「左京ー、遊びに来て上げたわよー!」 屋外から聞こえるそんな声。 ああ、今日も彼女が来たのか、そんなことを思いながらも それを楽しみにしている自分もたしかにいた。 がちゃり、と扉を開けるとそこにいたのはいつもどおり、天子であった 「今日も遊びに来て上げたわよ!」 胸を張ってそういう天子に 「衣玖さんはどうしたんだ?」 「今日はちゃんと許可とってあるわよ! また離されるのはいy…うん! いきなり連れ戻されるのは迷惑だからよ! そのために努力してあげたんだから、感謝しなさいよね!」 まあ、前回は里で一緒にいった時に、門で連れて行かれたから…それがないのは、いいことだ 「で、今日は何するの?」 「折角こっちにきたんだし! 前回邪魔されたし! 人里に行きましょう!」 びし、っと人里方面を指して言う天子 「何なりと、総領娘様」 ふざけて言う左京に 「総領娘、ダメ! 天子でいいわよ!みんな総領娘総領娘で飽きちゃったわ!」 プンスカと擬音のつきそうな様子で怒る天子 「わかった、天子」 「それでよし、じゃあ、いきましょうか!」 そういうと左京の手をつかみ、引っ張るのであった ところ変わって、人里、大通り。 幻想郷の人の領域である人里でも活気のあるそこに、左京と天子は来ていた。 前回はここの入り口にて、竜宮の使いに待ち伏せられてつかまったのだが… 今回はどうやら本人の主張に嘘はなかったのか、すんなりと人里にはいることが出来た。 人里で見られる光景だが…基本、この2人の場合は決まっている。 天子が引っ張っていき、それに左京がついていくのである。 あれは、これはといろいろ見てはころころと表情をかえる天子に たまに苦笑をしながらもついていく左京。 たいていの人は微笑ましくみているのだが、当然、いつの世も、例外は存在する。 「やあ、お二人さん、今日は通りでデートかな?」 そう話しかけてくるのは月の幻惑。 大体いつもは風峰あたりをからかっているのだが…どうやら、たまたま見つけて、悪戯心が働いたらしい。 「そ、そそそんなんじゃないわよ!」 その言葉に慌てて答える天子 「私はここに詳しくないから、案内人として、連れて来てるだけよ、ええ、そうよ!」 「ほんとに〜?その割にはずいぶんと親しく見えたけど〜?」 まくし立てる天子にどこから現れたのか、そう追い討ちをかける萃香 「それに、いくら案内人だからって、嫌いな奴は連れてこないよな〜」 「そ、そりゃあ、それなりに気に入ってるからだけど…」 「だって〜、左京さん〜、焼けるねこのー!」 「は、はあ…」 からかう萃香と幻惑、反論する天子、割と蚊帳の外になってしまった左京。 「で、どこまで進んでるのかな? さっき手はつないでるのは見たけど、キスとかしたのかな?」 「してませんよ…って、い、いつから見てたんです幻惑さん…」 「人里の門をくぐったときから」 「最初からじゃないですか…」 ニシシといった感じで笑う幻惑に、がっくりと肩を落とす左京。 「だからー、従者みたいなものなんだってば! 左京はー!」 「おやおや、いつも付き合ってくれてるのにつれないねえ、それとも、怖いのかな〜?」 幻惑が左京にそんな衝撃に事実を告げている間も、萃香と天子の応酬は続く… 応酬というか、からかう萃香と乗せられた天子、だが、どう見ても。 「こ、怖いって何よ」 「いや、天人はキスすら出来ないのかなーと、左京の証言を聞くに」 「そ、そんなことないわよ!」 「じゃあ、ここでして見てくれないかな? そこの人と」 「げ、幻惑さん!?」 左京を指して言う幻惑 「そ、そんなこと…」 「あら〜? 総領娘ともあろうお方が、まさかこんなに度胸無しなんてね〜」 「誰がよ!」 すぐ噛み付く天子に、余裕の萃香。 「だって、まんざらでもない相手にキス1つ出来ないんだよ? 度胸無しだよねー、幻惑?」 「確かに、へたれだなあ、萃香」 「私は度胸無しじゃないわよ!」 「なら〜、ここでして見てくれる?」 「わ、わかった、わかったわよすればいいんでしょ!」 ニヤニヤしている萃香にそういうと、左京の下に歩み寄る天子 「て、天子?」 「ちゃ、ちゃんと目をつぶってなさいよ、は、恥ずかしいんだから…」 真っ赤になりながら、左京の顔を見つめる天子。 左京が目を閉じるのを見ると、ゆっくり近づこうとして…すんでのところで止めて、離れてしまう。 「おや〜? やっぱり度胸無し?」 「無理はしなくていいんだぞ?」 「う、うるさいわね、いまするわよ!」 そういうと、意を決したように、思い切り左京に口付けた。 大体そのまま30秒ほど口付けて、2人は口を離した 天子も、左京も湯気が出そうなほどに真っ赤になっている 「おー、なかなかやるじゃないのー」 「いやいや、いいもの見せてもらいました」 「そしたら、お邪魔はこの辺で退散するかなー?」 「そうだな、2人にしてあげますか、じゃあなー」 そんなことを言いつつ去る萃香と幻惑に… いつもなら噛み付く天子もどうやら余裕はなかったようで、顔を真っ赤にしたまま、少し涙目で睨むだけであった。 当然、その光景は回りにも見られていたわけで… 人が集まっているのに気がついた左京が、天子の手を引いて、逃げるようにその場を離れ そして、家へと戻ることになった その間も天子はしばらくは手を引かれるままであった。 ようやく、家で落ち着いてきた天子。 「さ、さっきのは勘違いしないでね! あれは天人の威厳を示すためで…」 「そ、そうだよね…」 少し、寂しそうにする左京に 「あの、いや、けっして嫌いなわけじゃなくて…その…えっと…んー…」 口ごもってもじもじしてしまう天子に声をかけづらい左京。 「わ、私だってキスする相手は選ぶから! あなたあたりならいいと思ったからしたから!」 「って、恋人とかそんなのじゃないから! あくまでほかの人より好きってだけだから!」 「と、とにかく私は帰るわ、今日は案内、ありがと」 「え、うん、どういたしまして」 紅くなった左京にそういって同じく真っ赤な天子は逃げるように天界に帰っていった 「えーっと、それって…脈あり、なのかな…?」 そんなことをつぶやく、左京であり… そして、先ほど起きたことを思い出すと…やっぱり赤面するのであった。 一方、天界では… 「うー…折角下に行ったのにー…楽しみきれなかったわ…途中で帰ることになったし…」 「それに左京とも…うー…」 「でも…今日は…」 脳裏に浮かぶのは、あのときのキスの光景 ぼんっ!と瞬間湯沸かし器のように紅くなる天子 「あ、あれは威厳を示すためで…で、でも左京とキス、したのよね…?」 「こ、今度も出来る、かな…?」 「い、いや威厳あるものは相手にさせるもの、今度は左京から…」 そんなことをいい、そのシーンを考えたのか、またさらに茹蛸のように紅くなる天子 しばらく、天子はごろごろと悶え続けるのであった。 あとがき いままでよりは少しだけ長くなりました。 なお、からかっている2人は左京と天子の中がいいことは知った上でからかってます、当然w しかしまあ、これってツンデレ?w