「えーっと…この状況はどういうことなんだろう…」 白玉楼の縁側で、諒に膝枕された状態で妖夢はそう呟いた。 お題SS「耳かき」 〜妖夢と諒の場合〜 事の発端はこうである。たまたま白玉楼邸宅に来ていた諒が耳かきを発見した。 話がそれで済めばよかったのだが、その時偶然通りかかった妖夢を見て、 「妖夢ー、ちょっとこっち来てー」 と言って呼び寄せ、それに妖夢が素直に従ってしまったのが運の尽き。 近づいてきたところを諒はすっと捕まえると、流れるような動作で自分の膝の上に妖夢の頭を乗せたのだった。 そして冒頭に戻って妖夢の言葉である。 「ん?耳かきタイム」 さもそれが当然であるかのように妖夢の言葉に答える諒。その顔は一欠片の躊躇いが無い。 「えと…誰の?」 予感…というよりはほぼ確信しつつ、諦めの境地で一応、諒に問いかける妖夢。 それに対する諒の答えは、 「俺が、妖夢の」 非常に断片的で、かつ分かりやすい返答だった。そこまで来て、ようやく妖夢は自分の体勢と、格好に気付く。 「あぁぁぅううう!」 そして一気に羞恥心で顔を真っ赤に染め上げると、縁側に寝転がった状態から逃げるように暴れだす。 だが、そこはそれなりに長い月日を共にした諒である。そんな反応が帰ってくるのも承知だったのか、妖夢が逃げられないようにホールドすると、 「暴れると危ないぞー」 (ビクッ!) その一言だけで妖夢の動きを完全に抑えてしまった。動きが固まったのを確認すると、 「さーて、耳かき始めるから出来るだけ動かないよーに」 諒はそう言って耳かきを始めた。 しばらくして耳かきが終わり、諒は妖夢を抑えていた手を離す。それを確認して妖夢は顔を赤くしながら上体を起こす。 「あぁぅぅ…」 心底恥ずかしかったのか、終わってからも顔を赤くして唸る妖夢。そんな妖夢の様子を見て諒は満面の笑みを浮かべる。 それで満足したのか、諒は持っていた耳かきを縁側に置くと、上体を後ろに反らし、それを両腕で支えるような体勢で体を伸ばす。 「〜〜〜〜っ、っは〜」 そんな気の抜けた溜め息を零す諒。その隙を見て、妖夢は不安定な体勢の諒の頭をぐいっと引っ張ると、先程自身がされたように諒の頭を自分の太ももに乗せた。 「おぉっ?」 完全に予想外だったためか、急に引っ張られた諒はそんな声を上げる。それを尻目に妖夢はついさっき諒が置いた耳かきを手に取ると、 「今度は私がお返しにしてあげるね♪」 非常にイイ笑顔(内心真っ黒的な意味で)で諒の耳掃除を始めた。 「〜〜〜〜!!」 された諒の方はその何とも言いがたい状況に声も出せずに、体を硬直させるばかりだった。 その後、その姿を幽々子によって覗かれていたのか、2人は散々幽々子と紫にからかわれ、幽々子はさぼまんに耳掃除をねだるのだが、それはまた別の話である。