ある者はロマンチックな幻想を胸に秘め… ある者は訪れる現実に一律の希望と不安を抱き… ある者は絶望の淵に立たされて嘆く等……… 外の世界では様々な思惑が交差しているであろうバレンタイン当日。 幻想郷の中心部である人里の広場では 人妖幽鬼神と全く種族を問わない様々な人種が露店を並べていた。 もちろん露店に並ぶ売り物はチョコレート。 中にはチョコレートと呼ぶには無理がありそうなやばげな雰囲気を漂わせるモノもあるが、 どこをみてもチョコチョコチョコっともはや人里は完全にチョコレートの香りに包まれている。 「ふっふっふ、最初の頃はこんなのバレンタインではないっと憤慨していましたが、  今はもうサイコーってカンジーです。幻想郷に来てよかったー!!」 「本当、チョコってこんなに美味しいものだったのね」 様々な種類のチョコを頬張りながら、至福顔で露店巡りをしているのは早苗と天子。 二人とも現人神と天人であり、住む世界が少々違うので接点はあまりないのだが、 お互い年頃の女の子ということか、甘いモノに目がないらしい。 スイーツ好き同士、たちまち気が合って連れの左京や妖夢、とどを半分置き去りにしながら そこらの店をかたっぱかしら梯子している。 「よし、早苗!次はあの店に突入よ!!」 「さーいえっさー!!」 「あの、天子。ひじょ〜に言いにくいんだけど、あの店はやめた方が」 そんな二人のスイーツを止めるべく、 荷物係として両手一杯のチョコを抱えた左京が遠慮気味に声をかける。 だが、そんな程度で止まるわけない 「何よ左京!私はあそこに行きたいのよ!!」 「そうですよ、乙女の夢を抑制しようだなんて馬鹿なの?死にたいの?マジぶち殺しますよ。  妖夢さんも同じ乙女として何か言ってやってください!!」 「え、私が…ですか?!」 いきなり話を振られて驚く妖夢。 彼女もやはり年頃の女の子なためチョコの魅力には勝てないらしく、 早苗や天子ほどではないにしても手には色とりどりのチョコを持っている。 なので、流れからみれば妖夢も早苗や天子の話には同意してくれそうが、 今回はそうならなかった。 「ごめんなさい!あの店に関しては私も左京さんの言うとおり避けるべきだと思います!!」 早苗と天子が向かおうとしている店……に何か思うところがあるのか 申し訳なさそうにしながらも必死に否定した。 普段とは違うその態度さすがの早苗と天子も驚いたが、この程度ではまだ止まらない。 「むー、じゃぁ冬月の方はどうなわけ?やっぱりあそこのは止めるの」 「えっ、俺……そ、そうだな、やっぱり俺もやめるべきだと思う」 今度は妖夢のとなりにいた諒を味方に引き込もうとしたが、諒も否定した。 しかし、諒は平静を装っているがはっきりとしない態度が逆に怪しく感じられる。 そんなわけで二人の返答は抑制どころかむしろ好奇心の方が刺激されたようだ。 「よし、こうなれば何がなんでも突入よ!!」 「お、おい天子。さすがに二人が止めるんだ!何かやばい理由があるに決まってる!!  せめて話だけは聞こう、な」 「う〜ん、そうですね〜左京さんの言うとおり話を聞いてからでも遅くはありません。  さぁ、お二人がたキリキリ白状しなさい」 なんだかものすごい威圧的に問いかける早苗。 その態度に天子や左京は、『お前はいつからそんなに偉くなった』と思ったが お祭りということでテンション大幅上昇中ということもあり、特に気にせず受け流した。 しかし、早苗から尋問中の妖夢と諒は受け流せなかった。 妖夢も諒も顔面が蒼白となり膝がガクガクと震えてはじめる。 「あの〜妖夢に兄さん、二人ともあの店…  漸さんの『ピカンテチョコ餃子』やはくどうさん『キムチ風味ラムネチョコエッグ』に何か嫌な思い出でも?」 その様をさすがに見かねたのか 今まで会話に参加していなかったとどが不思議そうに問いかけた…が、その言葉はタブーだったようだ。 「いやぁぁぁぁぁ!!!!もう『ピカンテピラフ(激辛)』なんて食べたくありませーん!!!」 「うぉぉぉぉぉぉ!!!!もう『激辛キムチラムネ』だけは勘弁してくれぇぇぇぇぇ!!!」 どうやら二人とも漸とはくどうの料理に余程のトラウマを植えつけられているのか もう恥や外見を全て捨て、なりふり構わず土下座して必死に許しを請い始めたのだ。 「なんだなんだ?!何事だ!!」 「痴話げんかか何かか!?」 「弾幕ゴッコの始まりか?!」 「チョコウマー(゚∀゚)」 さすがにこの態度は当事者どころか通りすがりの人も含む全員が驚いた。 一体何事かと周囲が一斉に足を止めて振り返る等して、当事者達は一斉に注目の的となった。 「えっと……兄さん達?」 気まずい雰囲気ながらも、一応トドメとなるタブーを放ったとどは責任を持って話しかけるが、 二人は完全錯乱しておりただ狂ったかのように泣き叫びながら悶絶するのみだ。 到底話が聞ける状態ではない。 しかし、二人がここまでしたのだから早苗も天子もさすがに無反応ではなかった 「ふっふっふ、ここまでの反応魅せられたら仕方ないわね」 「そうですね、天子。こうなれば……」 「もしかして逝くのをやめて…くれるわけないよな」 「「もちろんです!!!こうなれば是非とも撃沈しましょう!!!!」」 「ですよねー」 早苗はともかく天子とは付き合いが長いだけあってある程度の予測はしてたが、 本当に予測通りの行動を取る二人。 「ほらほら、乙女を二人残すなんて野暮なまねせず逝きましょう」 「了解しました総領娘様、どこへでもお供しましょう」 天子に手を掴まれて引っ張られる左京はため息を一つ付きつつ、あえて敬語で接した。 左京のささやかな嫌がらせだ。 もっとも、テンション大幅上昇中の天子には全くもって効果がない 「そういうわけでとどー、俺は二人に付いていくからお前は妖夢と冬月を見てやっててくれー」 「わかりましたーあたいが責任持って介錯しておきますから、安心してください」 「殺すな…いや、冬月だけは殺してほしいなんて少し思ったりもするが殺しては駄目だ!  とにかく、命があったらまた会おう。主に白玉楼辺りで」 一体どこまで冗談なのか、わからない会話をしつつ3人を見送るとど。 その後あの3人は一体どうなるのかは…まぁ神のみぞ知るという奴だが とどはまだ放心中の二人をどうしようかと考え始めた。 「とりあえず、ここは目立つので隅の方にでも…」 先ほどまでの物騒な発言とは裏腹に、割りと無難な選択を取るとど。 二人同時に担ぐのはキツイものの、まぁとどの種族は半霊だ。 自分の片割れである半霊にも支えてもらえれば二人を抱え込めそうだし、いざとなれば右腕の義手… 河童達の手を加えた特別製の機械義手をフルモードにすればなんとかなるだろう。 そう思って放心中の二人を抱えようとしたその瞬間!! 「こらーそこの半霊!こんな騒ぎを起こすなんて一体何やらかしたんですか!!  場合によっては即刻有罪判決です!!」 「うわっ!ごめんなさい!!」 いきなり飛び込んだ声にとどはびくっと驚いた。 しかも驚いた拍子に二人を取り落としてしまい偶然にも仰向けの妖夢の顔面に うつむけとなった諒の顔面が折り重なる結果となったのは余談だが、 とどはこの騒ぎを起こした発端の一人として罰せられると思った。 とはいえ、二人を残して逃げるわけもいかず覚悟を決めて後ろを振り返ると…… 「よっ」 大カマを携えたヤングと小町が立っていた。 「はっはっは、今の声ボスに似てたかい」 「似すぎですってば、もう心臓に悪い…」 ごまかすようにして笑う小町とは裏腹にまだ心臓がバクバクとしているとど。 その様はまさに効果は抜群と言ったところか 仕掛けた方としても気分いいのか、小町とヤングはしばらく笑っていた。 そうこうしているうちにさすがに通行人達も興味をなくしたのか それとも別の騒ぎが発生したのか、 気付けば辺りの人だかりはまばらになりはじめる。 「……まぁ冗談はさておいて、ここから本題になるんだがね」 ある程度笑ったところでふと小町は真面目顔になる。 とども笑われた事に関してはあまり気にしていない様子だ。 ヤングに手伝ってもらいながら放心中の妖夢と諒を抱えつつ小町の話に耳を傾ける。 「……この時期に現れる“例の怨霊や亡霊”の動きなんだが、今はどうなってる?」 「聞いての通り、数日前にボーダー商事の重鎮であるナイトさんが竹林で襲われて以来  各所でちらほらと“奴等”に襲われる事件が散発しているみたいですね。  なので人里周辺の防衛網や取り締まりは多方面の協力も得て例年以上に強化してます。  もちろんこれらはヤングさんも知ってるんでしょうが」 「会議に参加してたから当然知ってる。だが、ここ最近急に“あいつら”の動きが活発になってるぞ。  ぶっちゃけ聞くが、そんな警備で大丈夫なのか?」 「それについては統括してる慧音先生や暁さんに聞かないとなんともいえませんが……  ヤングさんもそれに気付いている辺り腐っても死神なんですね」 「ほっとけ。とにかくそちらの姫様はどう言っていたわけだ?何か心当たりあるんだろ」 「ん〜今年は規模が大きくなったみたいなので、多少は仕方ないと言ってました。  もちろん、真実かどうかはわかりませんよ。なにせゆゆ様ですから」 真面目なのか不真面目なのか、判別が付きづらい会話を続けるとどにヤング。 とはいえ、二人とも冥界と彼岸に属しているとはいえその立場は下っ端もいいところだ。 当然下っ端なので情報も確信に付くようなものは教えてもらえない。 だが…… 「安心しな。あたい等もボスの映姫様やディスト様から詳しい事は聞かされていない」 「「自信満々で言うなー!」」 下っ端より多少はマシな立場である小町の仕事ぶりからして 下っ端だから情報がもらえないっというわけでもないようだ。 しかし、仕事に関しては完全な無責任というわけでもなく再び真面目顔になる。 「それで再度聞くけど亡霊姫からは本当にそれだけか?  なんとなくまだ何か知っているような気がするんだが」 「他にですか……他は相変わらずチョコの事ばかりでしたけど……  あーそうそう!!今年はブラックガーディアンのチョコが台風の目になりそうだって言ってました」 幽々子は何を思ってそう言ったかはわからない。 もしかしたらただ興味本位に食べたいだけなのか、それとも何か裏があるのか 本当に何もわからないが言った以上何かの意図はあると思った方がいい。 その辺りは小町もわかってるらしく、小町は即座に行動へと移る。 「よし、ブラックガーディアンだな。  なら、あたいはそちらでさb…ではなく情報収集しておくからヤングはとどの方手伝ってやりな」 「はいはい、わかりやすうございました。全く、小町さんも腕前は優秀なのにさぼり癖さえなければ…」 返事する間もなく、その場を立ち去る小町の後ろ姿にヤングは困惑しつつも、 それ以上はとくに何も言う事はしなかった。 その辺りは自分もさぼり癖があるから同類なのかどうかはわからないが まぁ部下からの信頼だけはあるようだ。 「ではまぁ、こちらは二人を休ませるために人ごみを避けて隅のベンチへ移動しましょうか  その後様子を見て末期と感じたら永遠亭の先生に見せる方向で」 「了解っと」 いまだ放心中な妖夢と諒をそれぞれ分担して担ぎ、隅の方へと移動するとどとヤング。 その最中に漸とはくどうが構えた露店の方で二人がよく知る誰かの断末魔の叫びが響いたような気もしたが 二人はあえて聞かなかったことにしつつ、その場を後にした。 ・・・ ところ変わってこちらはブラックガーディアンが出店している露店。 こちらでは例年通りであれば人はまばらで大量に押し掛けるような事態にはならないはずだ。 そう、あくまで例年通りであればの話で今年は違う。 「うあ〜〜凄い人だね」 小町はブラックガーディアン店前で構えている露店に出来た人だかりをみてうんざりとした表情になる。 一応とどから聞いた情報を頼りに店関係者のりるるや姫子から話を聞こうと思ったが ここまで人が多いと到底捕まえられそうにない。 こうなれば人が少なくなるまでどこかで暇をつぶそうと考えたがそうはいかなかったようだ。 人ごみの中に小町と同じく鎌を携えている同僚がいたからだ。 「おや、小町じゃないか。一体何しに此処へ?」 「人が悪いなー大方シバと同じ理由さ」 同僚であるシバも小町に気付いたらしく声をかけてきた。 一応無視して逃げる選択肢を取ってもいいが、 逃げたところで何もやることないから仕方なく仕事を続行とした。 「やっぱりそうかー  なんでも今回のブラックガーディアンのチョコは凄いモノが出てるらしいって聞いたんでな」 「凄いモノ?それって具体的にどんなものなわけだい」 「なんだ、知らずに来てたのか。  今年は定番であったいちごチョコのいちごをなんらかの方法で巨大化させたらしいぞ。  その証拠にみてみな、あの巨大ないちごを」 そう言われて小町はブラックガーディアンの買い物を済ました客を見てみると 通常の3倍を超えた5倍はありそうな巨大いちごをチョコでコーティングしたモノをかじっていた。 最初見た時、それらはいちご型に固めたチョコだと思っていたが……… 「あれ、本物のいちごだったわけか!」 「その通り。なんでも今年はぜっとんとミノミンが栽培してた冬用のいちごを  夢美教授一派とにとりや銀城達河童のテクノロジーで巨大化させたらしい。  俺もその事をさっき夢美教授達本人から聞いてきたところで話の種にと思って」 「結局のところ、ただの興味本位だったわけか」 「それ以外何があると」 あっけらかんに答える野次馬根性丸出しなシバに小町はガクッと肩を落とす。 真面目に職務をこなそうとした自分が少し馬鹿らしく思えた。 「ちなみに小町はなぜここに来たんだ?  それと、ヤングも見かけないんだがもしかして喧嘩でも」 「いや、ヤングは半霊達と積もる話があるらしいから別れたのさ  というのも、とどから冥界のお嬢様はブラックガーディアンのチョコに目をかけていると聞いて…ね。  一足先に視察へと来たってわけさ」 「冥界のお嬢様……幽々子が目をかけた…か」 「あぁ、目をかけたそうだ」 その話を聞いてシバも小町の言わんとした事がわかったらしい 浮ついた気分から打って変わり、真剣な顔つきになる。 「一応確認取ってみるけど、この周辺の様子は?」 「相変わらず表向きは華やかだが裏では怨念というべきか邪念というべきか、  そういう類の負の空気が隙を窺うように渦巻いて嫌な雰囲気だ。  とくに一番酷いところは……」 そう言いつつ、シバはある方向に目を向けた。 その方向には小町にも心当たりはあるらしく、同意するようにうなづいている。 「確かにあそこが一番酷いな。酷いんだが……酒場『スカーレットバー』はそういうところじゃないか」 「だよな。あそこは持ち主自身が負の力の象徴みたいな存在だし除外はしておこうと思うが………小町」 「わかっている、現れたようだね」 そんな話を続けているうちに何かを察知したらしい。 二人の目が急に鋭くなる。それに伴い、周りが騒がしくなり始めたのだ。 一体何が起きたのか、とりあえず二人はその騒ぎの中心と思わしき所 つまり露店の店前へと目を向けるとそこでは………… 客同士でトラブルがあったらしい。 何か言い争っている言葉が聞こえてくる上、客達は大急ぎで非難し始めている。 そのトラブルを起こしたであろう客を確認するために背伸びしたところ……… 「「ぶふっ?!」」 あまりの場面に思わず噴き出した。 そこでは酒を飲んだ中年の冴えないおっさんがほんの小さな子供にやつあたり気味のような罵声を浴びせている。 通常であれば、中年の冴えないおっさんを敵として即刻排除しにかかる行動がお約束だろう。 しかし、この場合通常のお約束は成り立たない。 なにせ、その罵声を浴びせられている子供が………… 紅魔館の悪魔の妹、フランドール・スカーレットだからだ。 「あのおっさん、いくら酒の勢いがあるからって見境なさすぎだ。死神の目で見るまでもなく死んだねこりゃ」 「こらこらそこの死神達、勝手に殺さないの」 いや、一応連れと思われる霜月教授がフランをかばうようにして宥めてはいるのだが 誰がどうみてもおっさんに死という絶対普遍の容赦ない制裁が加えられるのは時間の問題。 という事態なのにそんな小町の言葉を否定するかのような声が後ろからかかった。 一体誰かと思って振り向けば、そこにいたのは紅魔館の動かない図書館の魔女ことパチュリーとおまけがいた。 「なんだ。パチュリーに……そのとなりのちっこいのはハニーだったっけな?  片方だけでも外に出てるなんて珍しいのに二人揃ってだなんて明日槍でも降るんじゃないのか」 「いやいやシバさんよー二人一緒に出るってことはあれじゃないか、あ・れ」 「あーアレか、あれだよな。小町さん」 「……おほん」 「???」 二人のにやにやとした視線を受け、気まずくなったのかパチュリーはごまかすように咳をするが ハニーの方は死神達やパチュリーの態度の意味がわかっていないようだ。 アホ毛の形を模したチョコをかじりつつ首をかしげている。 そんなハニーの態度にパチュリーは何か言いたそうな顔を浮かべたが、 今はそういう時ではないので思い直して語り始める。 「まぁとにかく、私達の事よりまず妹様を止めにかかるから手伝いなさい。  連れの霜月教授が妹様を抑えるのにも限度があるし、もし限度を超えたら……」 「超えたら……?」 「語るまでもないわ。妹様がぶち切れるどころか周辺に漂っている例の負の感情に支配され、  破壊衝動の赴くままに暴れて人里は地獄絵図と化すわ」 確かにフランが見境なく暴れたら語るまでもなく地獄絵図の出来上がりだ。 一応フランの羽はリュックの飾りに見立てて吸血鬼であることをごまかしているが、 フランの吸血鬼としての力を発揮したら一部の客、 主に幻想郷での異変に慣れていない一般人達はパニックを起こすだろう。 いや、フランが暴れるまでもなくおっさんの雰囲気が素人目でみてもおかしいのですでに半分パニックだ。、 「しかし、さっきの発言からみるとパチュリーも事情は把握している方なのかい?」 「もちろん。本来は妹様の面倒だけを見たかったのだけど、関係者から事情を聞かされちゃったんだもの。  ここまできたら、今までみたく裏でこそこそせず表で堂々と事を起こすしかないわけよ。  ただし、一人で行動してたらちょっと……なのでハニーを連れてだけど」 最後の言葉の一部が聞きとれなかったのだが、とにかくこの状況ではもう穏便に話を納める事は難しいと判断したようだ。 パチュリーは本を開いて魔力を練り始めている。 その様に小町とシバはその聞こえなかった部分を聞き返して茶化せそうな雰囲気ではないと判断し、 はぁっとため息を付きつつ鎌を構えて臨戦態勢へと入る。 「………小町。こうなればもう付き合うしかないぞ」 「だな、不幸にも周囲で妹様と渡り合えそうな連中といえばあたい達しかいない」 「悪いわね。私や霜月教授は接近戦に自信ないわけだし、後で紅魔館のブランデーチョコケーキを奢らせてもらうわ」 「鉄の味がしみ込んだチョコだけは勘弁してちょうだいよー!」 そう一言加えつつ、宙を舞いつつおっさんへと飛びかかる小町。 なんだかんだ言っても切り込み隊長として死地に飛び込むをところは頼りになる。 そんな小町に即発され、続けてシバとパチュリーも宙を舞って援護へと向かう。 そしてその二人から少し遅れ…… 「なんかしらんが弾幕ゴッコかー?なら久々に参加しよかー」 事態を全く呑み込んでいないハニーであったが、荒事の気配だけは感じ取ったらしく 興味本位だけで二人に続いた。 そうして、本来ならただおっさんを軽く絞め上げて早々に終わらせるだけが目的であったこの戦闘だが ハニーという横槍が加わった事により………… 場がさらに荒れてしまったのは言うまでもない? 続く