どんな味なのかはあえて伏せるが食べた瞬間にルーミア以外昏倒してしまうぐらいの破壊力があのパスタに秘められていたのは確かだ。


なお、唯一あの殺人パスタを受け付けていたルーミアは、全員が撃沈した後でも食べ続けており全員が気がついた時にはきれいさっぱり食べつくしていた。


よって真実は文字通り闇の中へと葬られた。




「そ、そんな〜〜だからってあんなドジっ子メイドロボ扱いはひどいですよ〜〜」


満足げなルーミアとは裏腹になおも食い下がるポンコツことマルチ。
それでも一同は全く耳を貸さないかと思いきや…


「そうだな、確かにひどいというか失礼だな」


以外にも慧音からの助け舟がでた。


「そ、そうですよ〜もっと言ってやってください!!」


マルチもこの助け舟を逃すまいと必死でしがみついて反撃にでようとするが……世の中はそう甘くない。



「こんなポンコツと幼女顔で皆から好かれる人気者なマルチと同等扱いさせるなんて失礼千万だ!!」







「なるほど、それは確かに失礼だ」







慧音の真剣な表情で語るその姿…特に幼女という言葉が気にかかったが妹紅も相槌を打ったことにより周囲もそうだと納得。
とにかく、慧音はポンコツを助けるどころかさらに奈落へとたたき落としたようだ。



「うぅぅ〜〜ご主人様……世間はつめたかとです……」



信じていた者から裏切られたことでショックを受けたポンコツは一人体操座りしてロボなのにしくしくと泣きはじめるが周囲は全く気に留めずにポンコツの新しい名称談義を続ける。


「だったらあのポンコツの名前はどうするか…」

「余所では『ドヘタレ』やら『メイドジャック』やら『駄メイド』と呼ばれていたんだろ、あのポンコツ」

「あぁ、だからせっかくだしこっちでも何か新しい名前を付けてやろうと思うんだが…」


ある意味そんなもの考える必要性はないのだが、この記録はなぜかシリーズ化してしまったオフィシャルドキュメンタリーだ。

このままシリーズを続けていくなら余所との特色をつけるためにもデフォルトでついているポンコツに代わる新しい名前をつける義務みたいなのが存在する。

いや、本当はそんなものはないのかもしれないがこちらの判断でそういう設定を今作った!!



「う〜ん…そういえばサッカーではあのポンコツは平均的ステータスなマルチ性能持ってたし」


「あ〜確かに器用貧乏な横並びステータス&微妙だけど凡庸性の高い必殺技持ってたよね……」



まだ体操座りですすり泣きするポンコツを尻目にわいわいポンコツの新しい名前を考える面々。

その表情はじつに真剣だがその情熱をもう少し別のことに回せばいいと思うが、まぁそれは言わないお約束だろう。


「平均性能と殺人パスタから考えたらマルチはある意味ぴったりだけどねぇ…」

「だからマルチの名前はオリジナルに失礼だと言ってるだろうが!!」



と、何度も繰り返すこの話題にこのまま話は平行線をたどるかと思いきや、それを打開する案が魔梨沙からもたらされた。











































「なら魅魔様、発想を少し変えて『まるきゅうち』と呼んで『Hチ』と書くにしちゃいましょう」
































「「「「「「それだ!!!」」」」」」
















あまりにもしっくりときてしかも他シリーズの名前にも負けないインパクトを持つその名前『Hチ』


魔梨沙の提案に魅魔を含め全員が思わず手を打ちながら頷く。
こうして、魔梨沙の案は誰も反対すること全員即決となった。



「お〜い、よろこべポンコツ。お前の名前は今から『Hチ』だぞ」



「もう…勝手にしてくださいです……」



妹紅の呼びかけに対してどんよりとした漆黒のオーラを纏いながらまだヘルナンデス君の真似をするポンコツ改めHチ

全く反抗することなくあっさり受け入れるその姿を見て一同はちょっとやりすぎたか…と少し反省はしたが、まぁHチを弄られるのはある意味宿命みたいなものだ。


「さて、あんな殺人パスタのことを忘れるために口直しの乾杯といこうか」



「いいね、それじゃ…Hチにかんぱ〜〜い」



「うぅぅぅ……わたる世間は鬼ばかり…でも私は負けません……必ず復讐してやります………」


こうして新しい名前が決まったHチが一人復讐の炎を燃やしている中、残りの面々は乾杯をし直して各々宴会を楽しむこととなった。








そして3分後……。






























「さぁ、今度こそ私の話を聞いてもらいますよ!!」




「あぁ、ずいぶん早い復活だねぇ。もう心の傷は癒えたのかい?Hチ



賽銭箱にふんぞり返りながら酒を飲む魅魔のその『Hチ』という言葉がHチに深く突き刺さりぐらりとよろめくがすぐに体勢を立て直す。



「ドジっ子メイドには回復の早さが必要不可欠なんですよ!!



その言葉は自分がドジっ子メイドという自覚があるという証拠になるのでは…と一同は思ったが、あえてそれを言うのも馬鹿らしいから何も言わないことにした。

ついでに、ラクガキ巫女の方も魅魔が賽銭箱に座っていることに対してぴくりと眉を潜ましてはいる…がまぁここはある意味自分の神社ではない。
焼き芋がおいしいということで見逃すことにしたらしい。




「まずはこれを見てください!!」



とポケットから取り出すのは一枚のチラシ。



「えっと…何そのチラシ?」


虐めるのも飽きたのか、いちゃもんをつけず焼き芋を片手に大人しくチラシを受取るラクガキ巫女と後ろから焼き芋を頬張りながら覗きこむ魔梨沙。



「見ての通り、東方サッカーの新しい大会参加募集のチラシですよ!!
私はこの大会に参加したいのです!!
だから、まずは『黒赤マジック』主力である博麗霊夢と霧雨魔理沙!この二人をレギュラーに加えたいので出してください!!!」



「あ〜魔理沙はどうかわからないけど霊夢は別の大会へ参戦してるからいないよ」



Hチの叫びに酒を煽りながら素っ気なく答える萃香。
その言葉にHチはがくっと体制が崩れたがすぐに持ち直す。


「なら…あの試合中いきなり殺死合いする危ない二人ペナルティエリア内でジャイアンリサイタルを開いてくる鳥妖怪を出すのです!!!」



「咲夜と永琳か?二人も霊夢と一緒に大会へ参加してるからいないぞ。
あと、ミスティアは白玉楼の方で後片付けに回ってくれてるらしいから来れないと思うが」



次に答えたのは藍だ。萃香にとっては災難だったが酒の力でストレスをだいぶ発散できた上にあのパスタで全てが吹っ飛んだらしく、正気に戻ったようだ。
だが、そんな普通に対応する藍とは対照的にHチはどんどんと青ざめていく…


「なら…あの結界でゴールを守るキーパーとか顔面ブロックしてくる妖精ふとましい妖怪とかカット不能なパスをしてくる兎は…」

「紫は引きこもり中でHは霊夢達と一緒に大会へ出陣。レティは秋眠中で幽々子は知っての通り暴走してばたんきゅー。
カット不可能は…てゐのことかな?」

「多分そうだろ。だが今永遠亭は裏支配者とその弟子が抜けてる上にてゐはあの性格だ。協力を頼むのは至難だろうな…」


Hチの質問に対して萃香と藍が回答していくが、そのどれもが全員無理という返事だ。

そんな様にHチはブチッと切れた。





「うぅぅ…なんですか!!なんで私が大会へ参加しようと思った矢先にこう都合よく主力のほとんどが不在になってるんですか!!!
しかもレギュラー陣で残ってるのは場違いでおまけとしか思えない九尾の狐とさらに役立たずな補欠の猫しか……」












ガシッ









「あぁ、貴様誰が役立たずだ!?
ふざけたことぬかすならこのまま頭を握りつぶしてやるぞ!!!






調子に乗ってさりげなく式神コンビを罵倒するHチに対してブチ切れたのだろう。
台詞の途中だが怒り心頭でHチの顔を掴んでそのままギリギリと絞めつけていく藍。

尻尾も逆立っているし完全に怒っているところがわかる。


















「ひぇぇぇ〜〜いたいいたいいたいですぅぅぅ〜〜〜!!!
わかりました〜〜藍様は決してはずれでもおまけでもありませんから離してくださ〜〜〜い!!






















「私のことはどうでもいい!!
だが、橙を役立たずと言ったことだけは許せん!!!
橙は私の自慢のむすm…ではなく式だぞ!!!前言撤回しろ!!!!」










「ら、藍様…」










その言葉にじーんと感動する橙だが傍からみると完全親ばかだ。
何せ橙はサッカーは愚か実戦でも雑魚よりかは強いんじゃないかな〜ってぐらいの強さしか持っていないのだからある意味Hチの言葉はあっているのだが…


そんなことを言った瞬間、藍の怒りの矛先がこっちに向いてくるのは火を見るよりあきらかなのであえて誰も突っ込まない。


やがて前言撤回したことを確認した藍はそのままHチをぽいっとそこらに転がっていた岩に向かって投げつけた。
その際にはそれなりに力が籠っていたらしく激突した岩には少しヒビが入っている。


「うぅぅ……ロボットは優しく扱いましょうって習いませんでしたか〜〜〜?」


ロボットにも痛覚があるのか、思いっきり打ちつけた背中をさすりながら起き上ってくるHチ。
ついでにその目には涙も溜まっているし本当、どこまで高性能なのか…知りたくもなるのが人のサガ。









「うふふふふふふふ…知りたい……知りたいわぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!
Hチを解体してその構造を調べてみたいわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」







「きっと世紀に残る大発見をするに間違いないわ!!!」








どうやら、研究者である夢美と理香子はそのHチという面白いモルモットを今さらながら興味をもったらしい。

さっきまで調べていた畑の痕跡や不思議な力場の解析が一段落ついたということもあり、今度は怪しげな工具片手に血走った眼でHチに襲いかかってくる。

ついでにいえばいつもその暴走をパイプ椅子で止めるちゆりも相手がHチだから止めるようなことをせずというか…酔いつぶれてぐーすかいびきをかいて寝ている始末。


















「いやぁぁぁ〜〜〜〜助けてです〜〜〜〜」








「むわちぃぃぃぃぃぬわさぁぁぁぁぁぁい!!」











「大人しく解体されなさ〜〜い!!!」










「ふむふむ…『東方サッカーオールスター R(リフレッシュ)S(スーツを)N(なげすてろ)杯2nd』…か。2ndということはすでに1回目があったってことかい」


「あ〜はい、1回目は7月にあったようですね。ここの幻想郷は8月の『偶然カップファイナル〜』からの参戦でしたから1回目は参加資格がなかったみたいです」


誰も止めることなく神社の敷地内を追いかけっこするHチと教授と科学者を無視しながらチラシの内容を確認する魅魔達と解説する文。
文も最初に『偶然カップファイナル〜』の知らせを届けただけあり、大会情報には詳しいようで大会の特徴も一通り説明する。


「今霊夢さん達が出ているのは『東方蹴球宴〜花映塚の部〜』でこの大会とは主催者が全く別でルールも45分一本勝負と完全スタミナ勝負みたいですが…どういたします?
見た感じHチがキャプテンとしてチーム登録すれば参加できますし、装備品も霊夢さん達が持っていった物はほとんどこの大会では使用不可になっていますので置いていった装備品だけであっても戦力的にも全く問題ありません」


「そうか、それは面白そうじゃないか」

「えぇ、魅魔様。参加しちゃいましょう」

「そうね。旧作主人公として霊夢に負けるわけにはいかないわ。旧作組も参戦よ」


文の説明を聞いて乗る気満々な魅魔と魔梨沙にラクガキ巫女。


「じゃぁ私も参加の方向で…」

「私も参加してみるか」

「慧音が参加するなら私も出てみたい…かな」


さらに続いて萃香と慧音も参加表明し、その後も次々と参加を名乗り出る者が現れて結局ほぼ全員が参加表明となった。


そうやって出てきたのはレギュラー枠の問題。



「さてっと、今いるメンバーでどう構成を組むかだね」


地面に各々の名前を記した石を置きながら皆に問いただす萃香。
もちろんそんなこと聞いたら自分勝手な連中は黙っていない。
一斉に私がでるとかこいつはいらないとか皆好き勝手言ってくるがそれを魅魔が一喝。




「皆、まずは落ち着こう!落ち着いて冷静に検討しようじゃないか!!」


「そうだ!大会では今までの戦略は全く通じないから、まずは皆の戦力を冷静に分析していこう」


「よし、なら手始めにコスト別に分けて、そこから派生する戦略パターンを検証しよう。
夢美と理香子もいい加減追いかけっこはやめて検証を手伝ってくれ!」


その魅魔の意見を聞いてささっとメンバーをコスト別に分ける藍と慧音。

そうして分けた後に、その中から考えられるいくつかの戦略パターンを夢美や理香子と呼ばれてないけど勝手に加わっているHチも交えてあれやこれやと検証を開始する。


その難しい専門用語が飛び交う会議にバカルテット&橙はちんぷんかんぷんなようだ。
開始3分後には社境内でお昼寝を開始してしまったが、残りの面々は辛うじてついて行っているようで時々横から口をはさんで意見や提案を申し入れたりもしている。



なお、小町は閻魔である映姫から言いつけられた白玉楼の事後処理等や三途の川の渡しの仕事があることが建前で、これ以上関わるとロクな目に合わないからが本音で参戦を断って白玉楼へと戻り、リリーWも姉であるリリーBと一緒でなければ参加する気になれないとかで、自分の『春の足跡』を置いて小町と一緒に白玉楼へと帰っていった。

ちなみに文だが自分は取材する側なので第3者に徹するために参加は当然のごとく断っていた。

















そうしてあれやこれやと奇声や怒声、何かを殴打する音や爆発音が響く中で頭脳班が話し合うこと小一時間。








「よし、この布陣で行こうと思うが皆いいか?」


魅魔の確認を取る声に、全員がうなづく。
ついにレギュラーと陣形は決まったようだ。

それによって寝ていた連中も叩き起しにかかる。


「あ〜やっと決まりましたか。早速確認させてください」

「あぁ、構わないよ」



その寝ていた連中に含まれていたと思われる文に対して魅魔は出陣するレギュラーを示す石と組まれた陣形を見せはじめる。
それを見て文はおぉっとうなった。

「これはこれは…頭脳班が多く集っただけあって、今までとは全く違う斬新で面白い布陣を組みましたね。
これだけで十分ネタになりますよ!!


「まったくだぜ。こんな大胆でありながらも微妙なバランスが組まれた布陣で挑戦なんて面白すぎるじゃないか!!


っと早速メモを取る文越しで同じく寝ていたところを叩き起されたちゆりも驚きながらも関心する声があがる。




「あぁ、こんな誰も試したことないような布陣がでてくるなんて私もびっくりさ」


「でも誰も試したことない大胆な布陣だからこそ相手の隙も生まれやすいものよ」


「全くよね〜」


とこの布陣に対して満足げに笑う魅魔とラクガキ巫女と魔梨沙だが、そんな中で一人不満を持つ藍。


「私としてはこんな背水の陣に近い布陣で挑戦なんて不安と不満がありまくりだが…



「藍様…でもこれは皆で決めた物で…」



「大丈夫だ橙。私も一度決まった物を今さら覆す気はないから反対はしない………
反対はしないが……橙。すまんが、井戸から水を汲んできてもらえないか」


「あっ、はい。わかりました」


と、痛む胃を押さえながら再び懐から胃薬を取り出して橙が持ってきてくれた水と共に飲み込む藍。

だがまぁ確かにあのメンバーで構成されたあの布陣であれば藍の気持ちがわからないものでもないが、決まった以上文句を言っても仕方ないことだ。
ついでにいえばHチもなにか騒いでいるがそれについては無視どころか会話さえもなかったことにされて記録から消去されている。



それに比べたらまだ藍の扱いはましな方だろう。



「とにかく、参戦を希望していながらもレギュラーを外れた者は申し訳ないと思うんだが…」



再び橙に抱きついて頬ずり始めてしまった藍を尻目に、魅魔がすまなさそうにレギュラーから外されてしまった面々を見まわし始める。



「あ〜はい、私は偶然で一度大会参加してますから別に外れても文句ありませんが…未参加の人達は」


「私はみすち〜がいないから平気なのか〜」

「戦力が十分足りているあのメンバーにワシのような老体は元々加わる必要もないものですぞ〜」


魅魔や大妖精の心配をよそに焼き芋を齧るルーミアと人数が足りなければ参加程度に考えてた玄爺は特に気分を害した様子もなくそっけなく答え


「私達も大丈夫。どの道冥界の白玉楼や亡霊嬢のその後の経過を見守ったり何か事が起きた時に対処できるよう、何人かの実力者は残る必要あるしね」


酒を煽る萃香も不満を呟くことなく答えた。


「その通りだ。私達は皆が帰ってくるまでの間、幻想郷を守りつつ次のチャンスを待つことにしよう」

「それに、ここにはレギュラーから外れたからといって怒りだすような奴はいないそうだろう?」


続けて慧音と妹紅もきれいな話でまとめようとするが、その話を聞いて萃香はうっとうなる。
いい話だがそのメンバーから外されて怒りだすような者はしっかりいた。

しかもそれが『黒赤マジック』キャプテンの魔理沙本人というのだから性質が悪い。


とにかく、萃香は何日か前に霊夢達に置いてけぼりにされて大会へと出向いたことを幽香から聞いて逆恨みで会場まで追いかけたという一部始終を霧状態でしっかり見ていたのでその成り行きを知ってはいるが…


「うん、確かにいないね。それに『RSN杯2nd』後すぐに開催される『箸休め杯』があるんでしょ?
私達はそっちの大会への参加資格持ってるから都合がつけばそっちに参戦することにするよ」


ここで事実をのべて士気を下げる真似はやめた方がいいと思って何食わぬ顔でとぼけることにしたようだ。


「そういうわけだから後のことは私達に任せて、皆は存分にサッカーを楽しんできたらいいと思うぞ」

「そうですぞ〜若い者同士で楽しんでくだされ〜」

「お土産は優勝カップ一つで充分だからね」

「試合は激闘だらけですけど、大怪我だけはしないように気を付けてくださいね」

「がんばれなのか〜」

「直接応援はできませんが、朗報を楽しみにしていますよ」



慧音も玄爺も妹紅も大妖精もルーミアも文も笑いながら心よくレギュラー陣見送る。

もっとも玄爺から若い者同士と言われたことで少し抵抗はあったが、カメは万年生きる長寿の種族なうえに、口調が爺臭いから特に気にするものでもない。


そんな居残り組からの激励を受けた魅魔はふっと笑う。


「そうだったな…魔理沙も本当にいいチームメンバーを持ったものだ」


「えぇ、本当に…魔理沙が少し羨ましいかも」


と遠くを見ながら満足げつぶやく魅魔と魔梨沙。
その哀愁漂う姿に萃香はやっぱり逆恨みで追いかけた魔理沙のことを言わなくてよかったと安堵の表情をこっそりと浮かべていた。



「よし、ならこのチームも願懸けとして魔理沙が作ったチーム『黒赤マジック』の名前を冠しようじゃないか。
例え魔理沙がいなくても魔理沙が中心にいるのは変わりないしね


「賛成よ〜」

「特に反対意見はないわよ。私は霊夢に負けなければそれでいいし」


「私もストライカーになれたなら、チーム名はなんでもないわよぉぉ!!」


「ご主人と同じく、チーム名には興味ないから好きにしてくれだぜ」



真っ先に応えたのは魔梨沙とラクガキ巫女と夢美とちゆり。


「ふふふ…チーム名?そんなもの貴女達が勝手に決めて頂戴。それよりリグル。今回はいろいろと強化させてきたからしっかりがんばるのよ!」


「ひぇぇ〜〜!!」



次に応えたのはチーム名なんか知ったこっちゃない理香子それどころじゃないリグル



「ちぇんちぇんちぇぇぇぇぇぇぇぇぇん……チーム名?
そんなの勝手にしてくれ!!





「あぁぁ〜藍様正気に戻って〜〜〜!!」


さらにそれどころではなさそうな式神コンビ。






「弾幕美よ!!!弾幕美はいいわ〜〜〜!!!」

最後はチーム名どうこうなんて全く知らない小兎姫。



本当にこんな連中が集まれば改めて藍が不安と不満を持つ気持ちがよくわかりそうだが…
今現在一番不満を持っているのはキャプテンであるHチであろう。

もうこの場から全くいないことと同然な扱いを受けているHチは口から呪詛やら毒どころか、バズーカでも放っているかもしれないが記録から消去されている以上、何をやらかしてもこれを読む者には何もわからない。


ただ、想像で補完してもらうのみだ。


やがて業を煮やしたちゆりのパイプ椅子アタックで藍が正気を取り戻したのを確認した魅魔は、改めて全員を見渡しながらごほんっと咳ばらいをして叫ぶ。







「いいか、私のサッカーは勝つサッカー!!!
攻める時はもちろん、守る時でも気持ちは守りに入らず常に前へ飛び出すんだ!!
積極的に前へでたのなら結果がでなくても構わない!!
それよりも、
気持ちが守りに入ったらその時点で負けと思いな!!!」










魅魔の激にこくりとうなづくレギュラー陣。
もちろん若干一名はやはり不満バリバリで何か喚いているが存在の認識がされていないので誰も気づかない。











「よし、野郎ども!新生『黒赤マジック(R)』発進といこうではないかぁぁぁ!!!」
















「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」



そうして、魅魔の微妙に突っ込みを入れたい雄たけびとともに手を頭上に掲げ、続けて全員が手を頭上にあげて雄たけびをあげる。































「だ〜〜〜か〜〜〜ら〜〜〜私を忘れないでくださ〜〜〜〜〜〜い!!!
私はキャプテンなんですよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」









ようやく、存在が確認されることとなったHチの悲痛の叫びが神社内に響く中…



魅魔が率いる『黒赤マジック』の新しい挑戦が始まった。







































「うぅぅぅ……こんな扱いあんまりです………」



意気込むレギュラー陣から一人外れて体操座りをしながら、縮こまるキャプテンHチ。

彼女にスポットが当たる日がくるかどうか……


それは神というか乱数と試合結果のみが知る。












後半へ続く



おまけ

大会へ提出したメンバー表





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