「りるる〜」 「何〜、リリ…ー…」 ある休日の昼下がり。自室で最近購入した小説を読んでいたりるるはリリーに声を掛けられた。 そして彼女を方へ返事をしながら目を移すと、彼は全ての動作を停止させた。 お題SS「耳かき」 〜りるるとリリーホワイトの場合〜 りるるが目を向けた先には、当然だがリリーが立っていた。 だが、その衣装は普段のものとは全く違う衣装だった。 まずそもそも服自体が普段のゆったりとしたローブではなく、セーラー服。 そしてその上に女学生もかくやと言わんばかりに春色のエプロンを被った状態。 それでいて普段通り白地に赤のラインが入った帽子は被っていたままと、 その姿はりるるの嗜好のストライクゾーンを突き抜けた。 「り、リリー?その格好はどしたの…?」 完全な奇襲を受け、その愛らしさに思わず絶句したりるるは、何とかそう言葉を紡ぐ。 「これ?これは教授さんにもらったんだよ〜」 そういうと、リリーはくるりとその場で一回転する。 それは単に自分の全身を見て欲しかっただけの動きだったが、今のリリーの姿はセーラー服である。しかもミニスカートの。 当然遠心力と風の力を受けてそのスカートはふわりと広がる。 ただでさえグロッキー状態だったりるるの精神は、完全にそれでノックダウンされてしまい、 「むきゅ〜…」 「はれ?りるる〜?」 どうして倒れたのか不思議がるリリーを置き去りに、りるるは意識を手放した。 りるるが目を覚ましたのはそれから5分ほどしてからだった。 「ん、んぅぅ…はれ?」 彼が意識を取り戻すと、目の前には床が広がり、頭には柔らかい感触があった。 目の前の光景を見てから一拍置いてりるるは自分が床に寝転がっていることに気付く。 不思議に思って体を仰向けにするように転がすと、すぐ上にはリリーの顔があった。 「あ、気がついた?りるる」 「ふえっ?リリー?」 りるるが意識を取り戻したのに気がついたほリリーが声を掛けるが、それこそ寝起きのりるるにとってはそれは不思議で。 「えーっと…どうしたんだっけ、私?」 そう言って少し前の事を思い出す。そして自分の情けない姿を思い出すと、小さく「ぁぅ」と呻く。 そこでようやくりるるは自分の今の状態に気がついた。…そう、膝枕である。 床に寝転がってる割に妙に頭に柔らかい感触があったのは、言わずもがな、それはリリーの太ももだった。 気付いたりるるはさっきとは違う意味でまた「ぁぅ」と呻くと、顔を赤くした。 「えっと、頭どかした方がいいよね?」 そう言うとりるるは上体を起こそうとするが、 「ううん、ちょっと待って」 リリーはそれを押しとどめて、近くにあったりるるの書斎机をごそごそと探すと、そこからとあるものを取り出した。 「ついでだからこのまま耳掃除もしてあげるv」 そう言いながら彼女がりるるに見せたのは耳かきだった。 「ふぇ!?うにゅ…あ、ありがと…」 それを見て最初は動揺した声を上げたものの、結局彼女からの魅力的な提案に負け、 りるるはリリーがしやすいように顔を先程までと同じように前側に向けた。 かりかり……かりかり…… 昼下がりの休日特有の静かな空気の中で、ただ耳かきの音だけがする。 とはいえ、元々大きく音が出る行為でもないので、実質無音に近い。 「うーん、やりがいないなー」 「んー?」 耳かきの手を休めないままリリーが漏らした言葉に、気持ちいいのか気の抜けた言葉を返すりるる。 「だってりるるの耳、きれいだから面白くないんだもん」 不服そうな顔で頬を膨らませるリリー。そんな彼女にりるるはくすりと笑う。 「毎日とは行かなくても、それなりに自分でやってるからね」 「むー…まぁ、いっか」 軽い笑いを浮かべながら話すりるるに、リリーは少し膨れるが、すぐに気を取り直して耳かきをりるるの耳から出し、 (ふー) りるるの耳に息を吹きかけた。当然吹きかけられたりるるは驚くわけで、 「ひうっ!?」 そんな声を出して体を硬直させた。 こんなかわいい反応が返ってくると予想だにしてなかったリリーは顔を綻ばせる。 「りるるかわいぃ〜」 「うぅ〜…」 自分でも無意識に出した言葉に恥ずかしがるりるる。そんな彼にリリーは微笑んで声をかける。 「ん、こっちの耳終わったよ。次は反対ね」 「うん、わかった」 リリーの言葉にりるるはそう答えると、体を持ち上げようとする。しかし、 「体返すだけでいいよー」 リリーはそういうと彼を抑え戻し、りるるの体を反転させた。 ぽふん (……///〜〜〜っ!!) そう、反転させたのである。当然りるるの顔はリリーの体の方へ向き直ることになる。 さらにリリーが彼の頭を少し引き寄せたため、彼の頭はそのまま彼女の体に密着することになったのだ。 「んっしょ…っと。じゃあ反対側も始めるね…ってどうしたのりるる、顔赤いよ?」 「な、なんでもないよっ」 「…?へんなりるる」 顔を真っ赤にするりるるに首をかしげるリリーだが、特に気にしないことにしたのか、そのまま耳かきを再開した。