まだ、なんとなくわだかまりがあるのか、永久は少しはなれたテラスの方に足を向けた。 ここまでくるとホールの喧騒からは遠く、静かな中に少し冷たい風が吹く。 「ふう」 テラスから魔界の風景を見つめる永久の後ろに、1つの影が見えた。 「永久さん、ですね?」 「はい?」 振り返った瞬間だった。 体の異物感、瞬間に走る激痛。 認識できたときにはもう、遅かった。 体から何かが抜かれる感触と共に、辺りに鉄臭い臭いが広がっていく。 「余所者の分際で、あの人たちに近づくからいけないのですよ…」 最後に聞こえたのは、そんな声だった。 「そこのやつ! なにをしている!」 「ちっ、警備か!」 そういうと男はテラスから身を翻し、逃走した。 「あなたたちは彼を追って! あなたは私と一緒に手当てよ!」 「「「はい!」」」 メイドさん(すきまにヘッドハンティングされた この班の班長さん)の指示によって彼らがわかれ… そして、辺りに静寂が訪れた。 事件を示すものは、まだ片付けられていない、床の赤い染みのみ。 「すきまさま」 「ん、どうかしたか?」 「永久様が、何者かに襲われ…亡くなられました」 「っ!」 その報告に声を上げそうになるすきま…だが、それを噛み殺す。 「発見後、処置はしたのですが…」 「判った、このことはまだ周りには言うなよ」 いつになく、真面目な表情ですきまが言う。 「…たけみかづちさまに相談するか」 「…そうか、判った。対処はしておく」 「このことは…」 「…夢子には伝えておく。他には出さないようにな、特に…」 「ユキとマイ、それからアリス、でしょうか」 「…冷たいようだが、いまは駄目なんだ」 「…わかっています」 「あら、永久は?」 「ああ、体調悪いって、自室で寝てるみたいだ。今は寝かせてやってあげてくれ」 「もう、こんな時に…」 「何とかパーティは終わった、か」 「…すきま、このあと…」 「俺とたけみかづち様でがやるから心配するな」 「ごめんなさい…」 僅かなぎこちなさがありながらも、すきまも夢子も優秀な従者。 たけみかづちも事態にお茶らけてはいられなかったようである。 何とか、パーティは終わった。 パーティ後、たけみかづちが皆を集めた。 普段なら雑談の1つも飛び出すのだが… 重苦しい、そんな雰囲気がそこにいるみんなの口を塞いでいた。 「ここに集めたのはほかでもな、永久のことだが…」 言うのはためらわれたのか、1拍おいて、その言葉を放つ。 「永久が、何者かに殺された」 ぱさ やわらかいものの落ちるもの。 それは、アリスが嫌な予感から、無意識に抱きしめていた人形の、落ちた音だった。 「嘘、よね…」 呟くような小さなその声に答えたのは、静寂と首を振るたけみかづち、すきま、夢子の姿だけ。 「はくどう兄ちゃん…永久兄ちゃん、死んじゃったの…?」 「…」 不安そうに言うユキと何も言わず抱きついてくるマイをはくどうは強く抱いた。 その光景が、今のことが現実である、と言うことを否定できないものとしてしまった 「そん、な…」 ぺたり、そこにへたり込む。体に力が入らなかった。 悲鳴を上げることもできなかった。 ただただ、事実が心を多い尽くしてきた。 ただ、涙が止まらなかった… そんな姿に、すきまも夢子もたけみかづちも、声もかけられず、やりきれなさを抱えるばかりだった… 魔界での楽しいパーティ。 表向きは楽しく、その裏に、取り返しのつかない犠牲になった者を出して終わったのであった。 1人の少女の心に深い傷をつけて… あとがき BAD END 1 もうちょっと慎重に行動しよう! どうしてこうなった。練習かねてBAD作った結果がこれだよ! 蛇足なおまけ …確かに、そんな夢だった。 起きたとき、頬に冷たいものを感じて、すごく落ち込んだ気分だったのを覚えている。 こんな夢だけ鮮明じゃなくてもいいじゃない、と思った。 「あれ、永久、どこ行ったんだ?」 その言葉を聴いて、永久がいつの間にかいなくなっていることに気がついた。 同時に、少し怖くなった。 夢とほとんど同じ状況、まさか、正夢なのではないか、と 同時に、目を離したことを後悔した。 そして、弾かれるように、彼を探し始めた。 会場を普通に歩いていた彼を見つけて、ほっとした。 夢のようになっていなくて良かった、と。 でも、そんなこというのも癪だ。 ここは、普通に見つけたように… 「あ、永久。 どこに行ってたのよ、行き成りいなくなって」 心配したんだから。 蛇足なあとがき 4Aに続く。 やっぱりハッピーの方がすきなんだ。 ご都合主義全開でも。