そんなこんなで『ルーミャッHフェスティバル』当日。
太陽が沈み、雲ひとつない空へと昇りゆく月が地を照らすこの時間は、妖怪にとって絶好の散歩日和。
これから訪れる宵闇の月夜では妖怪だけでなく妖精や人間もテンションの上下はともかくとして
陰の気分には陥ることのないという、まさに『ルーミャッHフェスティバル』に打ってつけの時…
になるはずだが、一部はそうでもなかった。

「はぁぁ……本当になんでこうなったのやら」

永久はいろいろと複雑な想いを胸に秘めながら『ルーミャッHフェスティバル』の会場である
『スカーレットバー』へ向っていた。

「なんでって、もしかしてアリスさんの代わりが僕になったことで不満なんでしょうか?」
「いや、そうじゃなくって…」

そんな永久のとなりを歩いていた青年、たはなこが申し訳ないように答えるが永久は即座に否定する。

「確かにアリスさんを誘いたかったけど、アリスさんはかなり前から魔界に帰省する予定だったしね。
 元々急な話だったから仕方ないと思ったら割り切れるし、
 それにたはなこは以前の人形劇用の機材でいろいろと取り計らってくれたから、
 そのお礼の接待と思ってくれたらいいよ」
「あーなるほど。実はこうやってお得意様から接待されるの初めてなんですよねー」

ちなみにたはなこは株式会社ボーダー商事につい最近入社したという新人社員。
その仕事は主に社長や幹部へのお茶くみなのだが、その腕前がピカ一。
ついでにその和ませる雰囲気のおかげでいろいろな商談も成功させており、
社内では期待の新人として一目置かれた存在だ。

でもって永久はそんなたはなこが成立させた商談相手の記念すべき第一号のお得意様であり、
その縁もあって仕事抜きでの付き合いもある親友となっていた。

「しかし、誘っといてなんだけど本当によかった?」
「もちろん。だって、あの『ルーミャッHフェスティバル』ですよ。
 漸さんの特別料理が食べられるチャンスなんて早々ないんですから」

永久とは対照的にウキウキと答えるたはなこ。その表情は眩しいぐらいに純粋で輝いている。
恐らく、漸の特別料理を何の疑いもなく信じているのだろう。

しかし、そんな表情を浮かべられたら浮かべられるほど裏事情を知る永久の気持ちが沈む。
なにせ、今回のフェスティバルで振る舞われる料理のメイン食材が魔理沙お勧めのキノコ。
永久は魔理沙のキノコ(が原料と思われる薬)で酷い目に今なお現在進行中で会わされている最中なので
それを思えば自然と気が重くなる。
むしろ、そもそもそんな危険な状況になることがみえているのになぜそれを承知でたはなこを誘ったのか………
永久は今さらながら自分のとった行動に疑問を持ち始めた……が

「もういいか。悩んだところで仕方ないだろうし、
 さすがの漸さんも一般客が訪れるところでキチガイ料理は出さないだろう」

予想以上に喜ぶたはなこを見て今さら引き返せないし、
辛うじて一般人のはしくれに立つと思われる漸の人柄というか一般常識を信じて
永久はこれ以上何も考えないようにした。


「あっと、永久さんとたはなこさん、いらっしゃい」
「この日に来るということは二人とも「ルーミャッHフェスティバル』目当てかい?」

そうこうしてる『スカーレットバー』に着いたようだ。
入口付近で壁の修繕をしていたなた&おかの紅魔館従者コンビが声をかけてきた。

「おかさんとなたさんもこんばんわ。もちろんフェスティバル目当てですけど、
 二人共こんな日でもお仕事ですか?」
「えっと、仕事といえば仕事だけど僕らはただ店を壊されないよう見張りに来ただけの監視役だし」
「確かに、店が壊されたりなんかしたらあのカリスマスターがどれだけ怒るかわかったもんじゃないですよね」

そんなたはなこのつぶやきに、4人は攻撃色の赤い瞳をぎらつかせながら迫りよってくる
カリスマ抜群のレミリアが脳裏に浮かんだ。
しかも、レミリアは過去に一度酒場を吹っ飛ばして瓦礫へと変えたことがあるだけに、
本当に怒り狂えばとんでもないことが起きること確実だ。

「あ、後…何かあった時用の戦闘要員ってとこもあるかな、おか」
「え、ええ…といっても戦闘要員っていっても以前みたく
 ゾンビの群れが現れたらどうしようもないんですがね」

そんな嫌な雰囲気をごまかすため、別の話題を振るなた。
しかしその話題は方向性がずれている上におかの返答になたはぴくりと眉を潜ませる

「おいおいおか、何を言ってるんだ。
 ゾンビ程度でどうしようもなくなったらビオ○ンテやキン○ス○イムなんて到底相手できないぞ」
「そうですよね。僕も師匠みたく精進してせめて一人でヘル○イザーを倒せるぐらいには……」

「………」
「………」

その会話は一応レミリアによる最悪のパターンを和らげるために振った物なはずだが、
聞こえ方によってはレミリアどころかフランも一緒に襲来しかねない大惨事フラグにも聞こえる。
とくにおかの『以前みたく』は過去のフェスティバルで本当にそれらの化け物が
発生したという裏付けにもなるが

「二人ともいろいろと大変なんですね」
「応援ぐらいしかできませんが、頑張ってください」

『スカーレットバー』は以前『人食い洋館』と呼ばれて忌み嫌われていた建物だ。
そんなぶっそうな建物だから化け物が出て来てもなんらおかしくはない。
さらにいえば永久とたはなこもなんだかんだいってよく『スカーレットバー』を利用する常連客だ。
常連客であるため、スカーレットバーで起きる騒動にはよく巻き込まれる。
でもってそんな日常的に起きる騒動と比べると
化け物の出現なんてそれほど騒ぐほどでの内容ではないと思っていた。

それに、酒場の地下には広大なダンジョンが隠されており、
その最深部では封印された魔神や邪神といったEXボスが眠ってるのではという噂が立っているのだ。
それらが現れてレミリアやフラン他幻想郷の強者達による大戦争が起きることを思えば
中ボスクラスの化け物の出現なんてまだマシというもの。

とまぁ、そういうことで『悪魔』でも『怨霊』でもどんとこいっとある意味開きなおりながら
二人は酒場の扉を開けた。









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  l , l  l ヽ.     -‐-     ノ l  l , l  
  ヽlヽl、 ト、|、,> .,_    _,. <,.レ'l ノレ' レ'  











………




ぱたん


「い、今扉の向こうにすごいのがいたようにみえたけど………」
「まさか、たぶんキノセイデスヨ」
「………」
「………」

少しの間の沈黙。二人の間に気まずい空気が流れたが、ここでじっとしていても始まらない。
二人は呼吸を整えると、再度扉に手をかけ………











 _, -=''"" ̄ ̄""=-―,.、
  _,=、            ̄=.、
   彡             "" - , そーなのカッター!
    >                ヽ
   :"  .__=__  ̄=.、   \
  /  彡⌒  | |    ̄`マ ‐-,、    ヽ       .'  , .. ∧_∧
  /彡" /~ニ | j|.レノノハノノ) "ヽ     ヽ    .∴ '     (    )  ぐほぉ!!
 /   ( /_/  |ルi ゚ ヮ゚ノリ     \   ミ     ・,‘ r⌒>  _/ /
     ヽ ミ  .|.::::∞::!⌒ヽ. ,_   ミ   ,i      ’| y'⌒   ⌒i
       ̄| ミ:::::::::::,イヽ Y|三)  ヽ  .|       |  /  ノ |
        ,.イ  |-=::/ \_ノ    |ミ  ij       , ー'  /´ヾ_ノ
      厶:ヽ ヽj:::1        |  |i       / ,  ノ
      〈:::::::::"ーァヘ::ヽ、     |   ノ     / / /
       ’ ,:::::::::::ヽ ヽ:::ヘ    ノ / /     / / ,'
       ヽ::::::::::::ヽ `ソ   // /   /   /|  |
        `ー-- /   )    / /    !、_/ /   〉
           / /   /           |__/
          |  |
          \_|










…………




ばたん





「………」
「………」

今度は二人とも何もしゃべらない。
ただお互い向かい合ったままじっと固まっていた。
その時二人が何を考えていたのかわからない……が、二人とも同じ決断を下したようだ。

ごくり…と二人同時に生唾を飲み込み、これまた同時に酒場の扉をあけた。










 ,.へ          _,,.. --─- 、..,,_
 ` ̄     ,. '"´           `'ヽ.,
 l>    ./                 ヽ.  ,ヘ
      /   /               、 ヽ/∧',
     ,'   i /   ;'  /i   ,   ヽ.r‐┐///、_
     i  i /|‐ハ- | / | /_|_    Yニi' ニ二7/
     | ノ ! ,アi''`ヽ!/  |/  | ` i   i___,!`"''r-'  ふたりとも、いらっしゃいませなのかー
      レヘ  ハi ト リ    ァ;‐-'!、ハ   | .|  |
      ,ヘ .7 ` ヽ-'     ト   ハ|  / /  |
     /  ,ハ ""  '      !、_ン ノ|/|/   |
     ,'    ヽ、  rァ--、  ,,,,,´/  . |  i.  |
     |へ/| / \   _ノ   ,.イ   i |   |   |
       レヽ, /´ i`''ーr‐ァ ´/ / ,ハ|、 ハ  ノ
           ,'ヽ.i::::::::|Y___/!/レ'::/ヽ. イ
           |  |::::::,レへ/ /::::::/   _,.':,
          ', |:::::LOO___/::::::::i  /  ',
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   rノ´__;;:::二ニ=-:>、!__::::::::::::::::::::_;:イ、ヽイ
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「あ、あぁ…うん」
「今日はよろしく」

ついさっきの雰囲気からくるギャップの激しさに唖然とする二人。
しかし、ルーミアの笑顔というか有無を言わさない謎の迫力に押されて逃げるチャンスと失ったようだ。

「今はまだメイン料理の準備中だけど、酒とつまみは用意してるからそれらをつまんで待ってるといいのかー」

受付をやってると思われるルーミアにチケットを切ってもらいながら、二人は酒場内を軽く見渡した。
外見に似合わず広々というか、あからさまに外見よりも広くみえる酒場内のテーブルはほとんど埋まっている。

「おや、そこにいるのは永久とたはなこじゃないか」
「二人が揃ってくるなんて珍しいなー」

空き席を探してる最中に誰かから声をかけられる永久とたはなこ。
一瞬誰だと思ったが、すぐにわかった。

「あー暁さんとローズさんどうも」
「お二人もこちらに来てたんですか」

暁とローズが座っているテーブルはまだ空きが充分あいてるし、
知り合いということもあって二人は迷わずまっすぐにその席へと向かう。
なお、その途中にはさっきのそーなのカッターで蹴られて伸びている屍もいるようだが軽く無視どころか、
これまた迷うことなく踏みつける。
踏みつけた時に潰れたカエルのような悲鳴が聞こえたようだが、
二人は聞いてないことにしつつそのまま席についた。

「やーやー二人とも盛り場へようこそ。男同士のペアなんて珍しいな」
「いや、それには事情がありまして…」
「まぁ気にするな永久。ここは別にカップルで来る規定もないしな」

そう言いながら酒が注がれたコップを渡す暁とローズ。
二人とも頬がほんのりと赤く、すでにある程度の酒が入っているようだ。
しかし、ここは酒場である以上酒はあって当然。
ましてや注がれた酒はよほどの事情がなければ飲むのが礼儀なので、永久とたはなこは大人しく渡された酒を飲み始める。

「確かに、周りを見ると別にカップルだけってわけじゃないですよね」

受け取った酒を半分程度飲み終えたところでたはなこはつぶやいた。

「本当ですよね。あそこのぶっ倒れている左京さんに水ぶっかけてるのは冬月さんみたいですし、
 他にもいろいろと知った顔ぶれがいますよ」

同じく半分程度飲み終えた永久はたはなこに同意するかのように周囲を見渡しつつつぶやく。

「そうだろうな。ここに来てるといろいろな組み合わせがやってくるし」
「こうやって見学するだけでも面白いってものよ」
「ですよね。とくにあそこの席なんて…」

っと、笑う暁とローズを尻眼に永久はとある一角を指さした。
その先は、なんだかいい雰囲気を作っているリュードと橙と……
その少し後ろの方ではサングラスにマスクにニット帽で変装してるものの
9本のもふもふ尻尾のせいで正体がバレバレな藍がいた。
もちろん、藍からは嫉妬の炎を通り越した殺意の炎がどこぞの地獄鴉の核融合を思わせる火力で燃えており、
その炎を向いの席に座っている連れであると思われるもげらが必死に抑えつけていた。
だが、抑えつけるのにも限界があるようであの二人から半径5メートルは誰も近寄ろうとしていない。
意図的に避けている。

「あ〜結局藍さんともげらさんもここへ来たんですか」
「おや、たはなこはあの4人について知ってるのか?」
「えぇ、知ってますよ暁さん。前にもげらさんから愚痴を聞いてますから事情は大体わかります」

暁やローズはリュードと橙が付きあってるなんて知らなかった。
ていうか二人共普段は妖怪の山にいて滅多に人里へ降りてこないこともあって、
人里周辺に住む一般人とは接点が少ないのだ。
よって人里周辺を住処とする暁とローズ、永久は二人のことをよく知らない。
しかし、たはなこは八雲一家が経営する『株式会社ボーダー商事』に努めているので
八雲一家の裏事情にはそれなりに詳しいのだ。

「それは面白い、できればその話を教えてくれ」

幻想郷の住民は面白い話には目がない。
ましてやそれが色恋沙汰となると最高の酒の肴なので新しい酒を注ぎながら聞きだしにかかるローズ。
それに対し

「いいですよ」

あっさり了承するたはなこ。その言葉に永久はぶふっと酒を吹きだした。

「い、いいんかい!」
「えぇ、だってもげらさんから口止めされたわけでもありませんし」

げほげほとむせる永久を尻眼にさらりと答えるたはなこ。
一応当の本人が口止めされてないとはいっても、プライバシーの関係で黙ってるのが常識だ。
でも、幻想郷は常識に囚われてはいけないし、何より永久自身もやっぱり気になるので特に止めることなく、
3人は静かにたはなこの話を聞くことになった。

「えっと、実はですね……かくかくしかじか……」



「………」
「………」
「………」


まるっきり手抜きもいいところだが、とりあえず3人は理解した…というか確認のため再度問い返す。

「ふむふむ、つまりマヨヒガ周辺の橙のなわばりにやってきたリュードが橙を一騎討ちでのしてなわばりを奪い取った。
 でも、橙をのしたことによって保護者の藍の逆鱗に触れてそのままリュードを粛清」
「本来ならそれで終わりだったはずだが、、橙がリュードに負けて以来その強さに惚れてしまったらしく
 時々ああやって積極的にアプローチをかけるようになった」
「さらに厄介なことにリュードの好みは藍さんや紫さんみたいな巨乳で貧乳に興味なし。
 ただ橙さんは八雲一家である以上、成長すれば二人みたく巨乳になると見込んで、
 今から手懐けるという『光源氏計画』を実行中……」

いつのまにか酒場内に虹河三姉妹が入ってきてたらしく酒場の一角を占拠してライブが開催されていた。
さらにいえば、入口の方でルーミアにチケットを渡しているナイトと鈴仙がいたが、
3人はちょっかいというか冷やかす余裕もなかった。

「まぁとにかくそんな感じで、もげらさんも能力を使ってリュードさんの真相を見抜いたまではよかったものの、
 こんなこと橙ちゃんや藍さんに教えられるわけがないってことでどうしようかと愚痴られたんですよ」
「確かに、そんなこと橙と藍に教えられるわけないよなぁ……」

そうつぶやきつつ改めてリュードと橙を見る3人。
淡い恋心を抱いている橙に対して打算的な野望を秘めているリュード。
でもって、その二人…特にリュードへ対してまるっきり隠そうとしない駄々漏れの殺気を全開にして放つ藍。
その姿は何も知らなければ微笑ましいのだが、真実を知った今となっては全然微笑ましく思えない。
むしろ、リュードの野望を考えると藍にそのまま殺された方が平和的に解決していいような気もする……

「しかしリュードさんも八雲一家の皆さんにワイルドな豹柄ビキニ着せたいなんて趣味悪いですね。
 特に紫様は体操服ブルマーが一番なのに」

一通り話しおえた後にこっそり不満を垂れるたはなこ。
しかし、その発言に関してはまだリュードの方が健全だと感じられる…が、
今はそんなこと些細なことに感じられた。
というか、常識人の部類、もしくは良心だと思われるたはなこもすでにあれな時点で
八雲一家の未来は一気に不安へと染まった気がした……

「おやーそこの席の4人。何暗い顔してるのさーいくら男同士で花がないからっていじけずパーっとやりなよ」

そんな雰囲気を吹き飛ばすかのようにやってくるのはエプロンをつけたお燐。
給仕係をやっているらしく、おなじみの猫車には酒やツマミとなる料理が多数のっかっている。

「いや、別にそういうわけ…にみえますよね」
「確かに、この席は花がないもんな」

否定するどころか思いっきり認めるたはなことローズ。その様は思いっきり開きなおりにもみえる。

「まぁ、慧音せんせーやあの悪霊は前のフェスティバルでもうこりごりって感じだったしね。
 それに二人が見てない中で別の女の子と同席してたら大惨事かな」

そうにこやかに冗談をいうお燐だったが、それは冗談で通用しなかったようだ。
暁とローズはさーっと一気に血の毛が失せていった。
まぁ慧音も魅魔もそれほど嫉妬深い方ではないので自分の知らないところで
別の女の子といちゃいちゃしてたぐらいで怒ることはない。
だが、あの二人の怒りは幻想郷内屈指の怖さを誇るだけあって万が一怒らせたらまず命がないだろう。
二人はそんな最悪なパターンというかお仕置きされる図を想像してしまい、ガタガタ震えはじめた。

「ところで、メイン料理ってまだですか?」

そんな雰囲気の中でも我関せずなたはなこはお燐に問いかける。

「あーうん、今厨房の方でちょっと問題が起きたらしく手間取ってるみたいだから、
 完成までもうしばらくY缶とおつまみでもどぞー」

そうやってお燐はたはなこの質問に答えるるテーブルの上にどんどんっと新しい酒というかY缶とおつまみを置き、
そのまま猫車を押しつつ去っていった。
ちなみにテーブルにおかれたおつまみは香辛料がたっぷりかかった焼き肉だが………
精神衛生上、何の肉かは深く探らない方がいいだろう。

「しかし、メイン料理がこれほど遅れるなんて珍しいな」

いろいろなことがあってすっかり酒が抜けた暁がしみじみつぶやく。でもってそのつぶやきに対し…

「今まで厨房からゾンビの群れやらビ○ダンテやら○ングスラ○ムが出てくることはあっても
 全く何も出てこずに音沙汰なしなんてことはなかったし」

ローズの返答は常識をはるかに超えるものであった。
っていうか、そんなものが厨房から出てくるなんて錬金術の実験でもしてるのかっと突っ込むところだが

「まぁそれだけ仕込みに時間がかかってるってことでしょうね」

永久は何気なくさらりとつぶやく。
そう、この酒場に限っては中ボスクラスの化け物の出現は日常的にありうるので別におかしくない。
ついでにいえば、恐ろしいのはそれらの化け物に対して応戦する面子だ。
面子によってはまわりの被害なんて関係なく弾幕を放つ輩もいるし、
とくに手加減が苦手な連中…たとえばフランなんかは酒場ごと敵をふっとばしかねない。
それを思えば、化け物の出現なんて本当にどうってこともないのだ。
ついでに、今現在酒場に詰めている面子は比較的大人しい連中なので大惨事はまず起きないだろう。
精々騒ぎのどさくさにまぎれて約一名が抹殺される程度……と思ってたが、



永久の予想はむなしくも粉々に崩れ去ることは………

まだ誰も知らなかった。






続く