「・・・」 「・・・」 ・・・空気が、重い。 周りには誰もおらず、助けを求めることも出来ない。 正直、逃げたい。 「・・・あのさ」 「・・・何?」 明らかに怒気を持った返答。恐ろしい。 「えーと、何をそんなに怒ってらっしゃるのでしょうか、総領娘様」 「・・・分からない?」 ああ、分からないとも。 こんな重苦しい空気に包まれた部屋に二人きりでいて、 しかもこっちは正座、向こうは要石に座り込みこちらを見下ろす形である。 どうしてこうなった、と言うほかない。 「・・・本当に、分からない?」 「あ、ああ」 ・・・心なしか目に涙が浮かんでいるように見える。声も若干震え気味のような。 「・・・ううううう」 唸っている。 まずい、これは非常にまずい。 間違いなく・・・爆発する。 「左京の馬鹿あああああああああああ!!」 「うわああああああああああああ!?」 そこそこの広さを誇る(と思いたい)我が家を震わせるほどの叫びを発した後、 突然オーロラが現れたかと思ったら目の前には緋色の気の塊。 ―――全人類の緋想天。 彼女の持つスペルカードの中でも最大級の威力を誇る物を全力でぶつけてきたのだ。 不意打ちの如く放たれたそれは当然この身に直撃。 軽々と数10mは飛んだ挙句に浮いてる間に何回転したか分からないぐらいの錐揉み回転を見せた上 派手に落着した後も10mぐらいは転がったんじゃないかな。 それぐらいひどかった。 あのオーロラ・・・多分『霧雨』だったな・・・ 当然まともでいられる訳もなく・・・と思ったらケガ一つ無かった。丈夫でよかった。 ともかく、あとで事情を聞いたところ、 「私が投げたときだけやたら打ってるのは何なのよ、しかも私が降りてから打たなくなっちゃって」・・・とか。 どうにも分からない。 「お前のことだから、ああ来るんだろうなってのはうすうす分かってるんだよ。 それに・・・一時の、しかも終わった勝負にあーだこーだ口を挟むのは大人気無いんじゃあないのか?」 って言ってやったらさっき以上に目に涙を浮かべて顔を赤くした。スペルカードは来なかったけど。 「今度は絶対ぎゃふんって言わせてやるんだから」 「もう言ってもいいような状況ならさっきあったけどな」 「野球で、よ!」 「おーおー好き勝手言いなさる。抑えられるもんなら抑えてみろ。撃ち返してやるから」 ・・・なんだかんだで、今の状況を楽しんでる自分がいた。