目を覚ますと、そこはベッドの上だった。 いつもの見慣れた天井、自分の部屋の天井だ。 しかし、おかしな話だ。 ベッドにはいって寝た記憶がないのだ。 そもそも自分は寝る前になにをしていたんだろうか。 「あら、お目覚め?」 近くから聞き慣れた女性の声がする。 そちらに振り向くと、案の定最近よく一緒にいるカナだった。 「ん? カナ? 何でこんなところにいるんだっけ?」 その答えを聞いて、カナは少し不機嫌そうにため息をつき、語った 「覚えてないの? やみなべさん、一周年記念パーティーで一気飲みして、倒れたのよ?」 …思い出した、スカーレットバーの1周年記念に参加して… つい乾杯だからってお酒を一気に飲んで、倒れたのだ。 「大変だったんだから、幸い力自慢の人が何人かいたからいいものの」 「いや、あんまり関係なくない?」 実体化したとはいえやみなべは怨霊の集合体である 当然、それほど重くないわけで… 「それでも運びにくいものはにくいのよ、それに折角の主役が一発退場なんて」 カナはあきれたようにそういうが、まあ、あの酒場のことである。 それも「よくあること」の1つとして、とりあえず挨拶は終わったのだから宴会しよう! になっているに違いない。 「放って置くわけにも行かないから、私が残ったわけ、感謝しなさい」 周りの人が何を考えてカナを残したのかは… まあ、いつもの調子を見ていれば「一番面白そうだから」というとこであろう 「ありがとう、じゃあ、とりあえず戻ろうか?」 そういって下の宴会会場へ向かおうとするやみなべを 「ちょっと! なにしてるのよ! さっきまで倒れてた人が!」 あわてて制止したのはカナであった。 「さっきまでアルコールで倒れてた人が戻るな! また倒れたらどうするのよ!   やみなべさんはお酒弱くていつも倒れてるんだから!」 「えーと、カナ?」 カナの主張が激しいのはいつものことだが、 今はいつにもまして強い口調でまくし立てている。 その姿は何かに怒っているように見えた。 「えーと、カナさん、ナニヲ怒っているのですか…?」 「なにを怒ってるって!? なら教えてあげるわ!」 やみなべの問いに、カナがずい、と身を乗り出して答える 「力が付いているっていったってね! まだやみなべさんの存在力はそれほど大きなものではないの!  ちょっと何かあっただけで、消えかねないのよ!」 強い口調で、続ける。 「もともと貴重な力を使って実体化して! その途中で倒れて!  消えちゃったらどうするのよ!  妖精じゃないんだから、消えても自然発生しないのよ、この館があったとしても、  仮にまた同じような存在が出来たとしても、それはやみなべさんじゃないんだから…  今迄だってそうよ! 最初は私の存在を知ってても、相手にしなくなって、  忘れちゃって、いなくなって…」 話が進むたびに、烈火のような口調は少しずつ、弱くなり 「やっと、一緒にいれそうな人がいて、でも消えちゃったら…  どうするのよ、私……」 もう、言葉にも、態度にも、最初の強さはなかった。 ここには顔を見せないようにうつむいて微かに震えている、 そんな少女が、いるだけ。 この少女は、こんなにも弱かっただろうか? それとも、必死に隠していただけだろうか? だが、体は自然と、カナを抱きすくめていた。 「大丈夫、早々消えないから、  折角もらった生なんだから、面白おかしく生きるつもりよ?」 ちょっと軽い口調、でも、いつもどおりの口調。 それを言うだけで顔の赤くなっている彼は、まことに初心なのであろう。 生まれが生まれだけに、人の愛情に慣れていないのかもしれない。 「ね?」 そういって離れると、すっかり大人しくなってしまったカナの顔を覗き込む。 「そうね、やみなべさんはいつも楽しいことが好きだものね」 そういって、顔を上げるカナ。 その表情に悲しさはなかった。 「えっと、ひとまず、下のほうに伝えてくるわ、やみなべさんが起きたことをね」 少しの沈黙の後、カナが動いた。 どうやら自分がどんなことをしていたかにいまさら気がついたようである 「やみなべさんはちゃんと寝ててね! 動いたらだめよ!」 少し、頬を染めて、やみなべが答える前にドアを閉め、部屋からあわてるように退出していった。 そのあとにいたのは同じく自分がやったことに悶えている、やみなべであった。 おわり 時系列は混沌の夜明けの終了後。 赤黒の自己主張度合いとと元設定から、「実は割とさびしがり?」とか考えて出来た。 相手にしないの下りは夢時空の館の人に相手されなくなった、あたりから。 旧作設定を取るならカナにもう霊夢にも相手されていませんね。 誰このキャラにしかなっていないような。 永久