あれから待つこと幾分…
外ではすっかり月が高く昇り、完全に宵闇が支配する時間帯となっていた。
客も全て入りきったらしく店内のテーブルはほぼ全て埋まっている。
しかし、待てども出てくるのはお燐が運ぶ酒(Y缶)とおつまみ(焼き肉)だけで肝心のメイン料理が運ばれてこないのだ。
「本当に遅いな」
あまりの遅さに暁はY缶を片手にぼやく。
すでに我慢の限界が来たのか、一部の客からぶーぶー文句垂れる声が聞こえてきた。
中には退屈を紛らわすため虹河三姉妹のライブに上がりこんでそのまま楽器を拝借してのカラオケ大会へと突入…というか、
楽器を武器にしてのロック風乱闘ライブになってるようだがまぁいつものことなので気にしない。
ついでに、楽器が壊される度に悲鳴を上げている楽器屋の店主もいるがそれに関しても気にしない。
さらに、例の殺気をまき散らしている狐も未だ燃え続けていることも気にしない。
ただし、棒のようにポッキリ折れやすい体質だという噂の半妖と月兎がいちゃいちゃしてることに関しては気にしまくってるが……
「皆さん、長らくおまたせしましたー」
そんなこんなで適当に時間を潰してる中、ふいに響き渡る声。
その声に導かれて振り返るといつのまにかライブの舞台にルーミアが立っていた。
また、ルーミアのライトアップに合わせて酒場の灯りも次々と落とされていく。
「本日は『ルーミャッHフェスティバル』に来ていただきありがとうございま………」
「ξ・∀・)ーーーーーーーー!!!!!!?」
ルーミアの声をさえぎるかのようにあがる奇声。
その声の正体は楽器の店主である雷音だ。
まぁ彼にしてみれば貸し出した楽器を次々と壊されるなんて損害以外なんでもないのだが……
叫ぶタイミングがまずかったようだ。
ルーミアはゆらりと雷音を睨みつけ………
,. -ー- 、__
,' 'y´
i レノノハノノ) そこのξ・∀・)…
(( ハルi ゚ ヮ゚ノリ
と),)∞と) ))
,ノ::i:/:::!フ⊃
`''i_ノ'´彡
)、._人_人__,.イ.、._人_人_人__,.イ.、._人_人
<´ 五月蠅いから黙れやぁぁぁぁぁぁぁ! >
⌒ v'⌒ヽr -、v−ヽ,r v'⌒ヽr ' ⌒v−ヽ,r v'⌒ヽr '
,. -ー- 、__
,' 'y´
i レノノハノ) _ _ .' , .. ∧_∧
ハルi ^ヮノ_- ― = ̄  ̄`:, .∴ ' ( ) めるぽーーーー!!!!
, -i';;i ̄ __――=', ・,‘ r⌒> _/ /
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,く:::::::::.:;ノ' | / ノ |
_..-'`'-.,;;;;:イ ) , ー' /´ヾ_ノ
r'i :/:::/::::::\ / , ノ
゙ヽ):/::::::/::::::`、 / / /
, 'ゝ,.-=-;、:::::| / / ,'
/ ノ `ー'^┘ / /| |
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ルーミア怒りの右ストレートが炸裂。
その拳を顔面に食らった雷音は撃墜音と共に窓を突き破って外へとはじき出された。
,.へ _,,.. --─- 、..,,_
` ̄ ,. '"´ `'ヽ.,
l> ./ ヽ. ,ヘ
/ / 、 ヽ/∧',
,' i / ;' /i , ヽ.r‐┐///、_
i i /|‐ハ- | / | /_|_ Yニi' ニ二7/
| ノ ! ,アi''`ヽ!/ |/ | ` i i___,!`"''r-' さぁて、気を取り直して続きといくかー
レヘ ハi ト リ ァ;‐-'!、ハ | .| |
,ヘ .7 ` ヽ-' ト ハ| / / |
/ ,ハ "" ' !、_ン ノ|/|/ |
,' ヽ、 rァ--、 ,,,,,´/ . | i. |
|へ/| / \ _ノ ,.イ i | | |
レヽ, /´ i`''ーr‐ァ ´/ / ,ハ|、 ハ ノ
,'ヽ.i::::::::|Y___/!/レ'::/ヽ. イ
| |::::::,レへ/ /::::::/ _,.':,
', |:::::LOO___/::::::::i / ',
',.|:::::::〈/ヽ〉:::::::::::::::',/ |
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____ _k、:::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::;ゝ、 /
rノ´__;;:::二ニ=-:>、!__::::::::::::::::::::_;:イ、ヽイ
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r/::::::::-‐''"::::::::::::::::/:::::::,':::::::::::|:::::::::::::::::::::',:::::::::ヽへ
そんな雷音のことなんて露知らず、くるりと何事もなかったかのように振る舞うルーミア。
そのギャップの差は激しいなんていうレベルじゃない気もするが………
それ以上に今のルーミアを怒らしたらまずいということで、乱闘を行っていた連中も含めて皆大人しくなっていた。
「えっと…皆さんおまたせしましたのかー。
幻想郷1のシュフである草薙漸の料理が完成しましたのでどうぞご堪能くださいましー」
そうして房の方へ右手を掲げるルーミア。
その先には巨大な鍋を積んだ猫車をえっちらおっちらと引いているお燐とミスティアとマットーメの姿があった。
それを見て店内はおーっとどよめきと拍手が巻き起こる。
「それでは、今から主催者でシュフの漸から挨拶をしてもらうので皆静かにするのかー」
っと、いつのまにかとなりに立っていた漸にマイクを渡すルーミア。
本当、一体いつの間に…と思うが、まぁ店内は暗いので暗闇にまぎれて移動したと思えば納得するだろう。
マイクを受け取った漸はゆっくりとした動作でマイクを口元まで近づける。
漸の口から一体どんな言葉が飛び出るのか……
大半は定型文的なお約束なことしか言わないだろうと思ってはいたが、一応皆騒ぐことなく律儀に大人しくしていた。
その理由は雷音の二の舞となりたくなったからだろう。
そんな中、漸は周囲を軽く見まわす……ことなくゆっくり口を開く。
でもって、その口から飛び出た言葉は……
「ぼぃんぼぃんデろりこんわーお」
………
しばらく酒場内に沈黙が支配した。
一体その言葉に何の意味があるのか……
いや、そもそも意味なんてあるのかどうか………
,.、
_,,... -─-- 、.,_ /ヽ,ヽ,
,.. '"´ `ヽ/::::/ヽ、>
/ /:::::::::/ヽ.
,.' , ヽ!`ヾイ:::::::::::!
,' / / __ ! ./ | /|__」_ ',___!/Y´i ̄ ………それだけなのかー?
i. ,' 7´i /|/ !/ ! ノ` ! | : !
i ! /ァ'´`ヽ ァ'"´ `ヽ! |. |
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.レヘレ',! ` - '/ ! |
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,' ト、, ! ) /. / ! !
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.レ'´ レ'ヽ. .,.イ〈 i____,.ノ ,|/レヘ/ V
`7 i::ヽレム /:::::::/`ヽ.
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さすがにこの言葉はルーミアも戸惑ったようだ。
しかし、漸はそのままルーミアにマイクを渡して立ち去ってしまった。
その様にルーミアどころか客達も違和感を覚え始めた……が、これも演出なんだろうということで無理やり納得した。
「ま、まぁ〜そういうことで料理を楽しむとするかー」
一体どういうことなのか…
少なくともルーミア自身もわかってないだろうが元々頭が弱いルーミアにそこまで期待するのは酷だ。
それに、ようやっとできたメイン料理の方が気になるということで客は全員楽しみと期待に満ちた表情でトレーナーの方を見る。
料理の方はすでに運びだし完了してたようで中央のテーブルにどかんと陣取っている。
ただ、まだふたがされているので中身がわからないが、
ミスティアが空を飛びつつ蓋の取っ手を掴んでるので間もなくわかるだろう。
そして…
ミスティアの手によってパカッと蓋が開けられた。
その瞬間………
「うわっ!」
「くっさ!!」
「なにこれ〜!!」
蒸気とともに漂う刺激臭に思わず悲鳴をあげる客達。
とくに鼻のいい獣系の妖怪達は致命的ならしく、椅子から転げ落ちてのたうちまわっている。
「全く今回も強烈な臭いが出るものだしてきたな」
「暁さん、今回もって…毎回こんな感じなんですか?」
強烈な臭いを発する料理を平然と見つめいる暁に永久は問いかける…が
「毎回ってわけじゃないけど大抵はこうだな、ローズ」
「えぇ、でも今回はまだマシな方だし」
「今回はまだマシって…それだと普段はどれくらいやばいのがでてるんですか」
『今回はまだマシ』という言葉に引っ掛かり再度質問する永久。
それに対し
「ん〜やばいといえば『味噌納豆ケーキ』の臭いはかなり危なかったよな」
「あれは確かに危険だったな。でも、私的にいうと『超甘口イチゴパスタ』の甘ったるい…」
「いや、甘ったるさだったら『あつげしょう』の方が……」
なんだか聞いているだけで食欲をなくす会話を行う暁とローズ。
しかも最後の『あつげしょう』って一体どんな料理なのかさっぱり想像つかないのだが、
まぁこの『ルーミャッHフェスティバル』ではそれだけ独創的な料理が出てくるのだ。
それに、強烈な刺激臭漂う状況であっても関わらず一部の者達は平気な顔をしている。
「えー漸の話によると今回の料理は名付けて『森のロリコンワーオ』だそうなのかー
なので、今日はゆっくり味わってくといいのかー」
どうやらルーミアもその平気だという一部に入ってるらしい。
むしろ、食欲を刺激されたらしく腹の音がぐーっと鳴り始めており、
前口上もそこそこに終わらすと同時に舞台を飛び降りて鍋の方へと直行しはじめた。
みると客の一部はすでに鍋へと列を作っており、漸やマットーメは平然とした顔で並ぶ客へシチューを皿に注いでる。
ついでに、お燐やミスティアも平然とした顔で猫車やお盆に皿を載せて各テーブルへと配ってる。
「まぁ、とにかく見た目があれでも味の方は保障できるから安心すればいいさ」
そういって、今なお不安な表情を浮かべている永久とたはなこを安心させようとする暁。でもって
「ただし、りるる閣下は納豆が駄目みたく好みによっては無理とかいう場合もあるけどな」
っと、一言ぼそりと付け加えるローズ。
しかし、納豆は好みの激しい食べ物だから仕方ないような気もする…が
この場合原材料の時点ではじかれているので、今回の場合は問題とならないだろう。
味に関してだけは
っと、そうこうしているうちに配給の順番がまわてきたっらしい。お盆をかかえたミスティアがやってきた。
「ドウゾ」
「あーどうも」
皿を差しだすミスティアが差し出した皿を受け取る暁。
でもってその皿をローズにまわし、ローズはその皿を各自の前においていく。
そんな流れ作業の中……
パサッ
何かの拍子にミスティアの被っていたZUN帽が地面へと落ちた。
「あっ、落ちましたよ」
落ちたZUN帽を笑いながら拾うたはなこに皿を配り終えたミスティアは無表情で受け取り、被り直す。
「デハ、ゴユックリ」
被り直しながら皿が行きわたったことを確認すると、そのまま世間話をすることなく次のテーブルへと向かっていくミスティア。
「なんか、今日はみすちーの様子も何か変だと思わないか?」
そんなミスティアに違和感を感じたのか、首をかしげる暁。しかし……
「そうかー案外マットーメと喧嘩でもしたんじゃないのか?」
「それに、今仕事中な上に客が待ってますからね。効率的に行うためにああいう対応したのだと思いますよ」
「確かに、ローズやたはなこの言うことも一理あるんだが、今回はなんかこう引っ掛かるところがなぁ……」
暁は霊夢ほどではないにしても勘はかなりするどい方。
その理由は不明だが、とにかくわずかなヒントから正解へと導くことができるほど頭の回転が早い。
そんな暁が下した結論は
「まっ、客商売とはそういうものだから気のせいか」
客が大勢待たされてる中では効率的な仕事が求められる。
そういう中では客との雑談なんてタブーだし、
ミスティアは仕事を効率よく行うためにあえてああいう態度をしたのだろう…
っということで暁は気にしないことにした。
だが、永久は暁が知らない事実を知っていた。
ミスティアがZUN帽を落とした時……
頭の上にキノコが生えていたことを
「………キ、キノコ………頭の上にキノコ。そういえば忘れてたけど今回の原材料は魔法の森の化け物キノコ……」
魔法の森の化け物キノコ
そのキノコには強い幻覚作用があり、その効力は人間どころか妖怪にすら及ぶ。
しかし、その効力を利用すれば様々な魔法薬の原料にもなりえるのだ。
さらにいえば、調合の仕方次第には本人の予期せぬ奇妙奇天烈摩訶不思議変化な効果をもたらすこともある。
いろいろとありすぎて永久はすっかり忘れていたが、そんな魔法の森のキノコが今回の料理に使われていることを思い出したのだ。
さらにくわえて漸の不可解な言動とミスティアの頭に生えていたキノコ。
二人とも調理のため厨房に籠っていたとすれば……
「まさか!!」
ばっと漸の方をみた。
漸は相変わらず無表情に皿へとシチューを注いで並んでいる客へと渡している。
その頭にはコック帽がかぶられているのでよくわからないが………
そのとなりの方でやはり同じように客へとシチューを配っているマットーメに目が移った。
でもって……
コック帽の代わりにパンダナの巻いていたマットーメの頭上にはミスティアと同じくキノコが生えていたのだ。
「やばい!このシチューはやばすぎるーー!!!」
永久は思わず叫んでしまった。しかし……
「そうか?臭いはあれでも味は結構いけるよな」
「むしろ、あの『甘口イチゴパスタ』や『あつげしょう』みたいなのよりかは断然当たりだし」
遅かったようだ。
暁とローズの二人はすでに食べていた。さらに、まわりを見渡せばもう客達の大半はすでにシチューを食べている。
つまりもう手遅れ状態………
だと思ったが、皆の反応は各々の『美味いリアクション』を起こす等した和やかな雰囲気となっていた。
「あ、あれ…?」
あまりにも平和……いや、リアクション次第では全然平和となってないが、
とりあえずこれといった騒動は起きてない。
「永久さんもどうしたんですか?美味しいんですから、食べましょうよ」
たはなこもスプーンを口にくわえている以上すでに食べた後だ。
しかしその様子……とくに頭には変わったところがない。
「……大丈夫なのかな?」
永久は改めて自分の目の前に置かれた皿をみつめる。
白いシチューの中に様々なキノコや根野菜が浮かんでいる。
相変わらず臭いは強烈だがだいぶ慣れてきたのか今はそれほど感じなくなってきた。
「まぁいっか。ここまで来て食べないのは失礼だし」
まだ少し違和感はあるものの、どんな味がするかは気になる。
それにきのこが生えてるといっても、理由がシチューを食べたからという確証もない。
あの3人に生えているきのこは厨房で起きたなんらかのトラブルのせいなんだろう。
永久はそう判断し、シチューを口にした。
ボン☆
その味は最高級トリュフとも松茸を思わせる上品な味であり、その美味さに思わず幼児化させてしまう永久。
「おー幼児化のリアクションとはやるじゃないか」
「ただ、それだと『コラーゲンたっぷりで若返り効果あり』ってな感じだけどな」
「それは言わないでください。今はわけあってこういう体質なんですから」
そんな永久を茶化す暁とローズだが、永久は特に悪気なくこと答える。
人は美味しいモノを食べた時は心が落ち付くものであり、自然と明るくなるのだ。
そうして、永久はそのままたわいのない雑談をしつつシチューを堪能していった。
「はーやっぱり漸の料理はおいしいし、みんなも楽しそうなのかー」
皆が笑いながら楽しそうにシチューを食べる姿を舞台に腰掛けながら見渡すルーミア。
そのとなりにはすでに空となった皿があった。
『ルーミャッHフェスティバル』とは普段なかなか交わらない人間や妖怪、妖精たちが
美味しい料理の元で笑いながら楽しもうという意味が込められている。
だから、人間や妖怪、妖精たちが種族の枠を超えて一つの料理を食べるこの構図は
まさに『ルーミャッHフェスティバル』でしか味わえないものであった。
「ところで、漸はどうしたのかー?」
いつもなら適当な時間に休憩を兼ねて漸がとなりに来てくれるのだが、今回は休憩をはさむことなくもくもくとシチューを注いでいる。
その様はまるでルーミアのことなんて眼中にないようにみえる…が
「仕事優先だし仕方ないのかー、漸との話は終わってからゆっくりする…ノカー」
あまりわがまま言って漸を困らすのは悪い。
それより、もっと漸の料理を味わいたいということでルーミアは空皿をもって再度鍋前の列を加わった。
だが…その時ルーミアは気付かなかった。
自分の頭にぴょこっと小さなキノコが生えていたことを………
「…ん?」
最初に違和感に気付いたのは永久だった。周りのざわめきの音に変化がでてきたのだ。
ただ、どこをどう変化したのかと言われたらわからないのだが、とにかく違和感がでてきた。
「永久さん。どうしたんですか」
「いや、ちょっと周りの様子がおかしいなと思っただけ…で!?」
周りの様子を見ていた永久は問いかけてきたたはなこにをみて……ぎょっとなった。
「た、たはなこさん……そ、その頭は……」
「頭、アタマガ…ドウシタンデショウカ?」
不思議そうに首をかしげるたはなこだがその頭上にはしっかりきのこが生えている。
さらにいえば言動もおかしくなってる。
「もしかして?!」
永久はばっと自分の頭に両手をおく。その手ごたえだが、自分の髪の毛以外は何もない。
少なくともキノコは生えていないようだが……
暁とローズの方にはきのこが生えていた。
さらにまわりを見渡すと、全員にキノコが生えている。
ではなぜ自分だけが……と思ったが、ふと気づいた。
たはなこの永久を見る目が異常なことを………
「えっと……たはなこさ…ん?」
「フフフフフフフフ……」
嫌な汗を垂らしながら後ずさる永久に対して、不気味な笑いを浮かべながら距離を詰めていくたはなこ。
その様は……とある人物と酷似していた。
そう、その様は………幼児化したことによって発情してしまったアリス他女性陣の姿とまったく同じなのだ。
「ちょ、ちょちょちょ…暁さんとローズさん助けて!!」
迫りくるたはなこに永久はとっさに暁とローズ助けを求めようとした…が
「みるがいい!!」
「ふんどしをきわめるとは…」
「「こういうことをいうのだ!!」」
暁とローズは褌一丁で踊りながら抱きついていた。
その様にあぜんとする永久だが、すぐに我へと返って再度辺りを見渡す。
そこでみたものは・………
狂ったように料理を食べてたり、変な笑い声をあげながら怪しい踊りを舞ったり、
意味無く床や天井のシミを数えてたり、etcetc………
という狂乱の宴を思わせる光景が広がっていた。
つまり、今この場で正気を保っているのは永久一人だけなのだ。
その理由はわからないが、これだけは確実にいえる。
それは…………
これから、阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられるということだった。
それを理解した永久は即座に逃げだそうとしたが、今の永久は幼児化している。
しかも慌てていたことによってだぶついたズボンの裾をふんづけてしまったらしく、
ずっでーーーーーーーーん
派手に転んだ。
でもってそんな永久目がけて
「ト〜ワワ〜ン☆」
バビョーンと服をその場に置き去りとしながら水泳の飛び込み……
俗にいうルパンダイブで襲いかかるたはなこ。
「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
………
「あ〜なたさん。何か今誰かの断末魔の叫びが起きたっぽいけど、どうしましょう?」
さっき雷音が突き破った窓を修理していたおかが、永久の悲鳴に気付いだようだ。
作業の手を止め、さりげなく店の外から中の様子をうかがいはじめる…が
「どうするって言われても俺等のやることは決まってるだろうおか。
店を壊されるような乱闘が起きない限りはスルーだ」
誰かの上手いリアクションによる飛び上がりで破壊された屋根に板を打ちつけていたなたは中の様子も見ずに言い切った。
でもって、そんななたの説得力ある言葉におかは納得したようだ。
「そうっすね。弾幕も発生してないようですし、無視しましょう」
以後も酒場内からは追加の悲鳴が聞こえているようだが、結論がでている以上おかとなたはとくに気にしない。
「は〜今日は平和ですね〜」
「全くだ。いつもこんな程度だといいんだがな」
中はすでに『こんな程度』では済まされてないのだが、
二人にとっては店の損害が出ない限りは『こんな程度』らしい。
なお、『ルーミャッHフェスティバル』の狂乱騒ぎはそのまま明け方まで行われた。
でもって、狂乱の中でただ一人正気を保っていた永久がその後どうなったかは………
誰も知らない?
終わる?