「…これは、当たりでしょうか」 話は左京たちのほうに戻る。 今いる場所は永遠亭のある竹薮。 到着してみるとそこはいつも以上に警備が物々しくなっていた 「可能性は高いかな、できればあまり戦いたくないですね」 「なによ、別に私達が組めばこの程度蹴散らせると思うけど?」 「いや…出来れば戦わないほうがいいだろう」 弾幕ごっこですむならいいが、たまに見える哨戒をしているであろう兎達は少し殺気立っている感じがしている。 弾幕ごっこですまない、でも負けることはないだろうが…後々に尾を引くことになる。 それに、万一があれば後味が悪い。 「戦うのは最低限、でいこう 近づけるところまで近づいて、そこから突破する」 冬月が方針をまとめ…かなり屋敷の近くまで隠れて近づくこととなった しかし、冬月と妖夢はまだしも、他の2人は隠密行動に経験があるわけではない。 ある程度のところで見つかってしまう 「仕方ない、一気に突破するぞ、妖夢!」 「はい、諒さん!」 「左京、ちゃんとついてきなさいよ!」 「天子、やり過ぎないようにね!」 1度戦闘になればこの4人、非常に強い。 妖夢は1度ここの異変の解決に参加したことがあり、強さは既に証明されている 冬月は妖夢の兄弟子である。妖夢ほど一心に剣術を中心に手ほどきを受けていないとはいえ、 そこらの相手では勝負にならない。 天子は今は剣がないとは言え、素の力量でも並みの妖怪とは比べ物にならないほどの力がある。 左京も果樹園を害されたのは四六時中見張れないからであって、妖精程度倒すだけなら苦にすらならない。 さらに、以前の永夜異変のときよりもかなり相手の数が少なかった。 これでは勝負にもならず、勢いのままに4人は永遠亭に突入することが出来た。 永遠亭の中でも抵抗はあるが… 何故かまとまりがあまりなく、散発的であった 「意思の統一が図られていないのでしょうか? こういった戦いの場ではそれは致命的になりますが」 「これくらいなら放って置いて一気に奥に行こう、逃げる時間を稼がれていたら困る」 抵抗が散っていることをいいことに1つ1つ相手するよりは一気に駆け抜ける4人。 しかし、目の前に見たことのあるへにょったうさ耳が立ちふさがる 「ここは、通さないわよ」 「うどんさん…」 鈴仙、永遠亭の荒事担当。 今まで相手してきたものとはまったく力が違う。 だが… 「貴方1人で4人相手にするつもり? いくらなんでも無謀じゃない?」 「そうね…でも私はやらないと成らないの、姫様のためにも」 「確定、か」 今回の異変は永遠亭が首謀で間違いないようだ。 「なぜ、そこまで忠義を尽くそうとするの? 貴方はどちらかといえば薬師に仕えているようにいえるのだけど?」 「姫様は私達の気持ちを考えて今回の異変を起こした、だからよ」 1歩も引く気はない、そういうように身構える鈴仙。 4人が戦闘態勢に入ろうとした、その時 「うどんげ、やめなさい」 「師匠! なぜ止めるんです!」 「姫は言っていたはずよ「たたかうな、と」」 「しかし、行かせていいんですか!」 そんな彼女を止めたのはその師匠、永琳であった。 「もう1度言うわ、戦うな、といったはずよ」 「しかし…」 拳を握って俯いて抗議する鈴仙。 「姫は責任は全部自分で取る、といっているわ…  あまりその気持ちを無駄にしないでちょうだい」 「でも、でも!」 食い下がろうとする鈴仙を制して永琳が4人に話す 「姫様が呼んでいるわ4人とも、来てくれるかしら」 「よく来たわね」 「あーっ、それ、私の緋想の剣!」 出迎えたのは永遠亭の主である輝夜。 後ろに永琳を控えさせた彼女のその手にはいつもの難題ではなく緋想の剣が握られていた 「返しなさいよ!」 「いいわ、もって行きなさい」 緋想の剣を畳の上に置く輝夜。 天子は直ぐにそれを回収すると試しなのか振るってみる 「うん、ばっちり大丈夫ね、さすが私の剣」 そんなことをいいながら剣の確認をする。 「でも、力を開放した跡があるわね、どうやったのかしら?」 「月の力を感じる、といわれましたが」 剣に僅かに残った開放の痕跡を天子が尋ね 空間にあった僅かな異変を左京が訪ねる 「2つともわかっているならば話は早いわ、単純に月の力で少し強引に、その剣の力を使わせてもらったのよ」 「何で…そんなことを?」 妖夢が輝夜を少し睨むがまったく意に介したそぶりもなく輝夜は答えを返す。 「今回の異変、迷惑だったかしら?」 「いきなり耳がついて、驚きましたよ!」 「それは謝るわ、では、嫌だったかしら? 異変ではなく獣と呼ばれるものの耳とかがあることが?」 真剣な表情で輝夜が聞く 「そうですね、さすがにいきなりこうなったので解決しなければ、とは想いましたが…  別に耳が犬だってこと自体はもし元からこうだったのであれば気にしないでしょうね」 妖夢もまあ、真面目に答える 「他の3人は?」 輝夜が他の3人にも答えを促す 「いきなり体に異変があったってのは問題だけどな、異変の内容自体は慣れればどうってことないぞ」 「大体同じ意見ですね特に実害はないですし」 「さすがにいきなり生えていたときはびっくりしたけど、確かにもうだいぶ慣れちゃったわね」 3人とも、比較的意見は近く、異変が起こった事実は気にしていても 異変内容自体はあまり気にしていないようだ。 「そう、貴方達みたいなら良いのだけど」 少し悲しそうに微笑む輝夜。 そして、静かに語りだす 「たまにね、イナバが泣いたりして帰ってきていた時があったのよ。  なにがあったかって効く機会があった時にね、人間にいじめられた、って  少し、衝撃だったわ。だからイナバ…鈴仙に頼んで里で情報を収集してもらった  ほとんどの人は気にしないようないい人だったわ。  でもほんの一部、ね 獣の耳があるからってだけで露骨に嫌がらせをしてくるように人がいた、と  緋想の剣を手に入れたのはたまたま。落ちていたのを本当にたまたま拾ったわ。  最初は返そうと思ったのだけどね、1つ考えが浮かんだのよ。  『もし、今嫌っているやつに耳をつけたら少しはこちらのことも考えるかしら』ってね  だから実行したわ、月の力を集めて強引に剣を覚醒させて、ね」 「あとは知っているとおり、おおむね変化自体はうまくいったわ、その効果が現れるかはわからないけども」 輝夜の言葉が止まる 「そうでしたか…」 その話に左京は黙りこくる 冬月と妖夢、も何かを考えているようで 言葉を出そうとしなかった そこに天子が口を開いた 「ひとまず、一応この異変を解きなさい、負けたら異変は終わり、よね」 「それならもともとかなり強引に引き起こしていたもの、長い間は維持できないわ  もう明日の朝には元に戻っているでしょう」 「そう、ならいいわ」 確認を取ると天子もまた黙ってしまう。 「さあ、好きに異変の罰を与えるといいわ覚悟はしていたもの」 「姫、やることを知っていて止めなかった私も同罪です、お供します」 「永琳はいいわ、これは私が勝手にやったことだから」 相手を庇いあう従者と主人。 その姿を見ながら4人は考える 「鈴仙さんや外の兎はそれを知って抵抗してきたんでしょうね…」 「こんな話聞いてしまうと…あまり咎めるのも…」 「しかし、異変を起こして騒ぎを起こしたことも事実ですよ」 冬月、左京、妖夢と感情の板ばさみになってなかなか話をまとめることが出来ない中 天子が動いた。 「なら、天子ちゃんが罰を決めてあげるわ」 「え、天子?」 ずい、と前に出る天子。 左京の困惑の声でも止まらずに罰を伝え始める 「今月中に、貴方主催で何か面白い催し物をやりなさい、宴会でも何でもいいわ  ただし、かならず貴方が準備を行うこと、回りが勝手に手伝う分には仕方ないけどね」 ほかん、としながらそれを聞いていた輝夜と永琳 「あー、なるほど、それでいいんじゃないか?」 「実害も少なかったですし、その程度で許しましょうか?」 冬月と妖夢がうんうんとうなづきながら語る 「天子…」 「なに、左京 文句あるかしら?」 「いーや、ないよ」 笑いながら天子の方針に同意する左京 「なら決定ね、何をやるかは…文屋にでも頼めばばら撒いてくれるかしらね  ちゃんとやらないときは…また懲らしめるわよ?」 びし、と輝夜と永琳を指して語る天子 その仕草に輝夜はくすくすと笑う 「あら、なかなかに厳しいわね、この幻想郷で、単独でのお祭り探しの主催をしろなんて  でもいいわ、それが罰だもの やり遂げて見せるわ」 「姫様、私も手伝いますわ」 「だーめ、これは私の罰なんだから」 「なら、勝手にやらせてもらいます」 明るくなった表情で語りだす永遠亭の2人。 「天子、上手くまとめたじゃないか」 「へっへーん、天子ちゃんにかかればこんなものよ」 「ほんとに、まさか天子が上手くまとめるなんてなあ…」 「なによ左京! 私がまとめたらおかしいの!?」 ぎゃあぎゃあと左京に食って掛かる天子。 先ほど上手くまとめた面影はそこにはないが、確かに話は上手くまとまったのだろう。 「…さて、これで解決したし、冥界に戻るとしますか」 「そうですね、幽々子さまにご報告しないと」 それを後ろから見ている妖夢と冬月。 なんだかんだいいながらも、最後はとりあえずこれでまとまってくれるのだろう 『幻想郷は今日も平和でした』 次の日、朝目覚めた左京から確かに耳と尻尾はなくなっていた。 慣れるとあの感触も悪くないと思うと、少しだけ名残惜しいが 本来の自分に戻ったことへの安堵もあった。 そんな、寂寥感もある左京の考えは、長くは続かなかった。 「さきょーーーーーう!」 「うわっ!」 ばん! と扉が開き、何者かが勢いよく突進してくる。 感慨に浸っていたをしていた左京はそれを避けることが出来ない。 そのまま ドスン! と侵入者とともに床に倒れこんだ 「い、いきなりな誰が…って、天子?」 「左京、遊びに行きましょう!?」 天子が満面の笑みで言葉を続ける 「昨日はあれだけがんばったんだもの、1日くらい付き合ってくれてもいいでしょう?」 ぐいぐいと手を引っ張ってくる天子。 自分も解決に尽力したんだけどなあ、と頭で思うも左京だが、 天子と出かけるのは自分にとってもうれしいことである。 「はいはい、わかったよ天子」 「そうこなくっちゃね!」 どうやら今日もまた、里へと行くことになりそうである。 けもみみ異変 終了 あとがき 長編って難しいね。 かなりのグダグダになってしまいました。 キャラの掻き分けも描写も甘い…要修行ですね。 ではいろいろ設定を 世界観について 幻想入りっぽい世界観ですが、パラレルワールドです。 というのも同じ嫁が好きな人を出すとき折角なら仲良くさせておきたいので2人が同居できないのです。 なので、書く度に少し設定がずれていたりします。三角関係とかかけないよ! この設定を使いたいならどうぞお好きに。 自分について 自分を出したのは変なことをしても一番問題が起こらないからw 本来は里だけだったのですが路線変更で少し長く出張る事に。 とはいえ自分ばかり書いてもあれなのでアリスともどもあまり話には加わらせていません。 変に設定はまとまりましたが、使うかはお好きにどうぞ。 レミリアについて 今回は岡ちゃんと仲のいいレミリア、です。 そのためなたさんはお休み。 最初はやみなべさんとの兼ね合いもあって酒場ルートだったんですが それだとカリスマスターっぽさがあるので紅魔館ルートに変更しました。 熊猫さんについて 新たなスキルをつけてみました。 元ネタは竜探しの武道家大工のひと。 もう1つは…やみなべさんを恨んでください(まて) 岡ちゃんについて メイド妖精に慕われてる、とのことなのでちょっとだけそれを出してみた。 描写が甘いけどね… 至らないところも多々あると思いますが、ご拝読くれてありがとうございました。 永久