錆ついた扉に鍵はかかってなかったようだ。 もっとも鍵がかかってたら力技でぶち破るつもりでいたから関係ないが、扉は素直にギギッと蝶番を軋ませながら左右に開かれた。 開かれると中からカビや埃の匂いに襲われて思わず鼻元を手で覆う。 「中は、予想通り誰もいないわね」 正面は広々としたロビーとなっており、パッと見た感じとくにこれと言ったものはない。 しかし、厄というか妖気のような“負”の力が充満しているのはわかる。 まるで地獄の底のさらなる奥へと続くかのような気配を出す冷たい空気にレミリアはぞくりと背筋に寒気が走った。 冬なのに、体中から冷や汗が滲み出る。 その異様な空気にレミリアは回れ右して逃げ出したい衝動に駆られたが、そんなことできるわけがない。 カリスマの象徴が敵前逃亡なんて沽券にかかわる…ということで、一歩踏み出した。 その瞬間…… 床に溜まっていた埃が舞い散った。 「うわっ、ちょっと。掃除ぐらいやりなさいよ」 舞い上がった埃を少し吸い込んだらしく涙目になってせき込みながら目の前の埃を払う。 うっとぉしいからいっそ全部焼き払ってやろうかっと思ったが、人様の家に無断で上がりこんで即座に焼き払いは失礼過ぎだ。 カリスマの取る行動ではないのでなんとか思いとどまり、とりあえず中を散策するためさらに歩を進める。 すると……… バキッ 「はれ?」 足裏から伝わる豆腐のような感触とともに、板のへし折られる音が小さく響いた。 どうやら、思いっきり腐っていた床を踏んでしまったようだ。 ちなみに、レミリアが重いわけでは決してない。 むしろ、そういうことにしておかないと…命がないだろう。 「GYAAAAAAAA!!!」 っとそんなことを言っているうちに床を踏み抜いたレミリアは悲鳴を上げつつ自由落下。 なお、ここでお前は羽があるから空飛べる癖にっと思ってはいけない。 人間妖怪とっさのことになるとそういうことを忘れてしまうのだ。 よって、レミリアはそのまま重力と言う名の大自然の慣性とともに闇の中へのみこまれて逝き……… どすん 尻をしこたま打ちつけた。 「ううぅぅ……なんで私がこんな目に」 幸いにも床にはクッション的な物が敷き詰められていたおかげで大怪我は免れたようだ。 もっとも吸血鬼のレミリアが数メートル程度の自由落下程度で大怪我なんかするとは思えないのだが、痛いことには変わらない。 涙目になりながら打ちつけた尻をさするレミリア。当然だがその姿にはカリスマなんてない。 「全く人を招待するなら床を修理ぐらいしてなさいよ!!」 いや、誰も招待なんかしていない。 レミリアが勝手に入ってきただけで、その結果床を踏み抜いても完全自業自得。 逆恨みもいいところなのだが、自分が中心で動いてると思っているレミリアにはそんな理屈なんて通じるわけがない。 今レミリアの頭の中には尻の痛みとこんな目に合わせたこの洋館の持ち主に対してへの恨み事で一杯だ。 だが、恨みを晴らすにしてもこのままじっとしていては何もできない。 立ちあがろうとして地面に手をつこうとしたら、乾いた音ともに何かが崩れた。 「……なにかしら?」 暗くてよく見えないので手探りになるが、その乾いた音を立てたと思われるものは辺り一杯に散らかっているようだ。 その中の一つを掴み、指先に光源確保用の弾を生み出して確認してみたところ……… 「ひぃ!!」 掴んでいたものを認識した瞬間、脊髄反射でそれを投げつけた。 その投げつけたもの…人間の頭がい骨は壁にでも当たったらしくパリンという砕け散った音が響いた。 「な、なんでこんなところに人骨が」 改めて周囲を見渡すと自分が落ちた周辺は人骨だらけ。 いや、中には角や翼がある骨もあるので人骨だけではない。 "確か人里近くに人食い洋館が現れるという話ですよね、慧音先生" "暁、それはまだ噂の段階だ。なにせ目撃者したのは皆幼j…子供であって、ただの悪戯という可能性もある" 慧音とそのそばにいた暁が話していた人食い洋館。 神出鬼没に現われるというこの洋館は入り込んだ人間を食べてしまうというある種の怪談だ。 最初これを聞いた時は嘘臭いというか、紅魔館の方がよっぽど恐ろしいわよっと笑い飛ばしたのだが……… 「だ、大ジョブぶよ。わ、わわわわわたしはすかーれっとでびるなんだから」 いくら強がってみせても、いざ実際に自分が体験すると笑い飛ばせなくなるようだ。 それでも、怖くないと自分に言い聞かせてガチガチと震える膝に喝を入れながら立ち上がって周囲を観察してみるが… テーブルや床に散乱してる、一体何に使うのかわからない不気味な道具セット 壁一面に広がった血の染みの跡 鎖に繋がれたり杭に撃たれたりして苦悶の表情を浮かべたまま絶命した…悪魔の屍 でかいフラスコの中で培養されていた…と思われる生物の成れの果て それらを見てレミリアがたてた結論 見るんじゃなかった。 「い、一体何なのよ。こ、ここの持ち主…絶対まともじゃないわ……」 まさか人間だけでなく悪魔も犠牲になってるとは… このままだと、自分も犠牲となってしまう。 そこらに転がっている悪魔の屍や標本の仲間入りとされてしまう。 そんな思いもよらなかった事実と恐怖に耐えきれず、思わずしゃがみこんで頭を抱えて泣きだした。 「あ〜ん…れいむ〜さくや〜なた〜ぱちぇー…めーりんでもいいから助けて〜〜」 全身ガタガタ震えながら自分の従者達の名前をつぶやくレミリア。その姿にはカリスマの威厳も何もない。 しかし、真っ先にあがる名前が霊夢だったり名前すらあがっていない岡や 話の中にすら出てこないもう一人の門番であるぱんだのことを考えると いろいろ不憫で突っ込みどころがあるのだがまぁ気にしないでおこう。 でもって、当然だがその声に応えてくれる者なんて誰もいない…………… はずだったが 「………」 かすかにだが、レミリアの声に反応する何かがあった。 普通の人間ならまず聞き取れないであろう反応であるがデビルイヤーをもつレミリアは聞きとってしまったようだ。 ぶっちゃけ、聞きとらない方がよかったのかもしれないがこの際関係ない。 むしろ、このままだと自分が恐怖でどうにかなりそうだったのでわずかな希望をかけて涙目のまま、顔をあげる。 「だ、誰…?」 しかし、何もなかった。 周囲を見渡しても何もない。あるのは、この地下室に漂う不気味な空気だけだ。 「もうこの際出てくるのは死神でも悪魔でも亡霊でもなんでもいいから出てきてよぉ〜」 「………」 そんな悲痛の声をあげるレミリアに、今度はしっかり何かが反応した 地下室に漂っていた不気味な空気に歪みが生じたのだ。その歪みはやがて一ヶ所に集まりはじめ……… 人の形となした。 「あ、あなたは…?」 「………シ…ラ…ナイ……」 レミリアの問いかけに対してソレはかすかな声を発する。 その声は耳で聞くというよりも、精神で聞きとるかのような音… 言うなれば、幽霊達の声に近い。 「知らない?…貴方は亡霊なの?それとも幽霊…??」 「……シラ……ナイ……ワカラ…ナイ……」 「わからない…貴方はこの家に住み着いてるのよね?」 「……ソウ」 声?が小さすぎるというかあいまい過ぎて聞き取りに苦労するが、話せないということはないようだ。 それに、ソレが纏う空気は邪悪な気配を発しているが、ソレ自身からはそれほど邪悪な気配はない。 少なくとも、レミリアを取って食うようなことはない…とレミリアは内心ほっとしつつ、少し考えた。 ソレはこの洋館に取りついている亡霊の類であるのは確かだが、その存在が希薄すぎるのである。 ソレを認識するにはよほど意識をしていなければ到底無理だ。 それほど存在が希薄であり、周囲に溶け込んでいる。せめて名前があれば… 「そうよ、名前だわ!あなたの名前は?」 名前とはその存在を認識させる基盤にして絶対普遍の理。 皆名前があるから、他との区別を付かせる境界を生み出して差別化を図る。 「…………」 しかし、その問いかけに対してソレはしばらく黙りこんでいた。 もしかしたら名前がないのかもしれない。もしくはその名前を忘れてしまっているのか… 名前がないから希薄な存在になってしまっているのだと思ったが、やがてソレはゆっくりだが口?を開く。 「……ヤ…ミ……」 「や…み…?」 「…ヤ…ミ…ナベ……」 相変わらず声?が小さすぎて聞き取る方は難儀したがそれでも辛うじて拾えた。 「やみなべ…それがあなたの名前ね?」 レミリアの問いに対してソレはうなづいた…ようにみえた。 「そう、あなたはやみなべって言うのね………やみなべ……やみなべ」 レミリアは名前がわかってほっと一安心した…が、その名前にある引っ掛かりを覚えた。 いや、引っ掛かりというか、数刻前に暴れまくった元凶となった名前というか、とにかくレミリアはゆっくり再度問い返す。 「本当にあなたの名前はやみなべ…なのね」 「……シラナイ…デモ、ソンナキ…スル」 「…一つ聞くけど、貴方はこの洋館の外へ出たりしてる?」 「…デテル」 「外に出て、何してるの?」 「……カンサツ」 「何のために?」 「…ワカラナイ」 「………質問を変えるわ、その情報はどうしてる」 「……シンブン…ニシテ…バラマク」 プッツン 歯切れの悪い返事が多かったが、最後の言葉にレミリアは確信した。 っていうか切れた。 「ふっ、どうやらお前が犯人だったようね……貴様が私のカリスマを暴落させた張本人か……」 カリスマ復活。 ごごごごっと怒りの炎を燃やしながらギラリと殺気に満ちた目で睨みつけるレミリア。 その姿は先ほどまで縮こまってガタガタ震えていた『へたれみりゃ』ではないカリスマに満ちた『レミリア様』だ。 しかし、そこらの妖精なら睨まれただけで失神してしまいそうな視線を受けているやみなべと呼ばれるソレはいたって平然としてるようにみえる。 その様にレミリアはさらなる怒りを覚え……… 「死ねぇぇぇ!!!!」 怒声とともに地下室の中で一筋の赤い閃光が走った。 ……… 「…………はぁ…はぁ……私の攻撃が一切効かないなんてなんて奴なの」 肩で荒い息をするレミリアに対してやはり平然としている…ようにみえるやみなべ。 「……ダイジョウ…ブ?」 「大丈夫よ。でも、本当になんであんな新聞を出してるのよ」 「……ワカラナイ……タダ、ソウシナイトイケナイ……キガシタ」 相変わらず、答えになってない答えはレミリアの神経を逆なでているが、アレ相手にいくら攻撃しても無駄だ。 物理攻撃どころか精神攻撃でもほとんど手ごたえが感じられない。 いくら単細胞なレミリアでも学習機能はあるので、もう諦めることにした。 「…それで、やみなべと言ったわね。あなたの正体は何なの?」 「……ワカラナイ…ムシロシリタイ…オシエテ……」 「教えろったって……多分亡霊か何かだとは思うけどあなたのようなタイプは初めてみるわよ」 一応レミリアも幻想郷内で活動する多くの亡霊や幽霊の類は知っている…が彼?のようなタイプは初めてである。 何せ存在そのものが希薄であり、下手するとそのまま消滅しかねないぐらい弱い。 とはいっても、存在が希薄なのは博麗神社に住み着いているとか言われる祟り神の悪霊も同じだが、 こちらはそもそも自分が何者かすらわかっていない。 そんな彼?が現世に留まっている理由、その鍵はこの洋館にあるのかもしれないのだが、 レミリアは魔理沙のような家探しするような癖はない。むしろ、メンドクサイ。 「でもあなたは名前を知ってたけど、それはどうしてかしら」 「………イツダッタカ……オトズレタニンゲン……ガソウヨンデクレタ」 「ふ〜ん、私以外にもここに来た人がいるのね。でも、その人間はどう処理したの?」 「………ニワデキノコ……トッタラカッテニ…カエッタ」 「そう、キノコね……きのこを…」 その言葉に再度ひっかかりを覚えた。 ていうか、キノコのキーワードで思い浮かぶのはこの幻想郷で数えるぐらいしかないのだが… レミリアは一つの確信をもった上で聞き返す。 「もしかしてその人間って金髪の白黒な服着てて黒っぽいとんがり帽子被ってたりとかしてない?」 「シテタ……」 「………」 「ソレイコウ……ニンゲンガチカクニクル。デモ……ミンナスグカエル」 「聞いてない情報だけどありがとう。でも、これで合点が行ったわ」 夏ごろのとあるゲームにて魔理沙は不可解な力を発揮しており、その力でフランを一撃で消し飛ばしたのだ。 異質…とも言えるあの力は魔界神である神綺が持つ『魔界パワー』に近い性質を持っていたが神綺の魔界パワーとは違って神々しさが一切ない。 ただただ全ての厄災を封じ込めたような禍々しさが強く際立っており、 言いかえれば魔界神の魔界パワーを“正”とすればその反対である“負”の方向性であったのを覚えている。 ついでに、魔理沙自身も“負”の力を扱い切れず逆に取り込まれてしまい、 しばらく不運続きとなって『駄目沙』呼ばわりされる羽目になったりもしたが…… 入る時にどこかで感じたことあるというのは、あの時魔理沙が身に付けた『魔界パワー』が放っていた魔力。 あれのおかげでフランがやばい状況となっただけに、レミリアはよく覚えていた。 そんなフランや魔理沙を苦しめた魔力と同一の“負”の力がこの洋館一帯に取り巻いているのだ。 さらにいえば、こんな禍々しい魔力は普通の人間が触れただけで気絶するのも同意はない。 「とにかく、あの時訪れた人間があなたを『やみなべ』と呼んだのね」 「……」 魔理沙のことだから彼?を『やみなべ』と差したつもりなんてないだろう。 でも、経過はどうあれ彼?が自分をやみなべと認識するきっかけとなったことには変わりない。 そうして、やみなべという名前を持つことになった彼?は自意識を持つことができ、その名前を楔として現世へ干渉できるようになった。 だが、彼?と共にこの洋館も一緒に現世へと干渉させてしまったらしく、 結果としてこの洋館を取り巻く魔力とも厄とも呼べる"負"の力を外へ漏らしている。 厄神こと雛がこの洋館の噂が立つと同時に人里で厄が集まり始めたと言ったのはこのせいだろう。 原因がわかればどうということはない…と言いたいとこだが、今の彼?には"負"の力が制御できていない。 制御できない力はやがて身を滅ぼす運命が待っている。むしろ、他者にまで被害を与えるような存在は退治される。 しかし… ‐幻想郷はすべてを受け入れる‐ 害を与えそうだからって問答無用で追い出すのは幻想郷の流儀に反することだ。 大体彼?も好きでここに流れてきたわけではない。 こんな誰彼かまわず被害をもたらすような存在はどこにいても嫌われてしまう。 そうやって外の世界から忌み嫌われた存在となったこの洋館と彼?は、 自分の存在意義すら無くしてしまうほど希薄な存在となって幻想郷へと流れついた。 「どうせ希薄な存在だったら負の力も希薄になってればいいのに…  全く厄介な物が流れついたものね」 まぁ、この地下室の惨劇から見て分かるとおり、洋館の存在は忘れ去られてもそこで行われたことは忘れ去られない。 むしろ、中途半端な恐怖はさらなる恐怖を生み出し、やがて人々は恐怖だけを誇張させて後世へと残してしまう。 その結果、ゆがめられた人々の恐怖の念によって彼?とこの洋館は恐ろしいまでの“負”の力を持つようになった。 (まるで、私達みたいだわ) レミリアは吸血鬼であり、その元祖とされる者はその時代での英雄であった。 しかし、乱世の英雄は平和な世では虐殺者へと変貌してしまい、やがて後世では悪魔として罵られる。 そうした恐怖が“吸血鬼”と呼ばれる種族を生み出したのだ。 経緯はどうあれ、親近感をもってしまった彼?…やみなべをこのまま消失させたくはない。 しかし、消失させないためにはこの“負”の力をどうにかしなければいけない。 いっそこの洋館ごと“負”の力を消し飛ばしてしまえば簡単に済むかもしれないが、そうすれば彼も一緒に消し飛ぶ恐れがある。 もっと穏便にすむ方法を… っと、レミリアは普段使わない頭を使って悩んだ。 そうやって悩むこと数分…… 傍からみると悪だくみを企んでるようにもみえるが、やがて頭上にぴーんと電球が光るかのように名案が浮かんだ。 「そうだわ!!あなたはこの洋館の持ち主よね」 「…ソウ…ダケド」 「だったらこの建物を私に貸して頂戴」 「……イイケド…ナニ…スル…キ?」 意気揚揚とし始めたレミリアに唖然としてる…ようにみえるやみなべ。 そんな、やみなべにレミリアはにやりと笑うとキッパリ言い切った。 「もちろん、ここを皆の憩いの場にするのよ!!」 「…ドウヤッテ?」 あまりにも突拍子のない発言。 どうやったら一体そんなところへ行きつくのかっと戸惑ってる気配をだすやみなべだが、レミリアは気にせず淡々と語る。 「丁度ここが洋館な上に人里から近い!  それに私はスカーレットバーと言う小さな酒場を持ってるから、ここを新しいスカーレットバーとして新装開店させればいいのよ!!  多少ボロっちいけど、そこは古風っぽさを強調させるよう改装すれば全く問題ないわ!!  でもって広々とした歴史ある空間の中で老若男女に種族を問わない皆から好かれる酒場……  いいじゃないいいじゃない!!!」 みんなが一つのテーブルで笑いながら酒を酌み交わす客と、それらをカウンターから眺めるレミリア。 皆も『マスターもう一杯!』っとグラスをかかげながら次々と追加注文… それらを笑顔で答えながら次々とカクテルを作っていくレミリア改め… カリスマスター姉!! 「……うふふふふ…」 それらの姿を想像しだしたレミリアはつい不気味に笑いだす。 その様はあからさまに異様で、ぶっちゃけあまり関わりたくない姿だ。 「っということよ。あなたは前に私のことを新聞で侮辱したんだからそれを不問にさせるためにも、断れないわよね」 「ウ…ウン」 現世へ帰ってきたと思えば、いきなりとビシッと指を突きつけるレミリアにやみなべは思わずうなづいた。 「じゃー決まり!この洋館は今から『スカーレットバー』よ!!  今から改装工事要員連れてくるからよろしくね、地主さん」 そう叫ぶやいなや、ばさっと翼を広げて自分が空けた天井の穴を通って飛びだした。 その行動の速さにしばらくやみなべは唖然としていた…が 元々この洋館はただの住処であってここで特別何かをするというわけでもない。 「マァ…イッカ」 そうつぶやきながら、やみなべは机に置かれていた紙とペンを空中で操りつつ今のことを記事にし始めた。 でもってこの時やみなべは気づかなかったが……… いつのまにか、この洋館を纏っていた"負"の力がほとんどなくなっていたのだ。 続く