「かんぱぁぁぁぁい!」




「「「「「かんぱぁぁぁぁぁい!!」」」」」



魔理沙が頭上に突き上げたジョッキを掲げ、他のメンバーも同じくジョッキを頭上に抱えて互い互いのジョッキを鳴らした。
カチャンという心地よい音とともに中で並々に満たされた酒を飲んだ。


「ぷはぁっ、五臓六腑にしみわたるぜ!!」

「ほんと、冷たくて美味しい〜」

このお酒は外の世界では夏に好まれるお父さん定番のお酒の麦酒。
大会本部が用意していた差し入れなのか、それともスキマの誰かが持ってきたのか
出所が不明であるが真夏に冷たい飲み物はうまいし、何よりタダ酒だ。

タダよりうまい物はないということで、誰も何も言わないことにした。

魔理沙も霊夢も一気に半分以上飲んでしまい、酒臭いゲップを出している。


「でも本当に大変でした…」

「全くです。まさか予選でさえあれだけ苦戦するとは思っていませんでしたし」




意気揚揚とする中、どうも輪に入れない妖夢酒自体に弱そうな大妖精が初日の試合…予選リーグを思い出した。

彼女達は
『東方サッカー オールスター
偶然カップファイナル〜』



へ参戦するために次元のはざまとも呼ばれそうな異世界空間に作られた特別会場へと遠征にきたサッカーチームだ。

大会は平行世界とも呼ばれる無数の幻想郷から選抜されたサッカーチームが集い、真の“スーパーシューティングプレイヤー”を決めるというある意味エキストラ戦を超えた特別試合だ。


今ここにいるメンバーは無数に存在する幻想郷の一つから選抜されたチーム『黒赤マジック』


メンバーが若干変わったとはいえ幻想郷の走破を制したチームだからこの大会も楽に勝てると思ったが…
それは楽観的な勘違いと思い知らされた。



まず一つは大会独自の縛り。
通常の東方サッカーでさえ「ト○シマン(仮)」から「飛ぶの取り締まり〜〜〜!!」の洗礼飛行能力を大きく制限させられるのだが大会ではさらに『コストに合わせた重力付加』が加わるのだ。

つまり、チーム全体のコストの重さに比例して重力を付加されてしまうため、幻想郷でのサッカーよりも動きが鈍る。

さらにいえばそれらの付加を無許可で解除すれば「トリ○マン(仮)」から誰もあ抗うことができない究極のラストスペルである“ボツ”が繰り出されることになる。


この“ボツ”の前では神主ある世界を作り出したといわれる創造神「と○ね○ぎ」でさえも無力だ。

なにせ「ト○シ○ン(仮)」はあらゆる世界を創造した神を束ねる人物「界王」さらに上を行く「界王神」みたいな存在だ。
言うなれば全ての時空におけるありとあらゆる創造神の頂点に君臨するであろう絶対的な存在格が違いすぎる。





ただ、そんな究極人物幻想郷に目を向けているとは思えないのだが、だからといって「○リシマン(仮)」が偽物という保証がない。
万が一本物であったらその日は………

というわけでこのルール縛り誰も逆らうことができないどころか下手に刺激されて“ボツ”を食らえば全ての幻想郷を壊されかねないのだ。


なのでこの縛りに従うのは大会出場チームに課せられた最低限の条件であり、暗黙のルールみたいなものだ。

事実、これのおかげで活躍できる選手や変わった戦略を煉るチームが増えて大会も盛り上がる。
今では誰も逆らおうとはしないし、逆らうなんて愚か者がすることである風潮さえある。


とまぁ少し脱線したが、チーム「黒赤」のコストは大会の目安で定められた数値ぴったしに押さえられているので重力付加はそれほどかけられていないのだが…


「な、なんだこれは!?」


「動き辛過ぎるわよ!!」



それでも効果はばつぐんだ。

走破モードで獅子奮迅の活躍を見せていた魔理沙と霊夢の東方というか黒赤コンビも冴えが全くないし、他のメンバーも同様だ。
重力付加のせいで全く思うように動かせられない。

敵はそんな「黒赤」をあざ笑うかのように攻めてきた。

「ほら〜二人ともパスよ」

敵チームの司令塔は「これで安心魔界神」でおなじみの神綺様。
元々大会出場経験がある上にコストを抑えまくって重力付加の影響極限まで削ったチームだ。

「ナイスパス。いくよマイ」

「ん、了解」

中央からパスを受けた敵チームのエースストライカーであるマイとユキの白黒コンビ身軽な身体を利用してのコンビプレイでDF陣を翻弄する。







「あれは、完全になめられていたわね〜」



妖夢と大妖精の回想というか会話に幽々子が割り込んでいた。

その両手には山盛りの料理が載っており、ほらもっと食べなさい飲みなさいと言わんばかりに二人の目の前にどすんとおいた。


「はい…あれは完全になめられていました」


「本当にあれは…SBGK(スーパー・ブラック・ゴール・キーパー)さんの働きがなければ危ないとこでした」


SBGKとはリリーBのことである。

彼女はこの世界に辿りついた瞬間に急変したのだ。
その原因は会主催チームのリリーB走破の試合中、魅魔様のトワイライトスパーク直撃を食らって異空間まで吹っ飛び、そのまま異空間をさ迷った際に無数の影を落としていたらしく、その影の一つに取りつかれたということらしい。



通常のリリーBからSBGKに進化したリリーBは

「俺は不可能を可能にする妖精だ!
メイド長から託されたこの銀のナイフに誓って
敵は何人たりとも通さない!!





っと、重力付加をものともしない恐ろしいまでの強さで敵を止めていたのだ。



だが、悲しいことにいくらSBGKといえど一人では敵を抑えきるのは難しく何度もペナルティエリアへの侵入を許してしまい、何度もシュートを撃たれていた。





「あれは中国さんでは無理でしょう」

「ですよね」

「酷い言いようね〜でも実際ありえそうだけど」


幽々子は本当にそう思っているのかわからないが
妖夢どころか大妖精にまできっぱり無理と言われる扱いに同情したのか、少しだけ弁護をした…がやはり微妙に弁護にはなっていない。


事実、敵チームの白黒は大会に合わせて調整してきただけでなく、スリッパでシュートを強化されていたのだ。
低コストFWとは言え、あのシュートはまず間違いなく妖夢のシュート力を上回っており、並のキーパーではまず防ぐことができなかったが…

黒赤のゴールを守っていたのは腐ってはいてもSGGK(スーパー・グータラ・ゴール・キーパー)


まるで
「貴女達みたいな半人前じゃ役者不足よ。
私からゴールを奪いたければそこのアホ毛が直接撃ってきなさい!!」
と言わんばかりにボールを止めまくったし、
スィーパー幽々子もあまりにもDFラインが頼りないから弁当を放り投げて、自分からボールを取りにいっていたくらいだ。

予想に反して西行コンビがまじめに動いてはいてくれたが、いつ『めんどくさい』とか『寝るわ』でボイコットするかわからない危険性が付きまとう。

動いているうちに早く点を取らなければと、慣れない重力付加の中で懸命に攻めるが…その攻撃陣はたった二人のDFによって阻まれていた。







「あれは一体何だったんでしょうか」

妖夢はボールが回ってこなかったのでそれほど戦っていなかったのだが、
魔理沙と霊夢をことごとく止めたDF。
一人は

「私は魔界からやってきた魔界先生のすいべ〜
この鬼の左手でゴールを守る!
私のゴールにはボール一本飛ばさせやしないよ!!」


とか何か変なことを口走っている胡散臭さ全開の萃香と



「俺がそう簡単に突破できると思うな!」



SBGK化してたリリーBに阻まれていた。

どうやらSBGK化したのは「黒赤」に限ったわけではなく、言うなれば異空間を通ってきたほとんどのチームのリリーBがSBGKへと変貌していたらしい。



その証拠にどのチームのリリーBもコストを間違えてるかのような大活躍をしていたとのことだ。




だが、この試合ではSBGKのリリーBよりも萃香ことすいべ〜の方がすごかった。


ていうか、“元ネタは魔界ではなく地獄だぜ”とか、
“キーパーでなければ手使えないわよ”
とか、
“お前の手は鋼鉄の拳!”とか、
“ヘルナンデス君が使うのは右手だ”
とか、

突っ込み所満載魔理沙や霊夢も試合中幾度となく突っ込みを入れていた実力は本物だった。






縦横無尽に駆け回ってはボールをカットしまくる姿はまさしく門番の鬼。

さらにいえば




「私は来生・SGET・ヘルナンデス・ファルコン新田・キャプテンとは違うのだよ!
来生・SGET・ヘルナンデス・ファルコン新田・キャプテンとは!!」




という発言のせいで観戦中のどこか別チームの萃香が怒り出して、試合中に限らずフィールドへ飛び出そうとしたのをきっかけに、周辺の観客を巻き込む大乱闘があったようだが…



まぁ試合とは関係ない話なので無視しよう。





とにかく、お互い決定的な決め手が作れないまま迎えた前半ロスタイム…
ようやく萃香ことすいべ〜を抜いてペナルティエリアへと進入した霊夢が放った「夢想天生」

賞金ゲットという欲望の力で放たれる一撃は重力付加ハンデなぞ意味がないといわんばかりにGKフランを軽々吹き飛ばして先取点を獲得した。



それをきっかけに後半からは、黒赤も重力付加に慣れてきたのか、段々と動きもよくなり

霊夢に負けてられるかと、魔理沙も萃香を抜いてペナルティエリアへ侵入成功を果たした。

後ろを振り返ることなくゴールをまっすぐ見つめる魔理沙…

皆が固唾をのんで見守る中、そこで見た光景は…








「あれは凄かったウサ〜」

幽々子、妖夢、大妖精の輪にてゐが加わってきた。
酒に酔っているのか頬と耳がほんのり桜色で幽々子が思わず「おいしそう」と舌舐めずりをした。


「はい、あれは衝撃でしたよ」

今にも襲いかからんとばかりな幽々子だが、妖夢は以前てゐの嘘でひどい目にあわされたことがあるのであえて止めるような無粋な真似をせずに会話を続けた。


「魔理沙さん、いつの間に魔界の力を身につけたのでしょうか…」


大妖精は後ろを振り返ると、そこでは他のチームと思われる人達と一緒に盛り上がっている魔理沙がいる。
その一団には別チームの魔理沙もいるのでうっかりするとどっちがどっちかわからなくなるが、アクというか個性なら黒赤の魔理沙に適うをはいないだろう。





そう、ペナルティエリアに侵入した魔理沙はミニ八卦炉を取り出すと同時に開口一番で…



















『くらえ、魔界の力みせてやるぅぅぅ!!』















この時点で何人が突っ込みを入れたくなっただろうか…
いや、思考をしっかり保っていたのは何人いたのか…







だが、次に気付いた時はゴールを守っていたフランを紙のごとく吹き飛ばし、ゴールを貫いていた。











まさしく『サッカーはパワーだぜ!』に相応しい一撃であったが、それ以上に凄いのが台詞だ。














一言でいえば、そう。


















魔理沙は凄い台詞を残していった。
















その叫びと一撃によって、観客席で乱闘中だった一団をも巻き込む「ザ・ワールド」が発動しており、辺りが静まり返っている。

さらにいえばアホ毛なんか顔面蒼白だ。
心の中では、何を思っているのかはわからないがとにかくこの一撃で空気は変わった。
ついに魔界神が本気を出してきたらしく、ゴール前に上がったボールをカリスマとアホ毛による一撃『魔界神聖』が繰り出された。







ついでにボールには“恨み”とか“呪”とか“死ね”とか負の感情が一杯詰まってたような気もするがそこはSGGKの意地。





最強妖怪の名にかけてふっとばされつつもゴールを死守。
結局妖夢がダメ押し的に未来永劫斬を決めたこともあり、魔界神はそのまま1点も取れす完敗した。

そのことがよっぽど悔しかったのか、それとも別の理由があったのか
アホ毛はもう涙で顔をぐしょぐしょに濡らしながら、萃香に首根っこ掴まれてずるずると引きずられて退場していった。


敗者は黙って去るのみ…


東方サッカーに限らず、ありとあらゆる勝負事での暗黙の了解であるが、その姿には一欠片のカリスマも威厳もなかった…





なお、予選初日の試合で裏MVPとしてインタビューを受けた魔理沙はこう語っていた。

「裏MVPとは酷いぜ。
だがいつの間に魔界の力を身につけたっていうのは…大会前に魔界の鬼から洗礼の一撃をくらったからな、多分それが原因だと思うぜ」




ちなみにあの時というのは冒頭で“殺意の波動に目覚めた楽園の素敵な巫女”から夢想天生を食らった時のことだ。

あの記憶をも吹き飛ばす強烈な一撃は、その後魔理沙の中で“魔界の鬼から受けた洗礼の一撃”と脳内変換され、それが原因で魔界の力に目覚めた…ということになったらしい。






ついでにいえば、
『黒赤の魔理沙は魔界神の娘であるありすを毒牙にかけたことによって魔界の力を得た』
とかいう噂も立っていたようだが、どちらが真実だろうと魔界の力魔界神を心身ともに叩き潰したのは事実だ。




よって、その日の新聞のトップで

















『魔理沙の逆襲!
魔界の力で魔界神を完全にねじ伏せる!!』











という一面を飾って一躍有名人となった。















もっともその後、

『SGGK(スーパー・ギャンブル・ゴール・キーパー)ミマーフルボッコ!
魅魔様は精神的に弱いのでおちょくるのはやめましょう!!』






やら







『恐怖のブルーストッパー、チルノ!
魅魔様のトワイライトスパークを2回も顔面ブロック!!』






やら




『忘れられたら困るやつ!
誰も予想していなかった大爆笑の結末!!』





やら




『なんたる番狂わせ!
ボンクラGKジャックがまさかの完封?!』





やら






『奇跡のカウンター!
黄金の右腕が夢想天生を悲しみドール!!』





やら





『式神の反乱?!
藍が傘で殴られた恨みを存分晴らしたのちに橙が猫駆除下剋上!!』






と別リーグでも“スーパーシューティングプレイヤー候補?”が次々と現れては紙面を賑わせた。



特に最後の式神の反乱は、他人事と思えないとほぼ全員のスキマ達を恐怖に震えあがらせるほどの内容である…


おまけに黒赤のスキマは常日頃から藍を傘で殴打しまくっていたせいか、誰が見てもわかるほど恐怖におびえていた。



もちろん、傍から見てる方としては爆笑物であるというか、てゐは帰ったら藍に教えてやろうという邪悪な笑みを浮かべてスキマに追い打ちをかけていたようだ。



これをきっかけに少しは優しくなればと思うのだが…
そんなスキマなんてスキマじゃないのでたぶん変わらないだろう。



とにかく数々の名勝負勝負を生みながら試合もどんどん消化されて行く中、黒赤も予選リーグ第2試合が行われた。











「………飲まないのか?」


幽々子は逃げたてゐを追いかけ、大妖精はチルノの話題が出た時に丁度別チームのチルノが酔っ払って倒れたので慌てて介抱に向かっていた。
もっとも、他チームの大妖精も同じことを考えたらしくそのまま大妖精達が集まって自分の世界のチルノちゃん話題で盛り上がっているようだ。



こういうのは様々な平行世界が交わるオールスターならではだ。

書くのは大変だが(ぼそ)



そうして一人になった妖夢にリリーBが加わった。
なお、リリーBは酒の影響かどうか知らないがSBGKの影が抜けてるように感じる。


妖夢とリリーB…妖夢は数年前に春度を集めて幻想郷の春を遅らせたことがある。
もっとも、春そのものの陽気なリリーW春を奪ったことについては何も言わなかったがリリーBはどうだろうか…

その時関わったのはリリーWでリリーBと直接関わったわけではないが、姉妹なので全く無関係ではない。

あの事件をどう思っているかわからない上、こうやって二人っきり?になる機会がなかったせいかびみょんな空気が流れるが…



「試合…お疲れ様」


やはり姉妹なのか、SBGKの影が抜けた今はもう頭の中はだ。
全く何も考えてないかのように、びみょんな空気を読まず空っぽだったジョッキに麦酒を注いでくれている。








「全くな〜に角っこの負け組みたく辛気的な空気出してるのよ〜〜
活躍組は飲んで騒いで喜びまくるのよ〜〜〜!!」







「そうそう、私はもう勝ち組なのよ〜〜〜!!
もう『あんた誰?』なんて言わせないわ〜〜〜!!」





輝夜とカナだ。
お互い肩を組んで酒瓶を掲げて笑いながら妖夢に近づいてきた。



妖夢は別に辛気っていうわけではないが会場隅っこに比べられたらはるかにましだろう。
事実あそこは、近寄っただけで試合中にかけられる重力付加の最大マックスをさらに10倍された重力付加がかけられる陰空間に包まれている。
下手に近づけば容赦なく陰空間に飲み込まれて二度と立ち直れなくなってしまうだろう。
ついでにいえばそこには黒赤のうどんげがいるような気もしたが、近づけないので確かめようがない。



「あ、輝夜さんとカナさん。お疲れ様でした」



なのでうどんげのことは思い出さなかったことにした妖夢はそそくさと場所を空けて二人を招き入れる。
二人はかなりハイペースで飲んでるようで完全酔っ払いだ。




「そうよ〜妖夢〜
私はやったのよ〜」




「やったのよ〜〜」




酔っ払いなので何を言っているのかわからないとにかくハイテンションからむからむ。



もっとも、妖夢は宴会とかで酔っ払いの世話に慣れているからいいが、リリーBは慣れていないので少し怖じ気づきながら立ち去ろうとするが、カナと輝夜とリリーBは同じチームとしてDFラインを守った仲だ。
逃がすまいとがっしり両手を掴まれた。



「何よ…私の酒が飲めないっていうの……」


「妖精の癖に生意気〜〜
酔いつぶしてやるから覚悟しなさ〜〜い!!」




完全逝った目に睨まれたまま、ずずいっと酒瓶を突きつけられるリリーBは半泣きだ。



「皆さん浮かれてますね…」



まぁそれもそのはずだ。
黒赤のDFライン…リリーBと輝夜とカナは下馬評みたいなチーム紹介ぼろくそに書かれていたのだ。


実際1試合目なんてほとんどDFラインが機能してなかったが…


予選第2試合、信じられないことが起きた。
対戦相手は大会出場経験どころか優勝経験すらも持つ強敵。
DFラインが役に立たない以上、キャプテン魔理沙は攻めて勝とうと思っていたが






「私の宝貝の恐ろしさをおもいしりなさぁぁぁぁい!!」




左サイドから攻める大会屈指のストライカー美鈴輝夜がはじき返し、














「私の恐ろしさを骨身に染み込ませてやる!!」




中央から切り込む永琳の天才的ドリブルは、カナの怨念のこもった一撃でお引き取り願ってもらっていたのだ。






それには双方の攻撃陣が唖然であった…
リリーBはともかく、なぜカナと輝夜が……と、味方からすらも信じられないという表情をされたのだ。




がこれで攻撃に専念できる。
気を取り直して敵陣に勢い込んで攻め込むが、優勝経験を持つ敵の粘り強い守りの中で決定打がでない。

それに見かねてか「俺にあげろ!」オーバーラップを仕掛けたリリーBも攻撃参加。
リリーWがいないこのチームでは必殺のリーサルツインが撃てないのになんて無茶な…と全員が思ったが、魔理沙はリリーBに運命を託したかのようにセンタリングをあげた。












その時、誰もが目を疑う光景を見ただろう…






なんと、群がってきた虹河姉妹二人最強クラスのDFである閻魔弾き飛ばしながらシュートを放ったのだ。



もっとも、そのシュートはGK正面であるためにあっさり防がれたがマークを競り勝ってシュートを撃ったこと自体すごかった。








「本当に、同一人物とは思えませんね…」




SBGKの影が抜けた今は、輝夜とカナのいいようなおもちゃとされているリリーB
この妖精がリリーWのという相方を得て撃つシュートには一体どれほどの攻撃力を持つのか…


下手すれば妖夢とうどんげの赤眼開花超える決定力をほこりそうだ。


妖夢の持つジョッキが静かに揺れる。


あの光景は身近なライバルの出現と、リリーWをチームに加えなかったこと本当に悔やんだ瞬間だったかもしれない。







そうして攻める守るを繰り返し、お互いどうしても後一歩が届かないまま試合は膠着したが…



敵は元王者だ。
敵DFが固くて抜けないとみるや戦法をがらりと変えてきた。
そう……DFラインが邪魔であれば、そのDFラインと接敵される前に撃てばいい。









「ふふ……あれはさすがの私でも腹が立ったわね」



酔っ払いのカナと輝夜の二人がリリーBの口に酒瓶を突っ込ませて無理やり飲ませているのを生暖かく見守りながら紫がやってきた。
普段はめったに酔わないというか酔っても酔いの境界を弄って酔いを覚ますので酔うことはほとんどない…が今回は珍しく酔いを覚まさせてないようだ。
ほんのりとほおが赤い。


「紫様が酔うとは珍しいですね」

「まぁそんな気分なのよ。閻魔の愚痴で聞くのは…」

「お、お疲れ様でした」

どうやらさっきまで閻魔に捕まって説法を説かれていたらしい。
紫は不機嫌気味にどっかりと座り込んで差し出されたジョッキに、
妖夢は慌てて麦酒を注ぐ。




敵が取った戦法…DFが張り付く前に撃つシュート。

それは閻魔というかザナドゥが何癖付けては裁判を起こして無理やり有罪判決を下しては一斉放火をぶつける凶悪遠距離反則シュート『ラストジャッジメント』




お前が一番反則犯してだろー!!
っと誰もが突っ込みいれたくなるシュートを、遠距離から紫にぶつけてきたのだ。

しかも1回ぶつけただけでは収まらず続けざまに起訴を起こしては有罪判決ジャッジメントを飛ばし、おまけに防いだら逆切れしてくる始末。

    
もちろん、それには紫も切れてお互い決死状態での対決となったが…
やはりそこは地獄の鬼を管轄する閻魔のザナドゥ。

















しっかりとトドメを刺された。











というか、遠距離から短時間計3発。しかも最後のは決死中という極悪シュートをぶつけられたのだ。




最後は幽々子もろとも空高く舞い上がり受け身も取れずに顔から地面へ叩きつけられピクピクと痙攣する半殺し状態へ追い込まれた。





そんな天災ともいうべき極悪シュートを前にして、辛うじてだが1回だけゴールを守れたのはさすがというべきしかない。










「しかし、地獄の閻魔というかザナドゥさんはストレスをためやすい職業なんでしょうか?」



辺りを見渡すと各チームのザナドゥ自棄酒を煽っては手当たり次第愚痴とも言うべき説教をおこなっている。
捕まった人は災難だが、愚痴を素面で聞かされる方はもっと災難であろう。


「その原因は、あのサボタージュが原因でしょ」


試合中もそうだが、さっきもザナドゥからストレスの捌け口にされた紫。
それを紫は素面で聞いてしまったのか、それとも試合でシュートをぶつけまくられたことを思い出したのか。
ほとんど自棄酒気味な勢いで飲みまくるし、酔いもあえて解除しない。


「ま、まぁ…確かにアレが部下ではストレス溜まりまくりますよね」

ついでにいうとザナドゥは本名で登録されてないどころか、立ち絵がないことに不満を抱えてる状態だ。
そんなところに他リーグでの役立たずな小町という存在がいるおかげで、
怒りを倍増させる憎しみの連鎖を生んでるようだ。

中にはお互い部下の罪というか愚痴を取り上げて有罪判決を下してはジャッジメントを撃ちあうという壮絶不毛な試合もあったぐらいである。

なお、その試合での最大の被害者互いのGKであり、試合終了後はGKだけみれば「もうやめて!GKのガッツはとっくに0よ!!というボロ雑巾状態な痛み分けで医務室のベットへと直行されたぐらいだ。






「でもリリーBさんの酔いは解除させてやってください」



紫のジョッキに麦酒を継ぎ足しながら親指でリリーBを指す。
見ればリリーBは強制アルコール中毒を起こしてぐったりして、ぴくりとも動かない。
それを見て笑いながらつんつんと箸で突いている酔っ払いコンビのカナと輝夜。


「本当に浮かれてるわねぇ」

「浮かれる気持ちはわかると思います。二人とも大活躍でしたから」

紫は注がれた麦酒を一口飲み、ふふっと笑いながら指をパチンと鳴らす。
するとリリーBががばっと起き上がりキョロキョロと不思議そうに辺りを見渡した。




リリーBはともかくとしてカナと輝夜…二人の活躍はすさまじかった。
特に後半、ザナドゥの八つ当たりというか逆切れジャッジメント3連発で虫の息にされた紫だったが…



「何をしているの!攻めるのよ!!」



一番動揺しててもおかしくない輝夜が発破をかけた。




「そうよ、SGGKは死んでもゴールを守ってくれたのよ!」



追撃でさらに叫ぶカナ…だが、SGGKはまだ死んでない。
無事ではないが、一応生きてるぞ。



「その通りでした…あのグータラな紫様命を賭してまでのセービングを見せてくれたんです!!」



妖夢は誉めてるようで褒めてないようにも取れるびみょんな含みがあるが…
まぁ一応褒めているということにしよう。

「そうよね、あのグータラがあそこまで命をかけてくれたのだから、それに報いるために…」

前線でボールを受け取った霊夢がちらりと動揺してた魔理沙を見る。
その視線に気づいた魔理沙は、一瞬何のことかわからなかった…が、霊夢とは東方コンビを組む仲
俗にツーカーとも言われる仲なのですぐにその意図がわかった。



霊夢がサイドから切り込んでいく中で、魔理沙は決断を下した。


「往くぞ!全員攻めろぉぉぉ!!
明和名物特攻スライディング部隊式、なだれ攻撃だぁぁぁぁ!!」




魔理沙の全員あがれともいうべき号令とともに、一気に全員かけあがる。





「私達はあきらめないわ!一発で決まらなければ何度でも撃つ!!
ゴールを奪えないキーパーなんてこの世にいないもの!!!」




霊夢が吠えた。
夢想転生はすでに1回放った身であるために後一発撃てば撃ち止めになるが、

もう余力を残す気はないらしい。






「全員、余力を残さず全ての力をぶつけろぉぉぉぉ!!!
SGGKの弔い合戦だぜぇぇぇぇぇぇ!!」






“魔界の力を身につけた程度の能力”が付加された魔理沙の咆哮
しつこいようだが、紫はまだ死んでない。




「残り少ないガッツですが、
この命全て燃やしつくします!!



すでにバテ気味だった妖夢もここが勝負どころと、一気に闘志を燃やし始める。










SGGKの死を賭したセービングに触発された
前衛決死結界3連鎖




怒涛とも言うべきその迫力迫りくる敵を紙のごとく吹き飛ばし休む間もなく撃たれるシュートに敵GK輝夜のガッツと心を極限まで削り取った。
ていうか、霊夢に至っては倒れてるGK輝夜目掛けて態々ネオ夢想天生をぶつけたほどだ。

   


しかもその時霊夢は、紅い瞳とともに背後霊的な某昂翼天使の姿がダブっていたように見える…が、きっとそれは気のせいだろう。



なお、それが原因かどうかわからないがネオ夢想天生でふっとんだGK輝夜は




紅い瞳が、最狂天使が襲ってくる……
えーりんえーりん助けてえーーーりーーーん!!









等とわけのわからないことを叫びながらいつも以上にがたがた震え、妖夢の通常ボレーすら止められない程の笊キーパーとなってあっさり逆転した。





結局、特攻というか霊夢によってGK輝夜を完璧なまでに叩き潰した「黒赤」はDF陣の働きもあって守りきり、逆転勝利を手にした。











「本当、貴女達には驚かされたわ…」





試合後、目が覚めた紫が見たのは、無事に逆転を決めて喜び勇むチームメイトの姿だった。
後で聞いた話によると自分が気絶した後、幽々子が紫を乗っ取って代わりに動かして守ってくれていたらしい。
いくら普段、呆けていてもやはり最強と噂される亡霊だ。
のほほんとしててもやることがすごい幽々子もそうだったが、それ以上に負けムードを跳ね返す後半からの逆転劇の方がすごかった。








……いつのまにか妖夢の姿が見えなかった。
おそらく幽々子がトラブルを起こした巻き込まれたか、とにかく何かが起きて駆け付けたのだろう。



少し遠くでは酔いは覚めたが、また麦酒を飲まされて結局のびたリリーBとDFとして大活躍したことに浮かれる輝夜とカナ。
しかも輝夜とカナは今大会随所で活躍を見せていたことが多かった。
のびたリリーBをほったらかしにし、他チームのカナや輝夜、そしてDFとして二人と同じような扱いを受けていたそこそこの活躍をしていたエリーも加わってどんちゃん騒ぎとなっている。
特に、新聞で騒がれたとあるチームのカナ皆のヒーロー的な扱いだ。








「カナァァァァ!!貴女はもう最高ぉぉぉぉ!!!」





「カナばんざぁぁぁぁい!騒霊ばんざぁぁぁぁい!!」






「胴上げよぉぉぉぉぉぉ!!」





わっしょいわっしょいと胴上げなんかされている。
てかその胴上げは紫が見ただけ5〜6回はやっているのだが実際はもっとやっているだろう。

だが、彼女達は今まで不当で格下扱いを受けていた不遇の連中だ。
もちろん、中にはその格下というレッテルはじき返すこともできずに沈む者達もいるが、今喜んでいる者達はその格下という汚名を返上できた真の勝ち組だ。


こういう時に止めるのは無粋なので誰も止めようとはしない…





「サッカーは強いものが勝つんじゃない。
勝った奴が強いんだ…とはよくいったものね」



これは、この大会へ来るときに魔理沙が紫へ説いた言葉だった。


当の本人は霊夢やその他大勢の他チームメンバーとともにやぐらを組んで火を放ってのキャンプファイヤーを楽しんでおり、ついでに幽々子がキャンプファイヤー近くでミスティアを追いかけているのを発見した。
もちろんその後ろから妖夢が追いかけているようだが、自分は関係ないからと残っていた麦酒を煽って無視することにした。








予選最終戦…
ほぼ同じ構成だが、「黒赤」より格上の高コストメンバー多数採用したチームというある意味因縁の対決。

結果としてはお互いの主砲である霊夢の夢想天生の撃ち合いによる接戦となったが、ゲームの組み立ては「黒赤」の方が優れていた。



例え個々の能力では劣っていてもチームワークと言う名で束ねれば何倍にも強くなる。
それに対して敵チームは個々の高い能力に頼ったまとまりのない大味な攻撃。
コストオーバーによる重力過剰付加も相まってその実力を生かし切れてないように見えた。
ただ、向こうのチームにも絶対負けられないという信念があったのは確か。
その理由は幻想郷を救うための何かを求めていたのか、同キャラ故に負けたくないという思いがこもっていたのか
ただたんに賞金目当てなだけなのか、それはわからないが








「さすがに粘りますね…
ですが、どんなキーパーでも
撃ち続ければいつか決まります!!」






「妖夢の言うとおり!
決まらなければ
何度でも撃つのみよ!!」









「邪魔するやつはぶっつぶしてやるぜ!!」









妖夢や霊夢、魔理沙による

前衛決死結界3連鎖



という、2回戦と全く同じ状況が敵に発生。
本当にこれはやられる方にとってはたまらない
その気迫に押されて、こんな接戦になったのだろう。
ただ、部外者から見れば接戦の理由は「黒赤」のとった戦術のせいであろうが…



というのも「黒赤」の戦術は正面突破敵を力でぶち破って潰すもの。
確かにその戦法で魔理沙や妖夢はドリブルやシュートでほとんどのDF陣紙のごとく吹っ飛ばしてきた。
ただ、吹っ飛ばすだけ吹っ飛ばしといて肝心のゴールが奪えないというお粗末な結果が多い。

だが…この作戦、特に妖夢にとっては最高に相性がよかった。

来る前こそ、デストロイヤーのごとく暴れること拒否感を示していたが、敵は容赦ないというか完全殺しにかかってくるのだ


力無き者は容赦なく潰されるフィールドの上では綺麗ごとなんか言っていられない。
覚悟を決めた妖夢は、生き残るために獲物に飢えた肉食動物のごとく襲いかかってくるDF陣を巨人の籠手強化された剣閃でもって容赦なく斬り伏せてきた。


群がる敵を斬り伏せればボールキープ力があがり、GKとの1対1の状況が生まれやすくなるので絶好の得点チャンスも生まれる。
元々シュート力が高くない妖夢は遠距離から無理やりゴールを狙うより近距離から撃った方が効率よかった。






「所詮この世は弱肉強食。
強きものは生き、弱きものは…」





もとより、外の世界で行ったら一発退場レッドカード物の反則技だらけの東方サッカーだ。
なんでもありな無法ルールの前では、はちゃめちゃでクレイジーな戦略でも勝てば正義やったもん勝ち。

どんなに理に適った戦術であっても勝ちという結果が残せなければ意味がない。

事実、他リーグでも最強の攻撃力最強の守備力を誇る優勝候補同士のチームが潰し合った試合もあれば、
壮絶な潰し合いの末に引き分けたせいでお互い決勝への切符を失ったチームもある。
これについては運がなかっただけなのだが、言い換えれば運も実力のうち。
敗因は幸運の女神を味方に率いられなかっただけであろう。

そうして、弱き物が食いつぶされ真の強き物だけが残った決勝トーナメント。
例え初出場であろうと決勝トーナメントへ進出を決めた「黒赤」は強者である。







紫は遠くではぜるキャンプファイヤーを見つめた。

火属性木属性を糧としてさらに力を強める…

予選で戦った敵チーム
「萃香」と「求夢」と「夢想流」

様々なメンバーと戦略、そして負けられないという想いが詰まった強敵達との戦い。


決して楽ではない激戦。
お互い、隙あれば容赦なく喉元へ食らいついてくる潰し合いの中、「黒赤」はこれらの敵を屠るとともに、さらなる強さを得たのかもしれない。



丁度、炎にくべる薪のように……



決勝トーナメントに残ったチーム達は、各予選リーグにて敗者達からの想いを受け継ぎさらなる輝きを得たチームであった。





「酒に酔ってるせいか、どうも感傷的になってしまうわね…」







隅の方へと目を配ると、明様に場違いともいうべきどんよりとした漆黒の闇に覆われた空間がある。
あそこは敗者というか、大会で絶望や屈辱といった闇を得たチームが集う場所だ。
境界を弄ってよく目を凝らせばそのカオスの中心にはレミリアが居座ってるのが見える。


レミリア…

かつては幻想郷を震撼させる程の強さを持つ夜の王、吸血鬼
純粋な能力では紫や幽々子といった者達と肩を並べることができるほどの強者であるがサッカーという点では微妙だ。
特に、元々似たような性能だが使い勝手のよい妹様ことフランドールという存在のせいで不遇の立場に置かれている。
その上、不遇な立場の改善を目指してキャプテンとして乗り込んで来たレミリアが役立たずという烙印を押されて土下座を強要されたのだ
なお、実際に土下座したのはそのチームを編成したオーナーだったようだが、例え土下座を逃れようとも役立たずという烙印は消えない。
大会で活躍してカリスマを取り戻すつもりが逆になけなしのカリスマを全て失うというシャレにならない結果にはもう誰も笑うことができない…


今ではかつて幻想郷を覆った紅い霧を鬱な漆黒の霧に変換させて放出し、隅っこの『陰空間』の主として君臨している。

おまけに陰空間内では、虹河姉妹の中で唯一決勝進出チーム内で採用されてなかった長女のルナサ達が演奏する悲しみのバイオリンによって増幅され、もう誰も踏み込むことも手を出すことも許されない暗黒領域となっている。



でもまぁこういう暗黒面も栄光や勝利と表裏一体でありどちらも欠かすことができないものだ。




「来る前は予選3連敗で陰空間の住民仲間入りだと思っていたのに…」


「でも実際は3連勝で勝ち残ったウサ」

「あ〜本当、貴女も予想外だったわね」


予想が裏切られたということにてゐは「うさうさ♪」としてやったりという顔を決める。
てゐ…それは人の期待を裏切るのが大好きな詐欺兎。
人を騙すことやおちょくるのに生きがいを感じる妖怪兎で他チームの中ではわざと必殺パスを打たなかったりやる気ないプレイを行ってチームを敗因に追い込むようなことをやらかしていたのもいたぐらいだ。

おかげでてゐに裏切られたあるチームのオーナーてゐはもう2度使わん!!」と決意させていたほどである。



だが、「黒赤」のてゐは最初の頃こそパッとしてなかったが段々とまじめにパスやカットを行うようになっていた。
それでもコストに比べたら割高という気がしないでもないが足を引っ張られるよりかはマシというもの。



「そういえばこのチームのオーナーってどこにいるんでしょうか?」


他チームとのチルノ談話も区切りついたのか、オレンジジュースを持って帰ってきた大妖精がふとした疑問を口にした。



「あぁ、あのオーナーなら出てこないわよ」

「なぜウサ?」

「世の中目立ちたがりでよく介入してくるオーナーもいれば、全く逆介入を避けるオーナーもいるのよ」



幻想郷で行われることはあくまで幻想郷の住民だけで行われる物。
部外者の介入は余計な混乱を生む…

といってもそれはあくまでこちらの話であり、他者のところまでは押しつける気はさらさらない。
なので、他チームのオーナーでも介入されてるようであれば普通に出てきて騒ぎに混じっている。
それだけに自分のオーナーが姿を現さないことに大妖精が疑問に思うのも不思議ではないだろう。


「でもいい加減あの陰空間がうっとぉしいわね…
一部の暇人も解除に動いてるし協力してくるわ」



そう言い残すと紫はさっと隙間を広げて中へと飛び込んだ。
そうするとその場に残されるチームメイトは…

てゐと大妖精のボランチコンビと、おまけとして近くでのびているリリーBだけだ。
これは珍しい組み合わせというか通常ならまずあり得ない組み合わせであろう。
それだけにどんな会話が生まれるか…わからないし予想もつかない。

「あ、あの…決勝トーナメントでしたけど…大変でしたよね」

沈黙に耐えきれず、大妖精が無難な話題を切り出した。

「私としては大変というより楽しいだったウサ」


決勝トーナメントに残ったのは風変わりな戦略ありえないような起用を行う個性派チームばかり。
だが、個性派であっても各チーム予選を勝ち抜くだけにしっかりとした実力を持つ強豪だ。
もちろん、「黒赤」もその強豪チームの仲間入りされてる個性派チームだ。



どの辺りで個性派扱いされているのか少々疑問があるが…
とにかく決勝トーナメント1回戦が始まった。







対戦相手は某所での宣伝を兼ねて走破を勝ち抜いてきたという宣伝チーム。
元々大会に出場するだけが目的勝ち抜くことを予定にしてなかったようだが、どういう運命というかどういう乱数が働いたのか予選を全勝無失点で勝ち抜いて決勝進出した意外性抜群のチームだ。

まぁ意外性については初出場なのに予選を全勝で勝ち抜いてきた「黒赤」も同類だろう。



なので、意外性のチーム同士が激突する面白い組み合わせだ。
そして迎えた結果は…ある意味では予想通りで、ある意味では意外な結末だった。

試合展開として…敵チームは大会出場経験あるが宣伝のために作られたメンバー故に独自の縛りを付けてきたチームであり、
それに対して初出場ながらも何の規制のない自由編成で組んだチームであるから、予選での激戦を勝ち抜いたことにより地力をつけた「黒赤」がぺース握っていた。


その証拠に魔理沙はDF陣を潰して零距離マスタースパークでもって敵GK中国を粉砕し、霊夢は相変わらずの夢想天生で必殺セービングなんて意味がないといわんばかりに中国を葬り去った。

さらに前半ロスタイムでトドメと言わんばかりに放たれたネオ夢想天生を前にして…
GK中国は逃げたのか、セービングには現れなかった。
つまり、空っぽのゴールに押し込むという形になったのだ。

まぁ、「黒赤」の霊夢のネオ夢想天生神を超える狂気のナニカが潜んでいるという噂なので逃げたのは正解だろう。
逃げてなかったら今頃、一生消えないトラウマを植え付けられていたかもしれない。








「幽々子様〜
料理は別にたくさんあるんですから夜雀なんか食べないでくださいよ〜〜」

「えぇ〜〜一口ぐらいいいじゃないの〜〜妖夢のケチ〜〜」


ようやくミスティアとの追いかけっこが終わったのか
幽々子の首根っこを掴んで引きずってくる妖夢の姿が見えてくる。


てゐと決勝トーナメント第1試合について会話するがいつ手玉に取られるのか…
というかすでに手玉に取られているというような会話の中で現われた助け舟…
妖夢の姿を見て大妖精は助かったと安堵の笑みを浮かべた。





決勝トーナメント1回戦後半。
同じように空気が変わった。

というのも




「ざけんじゃねぇぞ!ごらぁぁぁぁぁぁ!!」




キャプテンだったマイがいきなり大激怒
今までの猫かぶりから893を思わせるかのような激しい口調にびびったのかDF陣の気勢がそがれたのだ。

そうして上がったゴール前…
マイは低いボールでは必殺シュートがない。
だから撃つことはない。

紫はそう思っていたが、







「誰が撃たないと思ってるんじゃ!!
つか、てめぇごとき必殺なしで十分じゃぁ!!!」





なんとマイは普通のボレーを撃ってきた。
今まで必殺シュートすら完封してきた紫。
必殺でさえ破れないのだから、ただのボレーを撃つなんてありえない





なんていう油断というか思い込みがあったらしく、反応が一瞬遅れた。
その0コンマ何秒というわずかな反応の遅れが原因でそのシュートを後ろへ逸らしてしまったのだ。









幸いこのシュートはポストに当たったが…














「てい」














バシュッ













伏兵カナのねじこみでゴール。













「い、今のナシ!
今のはナシよ!!」

なんたるへたれぷり…
と味方陣からの冷たい視線を受けて焦る紫だが、今までほとんどのシュートを止めてきたSGGK(スーパー・グータラ・ゴール・キーパー)。
その功績を考えたら乱数という間違いでこういうミスもあるだろうということで、てゐ以外のチームメイトは『なかったこと』にした。


だが、その後攻撃陣は893マイに発破をかけられたGK中国死をかけた粘りを前にして攻めあぐねる。

こうして、後半は893マイによって流れを完全に奪われたのだが、気を取り直した紫はいつもの調子を取り戻して好セーブし続けた。











それによってマイのイライラはついに頂点。







終盤、ゴール前へ浮き玉があがったことを機にある決意をした。









「スキマァ!どうせもう勝てねぇのなら、
てめぇに一生消えない不名誉な烙印をプレゼントしてやらぁ!!」









切り込んできた893マイがボールへ向かう。








「ふん、何を意気込んでるのかしら。
貴女が何か仕掛けようと
先に潰せば問題ないことよ!」









紫もゴールを飛びだす。







「そうね〜面倒だし
前で潰しちゃいましょうか〜」









スィーパーの幽々子も食べてたサッカーボール型おにぎり投げ捨ててボールへ向かう。










そして3人が交差した時……










誰もが目を疑う信じられないことが起きていた。












それはかつて、ある平行世界のある走破チーム『オマケ連合』
そのチーム『オマ連』は急増の寄せ集めというか本当に寄せ集めとしか思えないチームメンバーで構成されていたのだ。

もちろん実力もなく、走破モード…特に最終戦は勝ち目ないと思われていたが、逆境に立たされた『オマ連』は諦めてなかった。
最後の最後である必殺技を生み出したのだ。




ゴール前の浮き玉に走りこんで飛び上がるユキとそれを阻止するSGGKレティ。



二人が競り合ったのち、トラップを決めて地上に降り立ったユキが悠々と空っぽのゴールにシュートを決めるという起死回生の大技。

かつて誰も成功させたこともないというか、成功率の関係上直接必殺シュート必殺スルーふっとばした方が効率いいから誰も使おうとは思わない伝説の大技。

その名も















『必殺胸トラップ!!』















今回は足トラップだったがそれをマイが決めたのだ。







   
ボールを確保したマイは何が起きたのかわからない西行コンビを無視するかのように、
空っぽのゴールに悠々とジューダスを撃ちこんでゴールを決めた。













まさかSGGKがマイごときのトラップに競り負けるなんて…







乱数とはいえ、さすがに今回ばかりは言い訳のしようがない。





しばらく紫は3分ぐらいorzと落ち込んでいたが…踏ん切りがついたのか、紫はゆっくりと口を開いた。










「……初めてですよ…ここまで私をコケにしたおバカさん達は
まさかこんな結果になろうとはおもいませんでした…」










いや、本当にこんな結果になろうとは誰も思ってなかっただろう。




その証拠に893マイ以外の選手達や審判はもちろん、観客全員が唖然としている。






だが紫は構わずがっくり膝を落とした状態のまま、今まで聞いたことがないような声のトーンで続ける。

表情は見えないが絶対怒っている。











「ゆ…ゆるさん…絶対に許さんぞ、虫けらども!」







ゆらりと顔をあげて立ち上がった紫は鬼のような気迫でもって893マイを睨みつけ















「じわじわとなぶり殺しにしてくれる!
ひとりたりとも逃がさんぞ!!かくごしろ!!!」


















拳を握り締めながら叫んだ。

だがいくら凄んでみたところで、そのセリフはどう見ても逆恨みな上に悪役の死亡フラグだ。
誰も怖がることはないどころか、さらに恥を上塗りしただけにすぎない。

ついでにこのままほっといたら乱闘に走りそうだったが、
一応反則に寛容な東方サッカーでも試合外での暴力は断じて許されない。
サッカーで受けた借りはサッカーで返すものなので乱闘するなら試合中にしろいろいろな意味で間違えた解釈でもってSGGKを抑え込んだ。





とまぁ、ぶち切れたというか壊れたSGGK「私の戦闘力は53万ですよ」とか「私はこの左手だけで戦ってあげましょう」とか「やはり42000ではこの程度でしょうね・・・」
と、明様に別人となった口調で、最後まできっちりとゴールを守ったのだが…



勝負に勝ってもマイにトラップで競り負けたという事実は変わりない。








おまけにその日の新聞は





「伝説の大技炸裂!
誰もが目を疑ったゴールの瞬間!!」






という記事とともに893マイの宣言通り、黒赤のGK紫には“SGGK(スーパー・グータラ・ゴール・キーパー)”改め
“SGGK(スーパー・ギガ・グータラ・キーパー)”
という不名誉な烙印が押されたのだ。








「確かにあれは傑作だったぜ」

「そうね。紫にとって試合に勝って勝負に負けたという感じだったし」


キャンプファイヤーも飽きたのか、キャプテンである魔理沙と霊夢も戻ってきた。





なお、あの一戦について紫はどう思っているのかわからないがチーム内ではとりあえず
「紫はSGGK(スーパー・ギガ・グータラ・キーパー)になると口調がフ○ーザ様になる」ということで処理したらしい。

さらにこれは面白いネタだし帰った後でたっぷりからかってやろうと今度は全員一致で今は何も言わないことになっていた。




ということで様々な波乱があった決勝トーナメント第1試合で「ニコ集」を下した「黒赤」

苦戦したかどうかはともかくとして、ありとあらゆる意味での強敵であった。

強敵との戦いはチームを変える…


それがどういう方向で変えられたのかはわからないが、とにかくさすがは決勝トーナメント。

そのすべてが予選を上回る意地や決意、思想や魂等様々なものがぶつかり合う接戦だったのだ。







「敗者は勝者に想いを託し、勝者はさらなる高みを目指す…」






陰の結界解除を終わらせてきたのか、紫も隙間を使って戻ってきた。
その手には陰の空間に捕らわれていたうどんげもいたようだが、それについては誰も突っ込まない。




「そうそう、まるであのキャンプファイヤーみたいにね」



幽々子も何か思うところがあるのだろう。
妖夢が「夜雀肉の代わりですがこれで我慢してください」と渡されたマンガ肉を両手で支えながらではあるが、ラスボスという威厳が持つカリスマ的なセリフを発した。



キャンプファイヤーの炎…
薪というエネルギーを得た力さらに激しく燃え上がる。


まるで、夜空に輝く無数の満天の星空を目指すかのように……



勝ちあがる者はさらなる高みへと昇る資格が与えられるという栄光とともに、さらなる激戦が課せられる。

そうして戦う、決勝トーナメント準々決勝。


対戦相手は予選リーグにて最強の守備力を破り、得点力トップを誇る優勝候補の一角「アリ友」






「…………あの星、こうやって手を伸ばせば簡単に取れそうなのに、実際に取るのはできないんだな」



魔理沙が伸ばした手が星を掴もうとするが掴めず、ただ空を握っただけである。


魔理沙の魔法は星を模した魔法。
星に対して人一倍思い入れがあるが、実際の星なんて掴めないことはわかっていた…
それはいくら努力しても掴むことなんてできることがない真理でもある。

例え、小町の“距離を操る程度の能力”や紫の“境界を操る程度の能力”を手に入れたとしても『夜空に輝く星』というものは絶対に掴めない。


「魔理沙…」

「魔理沙さん…」


その普段の強きな魔理沙には似合わないような姿に、霊夢と妖夢はただ小さくその名前を呼ぶしかできなかった。


星は掴めない…どんな力を持ってしても掴むことはできない。








「黒赤」は完敗だったのだ。
事実、黒赤は全員が精一杯頑張っていた。
魔理沙や妖夢はゴールこそ破れずともDF陣はドリブルで蹴散らしたし、霊夢も夢想天星でゴールを無理やりぶちやぶった。




「うさうさ…」




「………」



てゐと大妖精は我関せず声をかけることすらできないかわからないがとりあえずじっと魔理沙を見つめている。




二人は、ボランチとして中盤で必死にボールをカットし、前衛へつないでくれた。





「あれ、魔理沙〜何して…」


「…何、この空気?」



「………!???」



どんちゃん騒ぎも落ち着いたのか、のびていたリリーBを二人で肩を貸して支えながら戻ってきた輝夜とカナも重い空気に酔いが一気に冷めた。


リリーBと輝夜とカナ。
リリーBのSBGK化と合わせて、低コストとは思えない大活躍ぶりで攻撃を止めたDFライン。






「青春してるわね〜ついからかっちゃいそう」

「ふふ…本当に似合わないからついからかっちゃいそう」


それを面白く見守るのは幽々子&紫の西行コンビ。

最後の砦である彼女等は多少へたれた部分もあるが、例え自身がふっとばされようともゴールだけは死守する執念の鉄壁でもって最後までしっかりゴールを守った。




つまり、「黒赤」はなんだかんだいって攻防のバランスとチームワークと戦略に優れた良いチームだ。
準々決勝でもいつもと同じように攻めたり守ったりしていたが…






対して「アリ友」は強敵であった。





両サイドから極限まで高めたシュート力で攻撃を仕掛けるEX慧音と藍…


ゴール前を守るは萃香と紫とGK輝夜…

それらをまとめて統率するアリス

攻撃、守備、戦術…
その全てが「黒赤」を完全に上回っていたのだ。



それでも前半こそ善戦はできたが、後半から徐々に地力という実力の差が表れ始めた。

前半の猛攻でのツケで動きが鈍る「黒赤」に容赦ない攻めと守りを加える敵陣……



乱数、相性、運…それらいろいろな要素が加わった結果だけだろうが「勝った者が正義」


敗者にできるのはただ黙って立ち去るしかなかった。





勝つ試合もあれば負ける試合もある…







だから、負けた時は
「くやしいが初出場でベスト8という成績残せたんだぜ!
賞金ももらえるそうだし十分自慢できることじゃないか」


言うまでもないが大会からは例え優勝チームであっても賞金はでない…と思う。
なので賞金は出発前に藍が自腹切って用意したものである。


東方サッカー
それは『偶然カップファイナル〜』に限らないが
こういう大会は『Lunaticモード』のEX戦に近い。
そんなものを初見でクリアーできたら神なので、初見でここまで行けたのは十分快挙だ。


っということで魔理沙はチームを率いるキャプテンらしく、堂々とした振る舞いでくやし涙を浮かべるチームメイトを説いて退いたのだが…

心の中では完全に割り切っていたわけではないのだろう。







「…………本当にあの星は掴めないんだな」



魔理沙がいう星は、勝ち星なのか…勝者が得られる栄光か……それとも遥かなる高みか……それは誰にもわからない。



だが、魔理沙の気持ちはわからないでもない。
事実、「黒赤」を破った「アリ友」は準決勝で「萃夢冬」を大差でやぶる破竹の勢いで駒を進め、誰もが優勝確実と思われたが……


決勝戦は、最後の最後で番狂わせ。
ワイルドカードというおこぼれで決勝トーナメントに進出したが、その逆境をバネにして這い上がってきた下剋上チーム「いちご」が激戦の末に「アリ友」を破った。





上には上がいるとはよく言った物だ…
いや、下でさえも気がつけば自分達の上に立っているかもしれない。

正直、今回は勝てた相手も次に戦えば勝てるとも思えない。

そんな、成長の激しい大会の中で掴める優勝という壁は、
今まで見てきたどんな壁よりも分厚く高くそびえ立っている。

その壁は、『Lunaticモード EX戦』の方が楽に思えるぐらいに……






諦めるなんて魔理沙らしくないじゃないの」



魔理沙の心の内を察したのか、霊夢が口をはさむ。
伊達に長い付き合いをしているわけではない。





「そうです!まだ始まったばかりなんですから
努力し続ければきっと掴めますよ!!




妖夢も最初は無理やり参加させられた大会であったが、数々の激戦の中で得た物は大きかった。



それに、魔理沙が星を掴むために追いかけるよう、妖夢も先代の背中を乗り越えるために追いかけているという共通点もあり、魔理沙の気持ちがよくわかる。




「………こんな私にまた付き合ってくれるのか?」


「もちろんよ。私はキャプテン魔理沙の相方なんだし」


「私も、今度は敵をただ斬り伏せるだけでなくゴールも決められるストライカーになってみせます!!」



「いやウサ。今回の試合だってキャプテンが原因で負けたようなものウサ」



相変わらず空気を読まない兎だ。
その言葉は、霊夢と妖夢の意気込みを挫き、魔理沙の心にクリティカルヒットを食らわせるようなものだが…



「でも、負けても試合は楽しかったし
また楽しませてくれるならいくらでも協力するウサ」



「はい。私も次があれば是非とも協力します」




空気は読まずとも場はわきまえているようだ。
もっともてゐの本心はどうなのかわからないが、てゐも鬼ではないと信じたいし何より本心でなければ決まらない。
なのでこれは本心であると暫定的に処理しよう。


なお、大妖精は言うまでもなく本心だ。





「………次もあったら協力する」


「私もえーりんに頼らずやれるんだってとこ見せたいからね」




「というか私という貴重な人材を無視したら
取り付いて呪い殺してやるわ!」





リリーBも輝夜もカナも、断る理由なんてない。
というか、めんどくさがりな輝夜自分から面倒に突っ込むなんか凄い進化だし、カナも自意識過剰過ぎる気配がある。


だが、輝夜もカナも大きな口を開くに値する活躍をしたのは事実なのだ。
特に気にすることはない。




「あぁ、そうだぜ。
次があったらまた暴れようぜ!!」



しんみりとした空気も抜け、魔理沙は力強く宣言。


「それでこそいつもの魔理沙よ」


それを見て、霊夢他みんなもうんうんとうなづく。







「勝つぞ!
今度こそ絶対に優勝をするぞぉぉぉーーーー!!!」








「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーー!!」





魔理沙が腕を突き上げて宣言すると同時に、残りの面々も同じく腕を突き上げる
でもって


「う〜〜本当にからかいたいわ〜〜」

「あ〜〜〜これはもう拷問だわ〜〜〜」

それらの臭さマックスな青春劇に笑いを押さえながら見続けている幽々子&紫の西行コンビ…
ありとあらゆる意味で限界だったが、ここをぐっと我慢を堪えて最後まで見届けるのもまた面白いので最後までちょっかいはださなかった。

というか、ちょっかいだしたらなんとなく、周辺の藍達が『空気嫁』オーラとともに襲いかかってきそうで怖かったというのもある。
ただでさえあるチームの藍と橙の式神コンビは下剋上で紫をフルボッコにするぐらいの強さを発揮したし、他チームの藍達も紫に対してかなり不満や恨みを抱いてる節がある。

そんなのから同時に襲われたら幻想郷最強クラスの西行コンビでもかなうわけがない。

行き着く先は、傘で殴られた分の3倍返しボコボコにされた後に蹴り飛ばされてゴミ捨て場へゴールが妥当であろう。


もっとも、藍達は自分のところの主だけで手が一杯なので他者のところになんか関与するつもりはさらさらないようだが、まぁ存在自体が怖いということでスキマ達の暴走抑制という部分では役立ってるらしい。



なお、ここまで来て全く出てこないうどんげはというと………









「私はできない子…
がんばっても何もできない子…
私は役立たずな子……」











とせっかく陰空間から脱出できてもまた逆戻りしてるようだ。
ていうか、今大会のうどんげは全チームを通して散々であった。
その散々ぶりは大会の裏MVPに認定されるぐらいであり、今は同じうどんげ同士で傷を慰め合っている。



あまりにうっとぉしいから慧音達がその姿を見えないようにしたようだ。








ちなみに陰空間の主であったレミリアは今大会唯一のGKジャック八つ当たりの憂さ晴らしでボコボコにしようとしてたが…相手は鋼鉄の拳を装備した通称“鋼鉄ジャック”

撃つシュート全てをその鋼鉄の拳で防いでしまい、しまいにはフランと協力して放ったトランシルヴァニアでさえもパンチングではじいてしまう始末。

あまりの鉄壁振りに咲夜さん連合に『空気嫁』と睨まれたからなのか、ジャック自身が同情してしまったのか、
最後の最後でわざとらしく吹っ飛びながらゴールポスト顔面ダイビングをかますという芸人ぶりを発揮した。

それを見たレミリアは、ガッツを使い果たしたこともあり、安らかな笑みを浮かべながら倒れて眠りについた。







「うふふ…そうよ……私が役立たずなんてありえない………
これが私の本来の姿なのよ………」








っと、涙をこぼしつつも夢の中で大活躍する自分を妄想して悲しみを和らげるレミリア…

これにちょっかいを出すことは幻想郷の強者、特に咲夜さん連合が許さないので誰も邪魔はしていない。
というか、あの姿は極悪非道なブン屋やスキマ達でさえも同情してしまって手を出そうとも思ってないようだが……
それはそれで悲惨だろう。

なお、セーブしまくってレミリアの傷をさらにえぐってしまった鋼鉄ジャックの処分をどうしようかと閻魔達による妖怪裁判がおこなわれたりもしたが、
鋼鉄ジャックは大会で台風の目となって数々の番狂わせ迷勝負を引き起こして盛り上げてくれたし、最後にはわざとらしかったが吹っ飛んでくれたという功績があるので罪は不問となった。

ただ「ジャックだから勝手に治癒するだろ」ということでポストへ顔面ダイブしたことによって受けた傷は治してくれてなかったようだが…
ジャックだから不当な扱いは慣れてるらしく、3分後には頭からだくだくと血を流しながら、何事もなかったかのように宴会へ戻ってきていた。



それと、危うく裏MVPにされかけたというやっぱり散々な扱いだったミマー達は、
自棄酒自暴自棄無理やりどんちゃん騒ぎを起こしていたようだが…
いつのまにかどうでもよくなったらしく、今では純粋に楽しんでいるようだ。

その辺りのいい加減なところは、やはり大物の器を感じさせてくれる。





なお、ルナサ達はただ雰囲気に合わせた演奏しただけにすぎないようで、
陰空間が解放された今は鬱演奏を自重して普通に食べたり飲んだりして楽しんでいる。



まぁとにかく予選敗退したチームも決勝トーナメントに残ったチームも例外なく、
様々なドラマが繰り広げられながらもお互いの健闘をたたえ合っていた。








「おっと、ついにメインイベントが始まるみたいだから手伝ってくるぜ」




何かの合図があったらしく、魔理沙が箒に乗っかってふわりと空へと舞いあがる。
それに続いてリリーBも同じく翼を広げて魔理沙の後をふらふら付いてくる。
明様な酔っ払い飛行で危なっかしいなと思ったが、他チームのリリー姉妹達が集まってきたので大丈夫だろう。


危なっかしい酔いどれリリーBを支えて先導してくれる他チームのリリー姉妹に後を託し、魔理沙はさらにスピードを強めて風を切りながら上昇を続けた。

冷たい夜空の空気が敵度に酔った顔に当たり心地よい。



ある程度上空へ達してから改めて地面を眺めた…


空から見下ろすスタジアム。

その中心で赤々と燃えるキャンプファイヤーと、その周辺に群がるライバル達……



「人がゴミのようだぜ」


試合中は飛行能力を制限させられるために上空からスタジアムを眺めるという機会がなかったが改めて見ると本当にちっぽけに見えてしまう。
ここから真下にマスタースパークでも放てば全てが吹き飛んでしまいそうなくらいのちっぽけなスタジアム…


だが、あの小さなスタジアムの中で、確かに自分達は試合をこなした。

ちっぽけであるが、様々な名勝負や迷勝負を生んだ100の試合が行われていたのだ。






周りを見ると、同じように別チームの魔理沙達が箒に乗って滞空している。
彼女等とはついさっきまでライバルとしてあのちっぽけなスタジアムで試合したのだ。




暗くて顔がよく見えない…というか顔が見えても区別がつくかどうかわからないのだが、この中に自分と同じフィールドで立って戦った魔理沙もいるだろう。




平行世界での数ある幻想郷…
その中で自分と全く同じ存在でありながら違う存在として生き続ける自分達……



本来なら決して交わることのない出会いだ。



だが、今は実際交わりを持ち、あのちっぽけなスタジアムというフィールドで戦ったのだ。




サッカーボールを中心に争いあったあの激突。



一つのボールを仲間とともにゴールへと運ぶ使命に燃えた時間。



お互い傷つき倒れながらも、勝利を目指して突き進んだ記憶は決して幻ではない。








「下は準備できたようだし、そろそろやるぜ」



誰かの魔理沙が言った。
同じ声ゆえにどのチームの魔理沙かはわからないが、下を見れば虹河姉妹連合も集合してスタンバイOKの合図を送っている。

それに合わせて魔理沙達はお互いに円陣を組みながら下へ合図を送る。



「さぁ、最後の祭りだぜ!!」



最初に言った魔理沙がミニ八卦炉を取り出し、


「あぁ、大会の締めくくりに相応しく派手にいくぜ!!」



それに合わせて皆次々とミニ八卦炉を取り出した。


その数は12個…


その一つ一つから淡い光を放ちながら魔力が込められて行く………



張りつめた空気………



今にも爆発しそうな空気に支配された空間の緊張が最高まで切り詰められたその瞬間。


















「未だぁぁぁぁぁぁ放てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

















マスタァァァァァスパァァァァァァック!!!!!!!!!!×12

















おそらくこんな機会がなければまず見られないであろう魔理沙連合によるマスタースパーク同時発射。



全てを飲み込むに相応しい閃光が合計12本、スタジアム上空を中心に夜空を縦横無尽にと駆け抜けていった。





それを合図として地上に残っていた他のメンバーも各々の弾幕を上空に撃ちあげて、轟音とともに色彩鮮やかな花火が夜空を彩られる。
なお、一部の目立ちたがりなH不用意に空へ浮かんでたばかりに花火の誤爆を受けて悲鳴とともに撃墜されていく姿やどこかのスキマが
「おーーほほほほほほ。ザー○ンさんド○リアさん、ごらんください。綺麗な花火ですよぉぉぉぉ〜〜!!」等とほざいていたようだが…


これも華ということで誰も気にしていない。









そんな賑やかな花火に彩られる夜空で、魔理沙達は自分達が放った閃光の行く末を見続けていた。





本来なら会うこともなかった自分達が力を合わせて放つ恋の魔砲





スタジアムの外を駆け抜けていく閃光に
皆は何を願ったのか、何を重ねたのか…




それはお互いの心の内の中にしかわからないだろう。







「さぁ、降りるぜ」





ド派手な花火をきっかけに下では虹河姉妹連合によるオーケストラ演奏が始まり、
リリー姉妹連合が桜吹雪をまき散らす中央ポンっ花でできたゴンドラが現れた。

そのゴンドラ…花の妖怪である幽香指揮の元で、エリーと中国の門番コンビ達精魂こめて作ったゴンドラであり、その上には白いドレスというかウェディングドレスに身を包んだリリーWが恥ずかしそうにはにかみながら手を振っている。






     ,.-、
     /  \
  ,、 }><{===ヽ、
  〈 \i イノハレリ/〉 応援してくれたみんな、ありがとう!
 Σヾノ リi ゚ ヮ゚ノリ /  私きっと幸せになるよ☆
 ∠ / く/(つT(つ>  
  レ、/,くン 〒ハV
    ゙'ーr_ェ'ァ┘







彼女は、決勝前日「勝ったら結婚する」という死亡フラグを立てたにも関わらず勝利をもぎ取った、優勝チーム「いちご」の最後の砦を守るGKのリリーW。
凶悪的というか最狂の攻撃力をほこる「アリ友」チームとの対決に誰も「いちご」が勝つとは思えないという絶望的な状況の中…
「いちご」はその死亡フラグを彼方へと蹴りとばして見事優勝したのだ。









“皆でいちごとリリーWをド派手に祝おう!!”







ということで試合終了のホイッスルが鳴った後、今まで静かに決勝戦の成り行きを見守っていた全チームがスタジアムのフィールドへとなだれ込んで行き
全員で心の底から「いちご」の勝利と「リリーWの門出」を祝ったのだ。


ついでに誰かが料理や酒をどんどん持ち込んでいったことも相まってそのまま後夜祭モードへと突入するどんちゃんさわぎとなったのだ。

なお、酒や料理による宴会はともかくとして結婚式なんてものは想定外だったのでウェディングドレスなんてものは用意しきれてなかったのだが……











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944名前が無い程度の能力:2007/08/16(木) 21:15:19 ID:kk85L3kA0
花嫁の準備はOKです。

ttp://www.uploda.net/cgi/uploader4/index.php?file_id=0000018130.jpg


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ということでウェディングドレスはいつのまにか用意されていた。


一体誰が用意したのか全くわからないが「スキマの誰かが用意したんだろ」ということで誰も気にとめることなく受け流し、どうせやるなら徹底的にと門出をメインイベントとして皆の力を結集して行うこととなったのだ。




その、力の結集でメインとして選ばれたのが祭りと花火のことなら任せておけな魔理沙連合となり、
魔理沙達が話し合った結果、上空で四方八方目がけてマスタースパークを同時発射させるド派手な花火。






まさしく、最後を飾るに相応しいものだ。


それに加えてこの門出と後夜祭は、この大会最後を飾るニュースとして伝えられることになるだろう。



「魔理沙、お疲れ様」



スタジアムのフィールドに降り立った魔理沙は自分のチームの霊夢に出迎えつつ並々と麦酒に満たされたジョッキが渡された。
見れば皆ジョッキを手にしているし、各チームの魔理沙も同じようにジョッキを渡されている。
ついでにいえば花火の誤爆で撃墜された連中残機を消費して復活して、やはりジョッキを手にしている。








「さぁぁぁみんなぁぁぁ!!
主役も着飾ったし、改めて乾杯行くわよぉぉぉぉぉ!!!」









いつのまにかリリーWの隣には、夢幻合体で呼び出される子ども達の希望が詰まった頑駄夢もどき(またの名をコレジャナイロボ)が降臨しており、その肩には夢美教授が乗っかっている。


彼女は優勝チーム「いちご」のストライカーであり、今大会MVPに選ばれた選手だ。
しかも酒に酔ってるせいか高所恐怖症もなくなっており、少し赤いが上機嫌でイチゴ柄ジョッキを掲げている。

なお、下はいちごパ○○かどうかは知らないが…



それに合わせ、しっかりとした意識を保っている全選手もジョッキを掲げる。















「「「「「いちごの優勝を祝って!!」」」」」














「「「「「リリーWの幸せを祈って!!!」」」」」

















「「「「「大会が無事に終了したことを祝って!!!!」」」」」


















「「「「「「そして、大会を運営した○か○ー氏への感謝をこめて!!!!!!」」」」」」





















「「「「「「「かんぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」」」」」」














様々なドラマを生んだ
「東方サッカーオールスター
『偶然カップファイナル〜』」










“強いチームが勝つんじゃない、
勝ったチームが強いんだぜ!”








出発前に魔理沙が説いた言葉だが今は心底どうでもよかった。
酒がいい具合にまわってるのか、虹河姉妹連合の演奏が気分を向上させているのか…

どちらが原因かわからないがこれこそどうでもいい。
沈んでいた連中も復活して全てが歓喜に包まれている。






この大会が終了してしまえばここに居続ける理由がないので、明日には皆お互い帰るべき場所へと戻るだろう。

また出会う機会があるとはいえ、今ここにいるメンバーが集まることはもう二度とないだろう。



だからこそ、今いるこの瞬間を大事にしよう!


憎しみや悔しさ、悲しみなんて、すべて忘れて…


今はただ純粋に楽しもう!!





そう…例えどんなに遠くへと離れても、
歴史的には存在することのない存在であっても、
ここにいる皆とは一つの絆でつながっている。














“東方サッカーが大好きだ”













この絆がある限り、例え次元を超えようとも皆は一つとなれる。






一つの元へと集うことができる。




















「よっしゃぁぁぁぁ!!
折角だから一曲歌わせてもらうぜぇぇぇぇぇ!!」









黒赤キャプテン魔理沙が中央で歌っていたメガヘタレことミスティア達を体当たりで吹っ飛ばしつつ中央へ躍り出た。



吹っ飛んだミスティア達はそのままキャンプファイヤーに頭から突撃。
悲鳴とともに香ばしい匂いを漂わせてルーミアや幽々子達に襲われそうになってる中、魔理沙は浮かばせた箒の上で仁王立ちとなり、左手を腰にあてて右手にメガヘタレから奪ったマイクを掲げてる。








「おっと、同じ魔理沙とは言えぬけがけは許さないぜ!!







「そうよ、負け犬は引っ込みなさい!」








それを邪魔するのは…多分最強の一撃火力でもって大会最強硬度を誇るSGGKを破った戦歴を持つ、大会3位チーム「MB!」の魔理沙と
準々決勝で実際に戦った準優勝チーム「アリ友」で、最後の最後にチームメイトから全ての命運を託されたという真の友情を得たキャプテンアリスだろう。


だが「黒赤」の魔理沙も引っ込まない。






「はっ、何を言うか!
なんなら
“魔界の力を身につけた程度の能力”を見せてやるぜ!!」





本当に魔界の力を身につけてるのかわからないが、「黒赤」の魔理沙は初日の試合で「くらえ、魔界の力みせてやるぅぅぅ!!」という「俺は天才、ファン・ディアスだーー!!」とでも言わんばかりの凄い台詞で自分の存在感を知らしめたのは確かだ。

例え優勝チームや賞を取った優秀選手でなくても威圧感は一歩も引けをとらない。







やがて、せっかくだからとリ○ロの武田と呼ばれた不協和音の重防御魔界神やら奇跡的な決勝進出を果たしたSCGK魅魔様やら永遠てゐやらブルーストッパーチルノ文&フラン&妖夢の韋駄天3連合といった大会中キラリと光った選手達も次々と集まって誰が歌うかと争っていたが、








それに見かねたのか

敢闘賞を獲得したGKゴロシの得点王、エアマスきもけーね
技能賞を獲得した音速で動く世にも珍しいマッハパチュリー
殊勲賞を獲得した真の点取り屋の一味違う藍様



それぞれが必殺シュートでもって酒樽をぶつけたことによって事態急変。














お互いが必殺シュートや必殺パスで酒をぶっかけまくる祝勝会名物の酒符「酒池肉林(ビールかけ祭り)」が発動。










タガが完全に外れた選手たちは会場内にあった全ての酒をぶちまけたのだ。






しかも酒がなくなればスキマ達が隙間を通して酒を持ち出したり、萃香達がひょうたんのリミッターを外して噴水のごとくふり駆け回ったり、
最後にはただの水を酒に変えるという伝家の宝刀ともいうべき『仙桃』なんかもどこからともなく持ち出されるという誰も収集がつけられないカオス状態となり……










結局この世の全ての酒がスタジアムに集結したかのようなどんちゃん騒ぎによって








一人残らず完全に酔いつぶれたところでこの騒ぎは終了した。


























……少女睡眠中















「っつ……」


ズキズキと痛む頭を押さえながら魔理沙は目を覚めた。

完全二日酔いで、気だるそうに周囲を見渡すとそこは博麗神社境内であり、周辺ではチームメイトであった皆が同じようにだらしなく眠っていた。

どうやら自分の幻想郷へと帰ってきたようだ。




空は薄らと明るくなり夜明け寸前で、辺りにチチチと鳥のさえずりが聞こえる。




あれは夢だったのか…




そう思った魔理沙だがふと近くに落ちている新聞が目に入った。
そこには


『大会終了!最後を飾るは酒池肉林!!
これこそ幻想郷クオリティ!!!』


とかいう見出しとともにあのどんちゃん騒ぎの記事が載っている。

一体誰がこんなもの書いたのか…


あそこにいた連中は天狗や鬼どころか境界を操って酔いを醒ませるスキマ達でさえもあの騒ぎの中で一人残らず潰れたのだ。

なので少なくとも幻想郷に所属する誰かではないだろう。
それこそ、とか第3者とかそういった類だろうが…まぁ関係ないから気にしないでおこう。


とにかく、この新聞がある以上あそこで行われていたのは夢ではない。
いや、夢であっても実際あの場にいたという事実は変わりない。

ふと空を見上げると、今にも消えそうな星々が輝いている。
もしかしたらあの星々の一つ一つが平行世界の幻想郷であるのかもしれない。










存在はする…が掴めない存在。



触れることもできない存在…



だが、掴めないからこそ追い求める価値がある。



あの星々には今まで戦ってきたライバル達や、未だ見ぬライバル達がいるかもしれないのだ。







魔理沙はミニ八卦炉を取り出して空にかざした。






平行世界でのライバル達とまた戦える日がやってくる……





その時は今度こそ負けない!







また、弾幕よりもアツイ勝負を行うために…








そして、次こそ遥かな高みへと上り詰めるために…











「私は次も必ず参加する…必ずあのフィールドへ戻る…
だから…だから…」



















届け、私のこの想い!


















「絶対にまた、会おうぜぇぇぇぇぇぇ!!」















星海にまで届くかのような勢いで伸びる真っ白な閃光…


平行世界の幻想郷でのライバル達に送るメッセージを込めた閃光。


それは、魔理沙の決意を現したように…


ただ愚直に、まっすぐに、力一杯上空へと伸びていった。




































なお、この一撃は博麗大結界に穴をあけてしまったらしく、
後で霊夢にこってりと絞られる羽目になったそうだ。






















終わり







おまけ



大会裏ではトトカルチョや盗撮写真の売買が行われており、そのことで大会主催者は多額の収入を得ていたようだが、最終日の宴会で振る舞われた料理や麦酒や酒、そして酒池肉林によって傷んだスタジアム修理による多額の請求書が大会主催者宛てに届いたせいで、その収入が全てチリと消えたようだ。

おまけに不正が「ト○シ○ン(仮)」にバレ、黙っている代わりに野球を流行らせろという命令が下されたことで主催者側の幻想郷では野球をやらされる羽目になったとかいうニュースが風の噂で流れてきたが…




元々違う世界の幻想郷。
どうでもいいやということで、誰も真相を確かめようとしなかった。















■ 黒赤マジック 戦歴

予選
vs魔界の力みせてやるぅぅぅ!!(萃香) 3-0
vs小さな夢を求めて(夢求) 3-2
vs夢想天生を使わざるをえない(夢想流)! 3-2

決勝1回戦
vsニコニコ集会所(ニコ集) 3-2

準々決勝
vsアリスと友だちになるTeam(アリ友) 2-5

総得点14 総失点11


成績:ベスト8進出
得点:霊夢(8点)・妖夢(4点)・魔理沙(2点)












あとがき


偶然カップファイナル開催跡地














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