ちょっとだけ冬月先生のSSの設定引っ張ってるよ! ---------------------------------------------------------------------------------------- 以前、永遠亭の住人達に誘われて博麗神社の宴会に行ったときの事。 これまで住んでた所のせいかこういう騒がしいところには不慣れなもので、 そそくさと神社裏に回って喧騒を聞きながらのんびりとしていた。 ・・・裏に回る前に何度か捕まったけど。 んで、天気も良いもんだから月でも眺めるかなとふと空を見上げた時に、  (・・・ん?あれは・・・) 神社の屋根に誰かがいたんだ。 緑髪に青色の服装。 『幻想郷縁起』には、あんな感じの人妖は載ってなかったな・・・  「・・・あのー」 気になったもんだから、声をかけてみた。 けれども反応はなかった。 ・・・聞こえてなかったかな? そう思ってもう一度声をかけようとした時、  「・・・呼んだかい?」 急に後ろから声がして。  「うわっ、びっくりした・・・」 その声の主は、さっきの緑髪の人だった。  「あっはは、悪い悪い。驚かすつもりじゃなかったんだ」 けらけらと笑うその人。  「・・・珍しいもんだね。私に気付く人間なんてそうそういないんじゃないか?」  「どういう意味です?」  「影が薄いのさ。文字通りにね」 ・・・そんなもんなのか?  「・・・で、私に何の用だい?」  「いや、特に用はないんですが・・・何であそこにいたのかなぁ、と」 裏にいるのはまぁ何となく分かるけど、屋根の上ってのは・・・  「騒がしいのを見て楽しんでたのさ。・・・まぁ、お前さんは騒がしいのよりかは静かなほうが好きなんじゃないか?」  「・・・その通りです」  「たまに居るんだよねぇ、そういうの。混ざりゃあいいのに」 まるで、ずっと見て来たみたいな言い方だな・・・  「そう言うあなたはどうなんですか」  「私は・・・ほら、さっき言った通り影が薄くてさ、なかなか気付いてもらえないんだよ」  「そうでなくても、下にいたほうが騒がしいのも楽しめるんじゃないですか?」  「遠くから眺めてちびちび飲むのが私の楽しみ方さ。月見酒みたいなもんだよ」 何か違うような、違わないような・・・まぁいいか。  「さっき言ってた通り、私も静かなほうが好きなんです。一緒に飲みませんか」 折角の宴会だし、呑まないわけにはいかないんだが・・・どうもあの雰囲気は苦手で。  「・・・上ってこれるかい?屋根の上にさ」 ・・・あー。  「まぁいいさ。たまにはここで飲もうか」 その場に腰を降ろす。 ・・・こっそり酒を持ってきた甲斐があったかもしれないな。  「とりあえず、乾杯しましょうか」  「何にだい?」 ・・・どうしようか。  「・・・二人の出会いに」  「はは、クサいねぇ。でも、そういうの・・・嫌いじゃないよ」 かつん、と小さく音が鳴る。 その後はあまり言葉を交わすこともなく、のんびりと月を見ながら酒を飲んでいた。 そして、表の宴会も終わりに近づいて・・・  「さて、そろそろ戻らないと」  「・・・もうそんな時間かい?二人だと時が過ぎるのも早く感じるのかねぇ」  「・・・ですかね」 飲んでる間は喋ることも少なかったが、それでも一人で居るよりかは、  「楽しかったよ」  「俺もです」 楽しかった。  「また会えますかね」 ふと、そんなことを言う。  「いつかまた宴会があったら、ここに来るといいさ。待ってるから」  「期待してます」 そう言いつつ、表に戻ろうとした時に、  「ああそうだ、名前を聞くのを忘れてたよ。何て言うんだい?」 と声をかけられた。  「俺はローズです。あなたは?」  「私は・・・」 言うのをためらってる・・・のか?  「私は、ここに棲み付いてるしがない悪霊さ」 何か含んだ言い方だけど・・・まぁいいか。  「じゃあ、またいつか会いましょう。悪霊さん」  「ああ、待ってるよ」 面白い奴だったね。 今ははぐらかしたけど、いつかは教えてやろうかな・・・ その時まで、あいつが私のことを覚えてるかどうかだけど、さ。 まぁ、気長に待つとしようかね。時間はあるんだし。 私は、ずっとここにいるよ―――