異変、いや、それはもう幻想郷の危機とも呼べる、もともとは暖かいはずのイベントが終わった次の日。 危機を乗り越えた幻想郷の場所場所で残った傷跡からの復興が始まり始めていた… 永遠亭 入り口 「すみませんナイトメアさん、本当はもう少し見ていてあげたいんですが…」 「いや、鈴仙さんが謝らなくても…それに、この状況ですし…」 周りがあの手この手でくっつけようとしている噂の2人がいたのは永遠亭。 そこに運び込まれていたナイトメアだが、どうやら追い出されたらしい。 周りを見るとかなりの数の人妖が包帯を巻かれたり、苦しげな表情で横たわっている。 昨日の戦いの傷跡、である。 「しかし、これはなにがあったんだか…」 「里の辺りで大規模な戦いがあったらしく…噂だと、結界とかにも傷が入ってるとか…」 「それ、洒落になってませんよ…」 些細なことから始まった異変は、かなりの騒動となってしまったようだ。 さまざまなものが流れ着く地、であるここではそういったものは多いが、 その負の側面が出た、ということだろう。 まさに「幻想郷はすべてを受け入れる、それはそれは残酷なこと」である。 「よう、お二人さん」 「どうやら、怪我は何とかなったみたいじゃないか」 「あ、ヤングさん、小町さん」 そこに声をかけたのは死神コンビのヤングと小町。 比較的軽傷だった小町と天人の血か、回復の早いヤングはどうやら大体回復したようだ。 「いやー、昨日は大変だったねえ、いつもの仕事とは違うけど働いた働いた」 「2日分くらいは働いたかな?」 そんな軽口を叩く2人。本当に回復が早い。 「2人とも…そんなことしてると怒られますよ?」 「あー、それなんだが、ボスも今日は休みにしてくれた」 「あの人、そういうところはきっちりしてるからね〜 厳しいけれど、いいひとよ?」 どうやら、さすがにあの状況、手を回していたようだ。 誤算があるとすれば予想よりも2人の回復は早かったのかもしれない。 「まー、幸いにも仕事が大幅に増えるってことはなくすみそうだし、ね」 「そーそー、あたいが忙しすぎるなんてろくなことじゃない、暇なくらいでいいのさ」 2人が突然忙しくなること、それ即ち……なので、忙しすぎないのはいいこと、なのだが… 「じゃ、今日はのんびりしてくるから」 「じゃな〜」 2人を見ていると、どうしてもちゃんとやってください、といいたくなってしまうのであった。 永遠亭 病室 「まだ、目を覚まさないわね…」 「正直、命があっただけでもありがたい状態だ、別状はないって言うし、待とうじゃないか、レティ」 「貴方も、静かにしていなさい 直撃を受けているのだから…」 件のパルスィの相手をしていた組。 全員軽重あれど闘いによって怪我をしてしまっている。 特に重いのがまだ意識の戻らないミノミン。 それに弾幕の直撃を受けたぜっとん、小傘、とど辺りの怪我もかなり重い。 妖怪のが幸いしてかなり治癒が早いのは幸いであった。 「うー、やみなべさんが心配なのさ…」 「力を吸われてたみたいだからな、また実体化のエネルギーを溜めるために戻っているようだが」 「妖精3人も、まだ戻らない、か…大体心配するだけ無駄なのだけど、やっぱり気になっちゃうわね」 へこたれない性格は空だにも現れるのか、回復の早い小傘が心配するのは自分のことではなく、 あの騒動の後、姿を消したやみなべのことであった。 同時に、あの時吹き飛ばされた妖精たちもまだ、戻ってきていないようだ。 「波風は…正気を取り戻したあの橋姫のケアにつきっきりだし、今は待つしかないよなあ…」 「…長いわね、こういうときは…」 「帰ってきませんでしたー! なんて脅かし方はごめんだわさ」 希望は十分にあれど、やはりどこか不安になってしまう、そんな3人なのであった。 人里 商店街 「よーし、修繕完了!」 「完了!」 びしっ、と修繕箇所をさして言うのは料理人と漸と一緒にいたルーミア。 どうやら、壁にできた穴の修繕が済んだらしい。 「よーし、開店準備だ、ルーミア!」 「あいあいさー!」 どんなノリだか知らないが、ノリよく準備を進める2人。 「お、ここはもう治ったんだな」 「被害が少ないのはいいことね」 「あ、いらっしゃいなのか でももう少し待って欲しいのか〜」 「今はたまたま通りがかっただけよ、また食事なら後で来るわ」 そこに姿を見せたのは霊夢。ランジェロもその後を着いてきている。 なにやら結構な量の荷物を持って。 「それはなんなんだ?」 「お払い用の道具。まだいくらか残党というか、残滓がこびり付いてるみたいでね、さすがに放って置けないわ」 「それにしても量多すぎじゃないか? 結構重いんだぞ、霊夢」 「あなたが持つって言うから、必要量最大限に見積もらせてもらったわ」 「おおい、それはひどいんじゃないですか?」 事件の後始末のようだが、話は漫才方面に逸れていく。 もっとも、2人を知る人には割りといつもの光景であったが。 「それにしても、今日は割引する…というよりも、ほとんどだた同然で料理を振舞うのね?」 「おう! 幸い家はたいした被害もないしな! うまいもの食べてもらって立ち直ってもらわないと!」 「その心意気、見習いたいね」 どうやら、今日はほとんど無償で料理を振舞うらしい。 こんな状況でもそれができるのは、彼は強いのだろう。 「んー、こういうときこそ閣下とかが強いんだけどね〜、今回は、な。  だから、俺みたいなのが盛り上げていかないとな!」 「私も手伝うのか」 「はいはい、ご馳走様」 拳を振り上げる漸とルーミアに呆れたような、感心するような顔でそれを見る霊夢。 「しかし、少し羨ましいな…俺の家なんかほとんど全壊よ全壊。屋根が壊れただけだったから中の物は結構無事だったとはいえ…」 ぼそり、と呟くランジェロ。 「あー、そういえばあんたの家そうなんだっけ」 「さっきも行ったじゃないか霊夢、だからしばらく霊夢のところにとめ」 「蔵でいいならいいわよ」 霊夢に懇願するランジェロにぴしゃり! と割り込んで言う霊夢。 「ほっといていいのか?」 「あー、多分どこかで霊夢が折れるから。最終的には掃除とか蔵の整理を対価に離れ辺りを使わせてもらえるんじゃないかね」 「そーなのかー」 これもまたこの2人にはいつものことらしい。 わかりやすい2人なのかもしれない。 「まあ、一応止めないとな…おーい、お2人さん、痴話喧嘩はやめてお払いしなくていいのかい?」 「痴話げんかじゃないっ! …そうね、あんまりもたもたしていられないわ、行くわよ、ランジェロ」 「くー、俺は諦めないからなー、霊夢」 そんなことを言いながら、2人はまた、町の雑踏の中へ消えていった 「家がつぶれた割には元気なこって…よし、ルーミア、こっちも負けてられないぞ!?」 「おー! なのかー!」 その後姿を見届けてから、2人も店の準備へと入るのであった。 人里 町外れ 「しかし、見事に燃えてしまいましたね…」 「そうだねえ〜、復興に動く人も多そうだし、ここに屋台をだそうかな?」 「それもいいかもしれないわね〜、サービスしちゃうわよ〜」 前から永久、まとめ、ミスティアと、目の前の光景を見て1言。 「いや、永久、貴方はとりあえず家が焼けたことを心配しなさいよ…」 そう突っ込んだのはアリス。 ちなみにここは永久の家の前。目の前のあるのは炭の山。 「いや、とりあえず命が助かったことを感謝しないとなあ、と」 「一気に燃え上がったときに家の中にいたんだっけ?」 「よく無事だったわね〜焼き鳥…じゃなくて焼き猫かしら〜?」 「一応人ですから…」 どうやら、永久は災害発生時に家の中にいたらしい。 本人曰く「ご飯を食べに戻ってた、甘い物は嫌いじゃないけど甘いものだけも…」らしい。 「はあ、中にいたって聞いた心配したのに…」 燃え上がる家の中にまだ永久がいると聞いて心配したアリスだが…どうやら本人ここのところの環境変化で打たれ強くなっていたようだ。 「それでー、どうするの?」 「家の再建ですか? 実は少し迷ってまして…」 「なにを?」 ミスティアの問いに歯切れ悪く答える永久。 その答え方にアリスが突っ込んだ。 「いえ、隣の人が大所帯になってきていまして、それで家を拡張したいと」 「それで、できればどいて欲しい、ってことね」 「僕は僕で一応大変なんですけどねえ」 苦笑する永久。この災害に普通の人はやはり余裕がないのだろう。 おそらく、普段ならもっときちんと交渉してきたであろうことを突きつけてこられてしまい、困ってしまった、というわけだ。 「そうですねえ…この状況なら開いている場所もありそうですし他の場所を探すか…あるいは魔法の森にでも居を構えるのもありかもしれません」 「…そうね、永久にとってはあそこはむしろ居やすい居場所、か」 普通の人には有害な瘴気も永久にとっては常に魔力を供給してくれる存在である。 魔法の森は比較的安全地帯でもあるので、少しそっちも考えているらしい。 「まあ、どうするにせよ、がんばれ、無理しない程度に」 「知り合いの吉見もあるし、しばらくはサービスするよ〜」 「はい、ありがとうございます」 なんとか、ここの人たちも立ち直ろうとしているようである。 大結界、境界付近 「やれやれ、ゆっくり寝ていたかと思えば」 「申し訳ございません、紫様」 「謝ることはないわ、むしろ起こしてくれてありがとうね」 結界の修復をしているのは大妖怪八雲紫。 彼女の目から見ると大小の穴や無数のヒビのような物が結界に入っているように見えた。 「結構、ひどいわね、藍、まだしばらくかかりそうよ」 「それだけ今回の異変は…」 「むしろ、危機、ね」 今回の危機は結界にも大きな影響を及ぼしたようだ。 しばらく、修復におわれそうである。 「原因は、本が力の源を外からも取り込もうとしたこと  藍、貴方ならたくさんの人間の想いがどれだけなのか、わかるかしら?」 「は、なはまかな物より、とても」 「そんなに恐ろしいものなんですか?」 その言葉に橙が無邪気に聞く。 「ここで生まれたものにはわからないかもしれない、しかし、これだけ入っておくわ、橙」 一拍おいて紫が呟く 「弱いといわれる人間だけれども、時に妖怪なんかを遥に凌駕する力を持つわ、そう」 「人間を侮らない方がいいわ、もちろん妖怪を下に見る必要もない どちらも、また強いものよ」 「…難しいです、紫様」 「だんだん理解していけばいいんだ、橙。今はこのことを覚えていればいい」 「はい!」 困った顔で言う代々を励ます藍。 そのほほえましい光景を紫は笑みを浮かべて見つめた。 「さあ、修復を終えてしまいましょう、藍、サポートは頼むわ」 「仰せのままに」 そして、結界の修復は進む… 「これだけだと…外から何か転がり込んでるかもしれないわね…後で調べた方がいいかしら」 紫の小さな呟きを残して。 紅魔館 「…見つけた、これが打開になるはず…」 「熱心ね、パチェ」 封印の本を熱心に見ていたパチュリーにレミリアが話しかける。 「ええ、私が直接原因でないとは言えここの本が原因でああなったとなるとばつが悪いわ」 「律儀ねえ、関係がないならほおって置けばいいのに、で、いいことは見つかったのかしら?」 そういいながらも身を乗り出してパチュリーに聞くレミリア。 結局、2人とも放っておけなかったのだろう。 「ええ、実は…」 そして、2人の話が始まり… しばらくの地、行動に移すために、2人が動いた。 結末を少しでもよいものにするために。 あとがき 終わりが中途半端ですが、大体想定が9〜10の間程度のためです。 被害は大きくても、そこから立ち直れるのも人の強さでしょう。 この後のEDは本編で。 by永久