【虎と猫と狐と】 ある日の妖怪の山。 椛が友人である河童の所へ出かけ、残されたハクレンが一人まったりくつろいでいると、 コンコン 「ん?」 コンコン 「はいはいー。どなたですかー。」 ドアをたたく音にハクレンがドアを開けるとそこには九尾の狐 八雲 藍がたっていた。 「あれ?藍さん?どうしたのですか、こんなところにおいでになるなんて」 「押しかけてしまってすまない。貴方に頼みたいことがあるのですよ」 「頼みたい事・・・?とりあえず、立ち話もなんですから、中へどうぞ。」 「すまない。お邪魔するよ」 「どうぞどうぞ。」 藍を中へ通し、お茶の用意をしている間、 ハクレンの頭の中では藍に頼られるようなことなどあっただろうかと混乱のきわみにいた お茶をだし、席についてからも何を言われるのかと、冷や汗をかきながら藍の様子を恐る恐る伺う。 その様子を知ってか知らずか藍は、出されたお茶を一口飲むと信じられない言葉を言った。 「リュードを監視してもらいたいのです」 「…………は?」 その言葉を聞いたハクレンは、思わず頭を抱えそうになった。 藍の言葉は、それほどまでに度を越えていた。 「理由は・・・・・・」 「もちろん、橙のためです あのようなものに、あのようなものに・・・・・・」 いいながら藍の九つの尻尾は逆立ち、その先には青い狐火がともりそうな勢いである。 これには、ハクレンも引きつった笑みを浮かべることしかできず。 藍が落ち着くのを待ってから疑問の一つを切り出した。 「しかし、なんで僕なのでしょうか?  藍さんほどの人なら、式神で監視させることも可能でしょう?」 「それは・・・・・」 わずかに言葉を濁す藍 「それは?」 「・・・・・・貴方が一番動きやすく、橙のなわばりにもリュードのなわばりにも近いからです」 「確かに、遠回りにはなりますが。いけないこともないですね……」 決めかねているそぶりを見せながら、ハクレンは頭の中でどう自分にとって有利な条件を引き出せるかを考えていた。 簡単に受けてしまって自分に被害が及んでは本末転倒。 せっかくの頼みなのだから、利用できるだけ利用しなくては・・・ と、そこまで考えたところでハクレンはちょうどいい交換条件を思いついた。 「わかりました。引き受けましょう」 「ほんとですか!?」 明るい顔をして立ち上がりかけた藍に笑みを返しながら 「ええ、ただし・・・・・・」 「ただし?」 「うちの上司からちょっとネガを手に入れてもらえないでしょうか?」 「上司というと・・・射命丸 文ですか?」 「ええ。この前、掲載された写真のネガを手に入れてほしいのですよ  藍さんなら楽に手に入れてくれますよね?」 藍に言葉を挟ませないように、一気にたたみかけ 条件を飲み込ませようとするハクレン。 一方の藍は少し考えるように目を伏せた後、 「橙の秘蔵写真の一部じゃだめですか?」 「それもいいかもs(グサ)・・・ヤッパリダメデス(ガタガタ)」 おもわず、同意しかけたハクレンだったが、 ドコからともなく飛んできた剣が首筋をかすめて床に刺さったことで一気に顔を青くしガタガタと震えだした。 一方の藍も目の前で起きた光景に唖然としてしまっていた。 「ソレデドウデショウカ・・・コノジョウケントカンシハイチニチダケトイウコトデヨロシイデショウカ」 「え、ええ。判りました・・・」 「ソレデハ、ホウコクトコウカンハゴジツニ」 ハクレンは、唖然としたままの藍を送ると。 ベットにもぐりこみ何かにおびえるようにがたがた震えていたそうだ それからハクレンが行動を開始したのは数日たってからのこと 準備を整えたハクレンがリュードの住む家を監視することのできる地点につくと なにやら言い争う声が聞こえてきた。 「頼む!」 「いーやー」 「頼む!」 「やーだー」 (・・・いったいなにやってるんだ?) ハクレンはきずかれないように、二人の姿を覗き見ると そこにはなにかを手に持って橙に訴えかけているリュードの姿と そっぽを向いて拒否を繰り返す橙の姿が見えた。 「これをきてくれ!」 「やだ!」 「このスクール水着(紺色)のどこがだめなんだ!!」 「こんな水に入るための服なんて着ちゃくないよ!!」 「しまった・・・・・・橙は水が苦手だったか・・・・・・  だが、そんなの関係ない!!着てくれるだけでいいんだ!!」 「・・・・・・どうちぇても?」 「どうしても!!」 「うー・・・」 リュードの手にある、みたことのないもの(リュードの言葉からすると) スクール水着を橙に着せたがっているようだが、 ハクレンにとってそれは何のために必要なのかがわからなかった。 ただ、それが魅力的なものな気がしてならなかった。 橙がついに折れたらしく 「・・・リュードがそこまで言うなら・・・・・・  仕方なちゃだよ!うれしくなんかないんだから!」 「わかったわかった。それじゃあ、これ・・・」 橙の言葉に、リュードはあきれたようなうれしそうなどっちとも取れそうでとれない微妙な表情で 手のスク水を橙にわたし、橙はそれを受け取ると、家の中に引っ込んでいった。 「ほんとは巨乳の紫さんとか藍さんに着てほしかったんだけどなぁ・・・・・・」 (さすが、巨乳好き・・・・・・) ハクレンは遠くから呟きを無理やり聞き取るとあきれたように息を吐いた。 (けど、スク水っていったいなんなんだろ?) ハクレンにとってそれは聴いたことのない言葉、大抵を妖怪の山で過ごすハクレンにとって里のことはわからない。 里ではやっていたのか、それとも、リュードがどこかから手に入れたのか。 予測することはできても、本人から聞く以外には真相を知ることはできない。 (たぶん、ボーダー商事あたりからかったんだろう・・・・・・) ハクレンがそう結論つけたところで、家のドアが開き、橙が顔を覗かせた。 「リュード」 「おっ・・・・・・って、なんで顔だけ?」 「そんなの恥ずかしいかちゃらにきまってるでしょ!」 「えー・・・・・・俺以外誰も見てないって、特に気配とかないし・・・・・・」 「そぅかなぁ・・・・・・絶対誰かが見れる気がするよぉ・・・・・・」 橙は周りを気にしながらも、身体を隠していた扉からはじかしそうに頬を赤らめながらでてきた。 「ど・・・う・・・かな?」 「・・・・・・・・・・・・」 その恥ずかしながらも上目遣いで見つめてくる姿はその手のものでなくても抱きしめたくなる姿 (藍の場合だと、一発KO確定)だったがリュードの目はとある一点にいっておりその目は残念さをにじませていた。 「リュード?」 「はぁ・・・・・・」 「にゃんでため息!?」 「え?・・・・・・あ、似合ってるぞ」 「ため息のあとだと説得力にゃいよ!!」 リュードにとって大事なのは胸の大きさで、橙の将来大きくなると予測していても現在目の前にいる橙は貧乳であり せっかく手に入れたスク水も(リュードにとって)グレートが下がることになっていた。 一方のハクレンはというと・・・・・・ (いいなぁ〜・・・) だいぶうらやましがっていた。 橙の姿に見ほれていたわけではないが(少しはあるのかもしれないが) 装着された状態でどのような姿になったのかが判ったことが一番大きく、 ハクレンはこれを椛が着た場合のことを想像しそうになってあわてて頭を大きくふった。 これ以上考えると何か恐ろしいことが起こりそうな予感が頭によぎったからであったがそれは遅かったのかもしれない。 なぜなら、顔を上げた瞬間目の前に弾幕が飛んできていたからだった。 「なっ・・・」 ハクレンはとっさに顔をそむけてさけようとするが完全にかわすことは叶わず、 グレイズするように弾幕にかすった後、その勢いで木の枝から落とされ空中へ投げ出された。 (気づかれてた?!) 空中でどうにか体勢を整えようとしながらリュードと橙のいた場所へ目をむけると、 「・・・・・っ!?」 「・・・・・・!!」 なにか言い争っているようで、こちらに弾幕が飛んできたのもなだれ玉の一つなのだろうと理解したところで ハクレンは、着地を成功させることができずにうけみもどきで勢いを殺して地面を転がった それは、言い争っていた二人が気づくくらいのもので 「「誰(だ)?!」」 幸い、リュードと橙がいるところからハクレンのところまでははなれており 「っ〜・・・・・・」 ハクレンは、痛みに顔をゆがめながらも逃げるために霧を発生させた。 それは、本来なら発生するはずのない時間帯、天気であるにもかかわらずあたり一体を包み込み ほんの数メートル先まで見えなくなるのに時間はかからなかったが、リュードはその中をハクレンのいる辺りに見当をつけて走り出していた。 橙は霧の中を走ろうとして、自分の格好を思い出すと霧の中小屋のあったほうに向くとそちらへと着替えるために向かっていった。 (うぅ〜・・・見られちゃったよー・・・・・・馬鹿ぁ・・・) ハクレンは霧が覆うのと同時に痛むからだをおして霧を突っ切るように、草木に傷か付くのも気にしないで空へと飛び上がった。 「どうにか逃げないとな・・・・・・」 霧が覆っていないところまででるとハクレンは出せる限りの速度でその場を離脱した。 「逃がしたか・・・・・・」 リュードは追おうとしていた相手の気配が遠ざかるのを感じると、追うのをあきらめ霧の中を感覚と記憶を頼りに小屋に戻っていった。 「霧なんか操れる奴なんていたっけな・・・・・・」 そのつぶやきの答えを知るのは、後々の地獄に近い体験の中でだった・・・・・・ 「逃げ切れたー・・・・・・」 ハクレンはリュードが追ってきていないのを確認すると疲れ果てたように地面に寝転がり 大きく息を吐いた。 「後は報告するだけだけど・・・・・・藍さんあれを手に入れてるのかな・・・・・・」 受け付けたからにはどうにか手に入れてくれているであろうが、それでも不安であることには変わりなかった。 「ま、そのときはそのときか・・・」 ハクレンは立ち上がると軽く体の草や泥を払い、小屋へと戻っていった。 後日。 ハクレンとリュードはそれぞれ別の人物に強襲を受けることとなった。 ハクレンは、椛などの助けもあってなんとか切り抜けることができたが、 リュードはその魂を冥界に送られかけたらしい・・・・・・ そして、ハクレンの仕事が大幅に増えたのも必然だったのかもしれない・・・・・・